SaaSビジネスのカスタマーサクセスの仕事内容とは?注目される理由や役割、導入から成功までのポイントを解説

SaaSビジネスのカスタマーサクセスの仕事内容とは?注目される理由や役割、導入から成功までのポイントを解説

SaaSビジネスが広がる中で、「カスタマーサクセス」という言葉を目にする機会が増えてきました。顧客にサービスの価値をしっかり届け、継続利用につなげる取り組みが、ビジネスの成果に直結するようになっています。

とはいえ、「営業やサポートと何が違うの?」「具体的にどんな仕事をするの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、SaaSにおけるカスタマーサクセスの基本的な役割から導入の流れ、成功のために押さえておきたいポイントまでをわかりやすくご紹介します。SaaS企業でのカスタマーサクセスに興味がある方や、カスタマーサクセスを立ち上げたい・注力したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスとは?

参照:jinjer様事例

まずは、SaaSにおけるカスタマーサクセスについて、基本的な概念から見ていきましょう。

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスとは、顧客が導入したサービスを使って、成果(成功)を実感できるように支援する活動のことです。問い合わせを待つのではなく、先回りして使い方を提案したり、目標達成をサポートしたりすることで、顧客に長くサービスを使い続けてもらい、結果として自社の収益向上にもつなげます。

顧客がサービスの価値を感じられず利用をやめてしまうと、解約につながる可能性があります。そのため、SaaSビジネスにおいて、カスタマーサクセスの役割は非常に大きいといえます。

関連記事:カスタマーサクセスとは?仕事内容・業務プロセス、成功事例、将来性までわかりやすく解説!

SaaSビジネスの特徴とカスタマーサクセス

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスとは、「売って終わり」ではなく、「顧客がサービスを継続的に活用することで、成果を出すこと」を支援する役割です。SaaSツールは長く使ってもらうほど、安定した売上につながるサブスクリプション型ビジネスため、新規契約だけでなく、その後の利用促進や解約阻止なども重要なテーマになります。

このようなビジネスモデルの変化に伴い注目されるようになったのが、「The Model(ザ・モデル)」と呼ばれる営業プロセスです。「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに業務を分け、それぞれの部門が専門性を高めながら連携することで、営業活動全体の効率化と成果の最大化を図ります。


この中で「カスタマーサクセス」は、主に契約後の顧客を支援し、成功へと導く役割を担います。顧客に寄り添いながら、成功体験を積み重ねてもらうためのサポートをして、解約を減らしたり、追加の発注を獲得するために様々な支援策を行います。

SaaSのカスタマーサクセスのキャリアパスとは

SaaS企業におけるカスタマーサクセスは、今後需要が増え、転職市場においても求人が増えていくと見込まれていますが、実際にどのようなキャリアパスがあるのでしょうか。

弊社が実施した「カスタマーサクセス実態調査」によると、

「あなたは、カスタマーサクセスの次のキャリア(職種)をどのように考えていらっしゃいますか?(複数選択あり)」

という質問に対して、「現状のカスタマーサクセスの経験を活かせる周辺領域へのキャリアアップまたは現状維持を希望する人が多い」ことが分かりました。

SaaSにおけるカスタマーサクセスと営業・カスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスと似たような業務や言葉として、「営業」や「カスタマーサポート」が挙げられます。ここでは、それぞれの違いについてご紹介します。

カスタマーサクセスと営業の違い

カスタマーサクセスと営業は、どちらも顧客と関わる仕事です。ただし、その目的と業務内容にははっきりとした違いがあります。

営業の役割は、新規顧客を開拓し、契約を獲得することです。サービスを導入してもらうために提案や交渉を行い、成約を目指します。

一方で、カスタマーサクセスはすでに契約している顧客を支援する立場です。サービスを継続して活用してもらうため、導入後のフォローや活用提案を行います。成果が出るまで伴走するのが特徴です。

両者の違いをまとめると、以下のようになります。

項目 営業 カスタマーサクセス
役割 新規顧客の開拓と契約獲得 既存顧客の活用支援と継続的な成果の実現
主な業務 商談、提案、クロージング 導入支援、活用方法の提案、定着のフォロー
向いている人 積極的にアプローチできる人、成果を追うのが得意な人 相手に寄り添える人、支援にやりがいを感じる人

どちらもSaaSビジネスの成長に貢献する重要な役割です。それぞれの専門性を活かして連携することで、顧客満足度の向上と事業の持続的な成長を両立できるでしょう。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、どちらも顧客対応を担うという点では共通していますが、そのアプローチや目指すゴールには大きな違いがあります。言葉が似ているため混同されがちですが、実際の業務内容は異なります。

カスタマーサクセスは、顧客の課題を先回りして把握し、積極的に解決策を提案する「攻め」のポジションです。導入後の活用をサポートし、成果につなげるため能動的に働きかけます。

それに対してカスタマーサポートは、問い合わせがあってはじめて対応する「受け身」の業務です。顧客からの問い合わせやクレームが発生してから受動的に対応し、問題を解決します。

簡単にいえば、カスタマーサクセスは「成果を一緒に目指すパートナー」、カスタマーサポートは「困ったときに頼れる存在」というイメージです。

混同されやすいこの2つの職種を比較すると、その違いがより明確になります。

項目 カスタマーサクセス カスタマーサポート
役割 顧客の成果支援と継続利用の促進 問い合わせ対応と問題解決
主な業務 利用状況の分析、活用支援、アップセル・クロスセルなどの提案活動 メールや電話対応、トラブルシューティング
向いている人 相手の課題を先回りして考え、提案できる人 丁寧で正確な対応ができ、トラブルに冷静に向き合える人

企業やサービス内容によってはカスタマーサクセスが技術的なサポート領域も対応する、「カスタマーサクセスエンジニア」のような役割を持つこともあります。これにより一次受けはすべてカスタマーサクセスが行い、より深い仕様や対策が必要な内容をカスタマーサポートが行うという役割分担ができます。

どちらも顧客体験に大きく関わる重要なポジションです。それぞれの目的や進め方を理解し、適切に使い分けることで、より良い顧客関係が築けます。

関連記事:カスタマーサポートとは?仕事内容とカスタマーサクセスとの違い、目的や重要性までわかりやすく解説

SaaSでカスタマーサクセスが重要視される理由

では、なぜSaaSビジネスにおいてカスタマーサクセスがこれほど重要視されるのでしょうか。その理由は、主に以下の3点が挙げられます。

サービスの継続率が収益最大化につながるため

SaaSビジネスの多くは、月額または年額で利用料金が発生するサブスクリプションモデルを採用しています。そのため、新規契約の獲得も大切ですが、それ以上に重視されるのが「契約の継続」です。新規顧客の獲得には一定のコストがかかりますが、既存顧客に長く利用してもらうことは、費用対効果の面でも優れており、事業全体の利益向上に貢献します。

その継続利用を支えるのが、カスタマーサクセスです。顧客の利用状況を把握し、つまずきそうなポイントを事前に察知してサポートすることで、解約のリスクを減らします。結果として、継続率が高まり、収益も積み上がっていきます。

特にSaaSビジネスでは、顧客がサービスを長く利用してくれるほど、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)と呼ばれる、一人の顧客が企業にもたらす総利益も高まりやすくなります。つまり、継続率の改善は、そのまま事業の収益力強化につながるのです。

「顧客の成功」を実現することが価値であるため

SaaSのユーザーにとっては、商品・サービスを「買って終わり」ではなく、サービスを通じて「成果を出せるかどうか」が重要です。そのため、カスタマーサクセスには、顧客が正しくサービスを使いこなし、期待する成果を得られるようサポートする役割が求められます。ただ機能を説明するのではなく、「どのように活用すれば目的を達成できるか」までを伝えることが必要です。

顧客にとっての「成功」は、業務効率の向上、コスト削減、売上増加など、その目的によってさまざまです。そうした顧客一人ひとりのゴールに寄り添い、並走する姿勢が信頼を生み、結果として継続的な利用にもつながっていきます。

深い顧客理解がマーケティングや営業に活用できるため

カスタマーサクセスの役割は、顧客を支援することだけではありません。日々のやり取りを通じて、顧客の業務フローや課題、業界特有の悩みなど、現場のリアルな声を深く知ることができます。このようにして深まった顧客理解は、マーケティング部門や営業部門にとっても貴重な情報源となります。

たとえば、顧客インタビューをもとにした成功事例は、コンテンツや提案資料としても活用が可能です。営業担当者が商談で具体的な事例を提示すれば、より説得力のある提案がしやすくなります。

カスタマーサクセスが効果的に機能することで、社内で共有される顧客の生の声や情報が増え、結果としてマーケティング活動や営業活動の質も向上していくでしょう。

SaaSビジネスでのカスタマーサクセスの役割

SaaSビジネスにおいて、カスタマーサクセスは多くの役割を担っています。その中でも特に重要なものとして、以下の3つが挙げられます。

  • チャーンレート(解約率)を下げる
  • ARR・MRRを増やす(アップセル・クロスセル)
  • 顧客満足度・NPS®を高める

それぞれの役割について、具体的に見ていきましょう。

チャーンレート(解約率)を下げる

SaaSビジネスの持続的な成長には、顧客にサービスを長く利用してもらうことが求められます。つまりチャーンレート(解約率)をいかに低く抑えるかが、大きなポイントになります。そのためには、カスタマーサクセスが契約直後のタイミングで手厚いサポートを行い、初期のつまずきを防ぐことが大切です。

たとえば、サービス導入をスムーズに進めるための「オンボーディング」を通じて、顧客が無理なく利用開始できるよう促します。早い段階で成果を実感できれば、その後の定着率も自然と高まっていくでしょう。

また、顧客がサービスをどのくらい使っているのか、利用状況を定期的にチェックすることで、解約のサインを見逃さずに対応できます。ログイン頻度の低下や、一部の機能しか利用されていないといった状況は、何らかの課題を抱えているサインかもしれません。日々のコミュニケーションの中でこうした変化に気づき、適切な情報提供を行うことで、解約リスクの軽減につながります。

関連記事:チャーン(churn)とは?カスタマーサクセスに必須の指標、その意味と計算方法について

ARR・MRRを増やす(アップセル・クロスセル)

カスタマーサクセスの取り組みにより、ARR(年間経常収益)やMRR(月間経常収益)といったSaaSビジネスの重要指標を伸ばす上でも効果を発揮します。既存顧客がサービスに満足していれば、上位プランの提案(アップセル)や関連サービスの追加(クロスセル)も自然に受け入れられやすくなります。

大切なのは、売り込みではなく「顧客にとって本当に役立つ提案」であることです。顧客の課題をしっかりと把握したうえで、その解決に役立つ機能やプランを紹介することで、信頼を損なわずに提案できます。

タイミングや伝え方を工夫すれば、顧客単価や利用期間の向上だけでなく、LTV(顧客生涯価値)の最大化にも貢献できます。

関連記事:MRRとは?ARRやNRRとの違い、SaaSビジネスでの重要性、算出方法やMRRを改善する具体的な手法など分かりやすく解説

顧客満足度・NPS®を高める

カスタマーサクセスの取り組みは、顧客満足度やNPS®(顧客推奨度)の向上にも直結します。継続的にサービスを使ってもらうためには、日頃から顧客の声に真摯に耳を傾け、改善に活かす姿勢が求められます。

たとえば、「この機能が使いにくい」といったフィードバックを受け取った場合、それを開発チームへ伝えることで改善のきっかけが生まれます。こうした積み重ねが信頼関係を育て、顧客がサービスを家族や友人に勧めたくなる動機にもなります。

実際に「このサービスを他の人にも使ってほしい」と思ってもらえれば、口コミや紹介が広がり、新規顧客の獲得にもつながります。結果として、ブランドの認知や評価の向上にも貢献できます。

関連記事:NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは?平均値、質問、事例など、まとめました!
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【重要】すべては「顧客の成功」のために

SaaSにおけるカスタマーサクセスの最大の目的は、「顧客の成功を支援すること」です。サービスを導入しただけでは成果は生まれません。実際に使いこなしてもらい、期待する結果を出せるよう伴走することがカスタマーサクセスの本質的な活動といえます。

最終的なゴールは、顧客が「このサービスを選んで本当によかった」と実感できる状態を創り出すことです。その積み重ねが信頼を築き、LTVやNPS®といった重要な指標の向上にもつながります。単なる支援を越え、「ビジネスのパートナー」として並走することが、カスタマーサクセスの持つ本質的な価値といえるでしょう。

SaaSビジネスのカスタマーサクセスの仕事内容

カスタマーサクセスは、ビジネスの成長に直結する重要な役割をになっています。では、具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。

主な業務内容は、以下の4つに分けられます。

  • 【導入支援】オンボーディング活動
  • 【定着支援】アダプション活動
  • 【契約継続】リテンション活動
  • 【売上拡大】アップセル・クロスセル活動

それぞれの活動について、詳しく見ていきましょう。

【導入支援】オンボーディング活動

オンボーディングとは、新しいユーザーがスムーズにサービスを使いはじめられるようにサポートする一連のプロセスを指します。サービスの機能や操作方法をわかりやすく伝え、早期に利用価値を実感してもらうことで、その後の積極的な活用を促すのが目的です。代表的な取り組みとしては、操作方法を解説するチュートリアル動画の提供や詳細なマニュアルの共有、導入初期のトレーニングの実施などが挙げられます。

以前、当社が実施した「プロダクトの解約傾向」に関する調査では、解約に至ったユーザーの80%以上がオンボーディングを十分に完了していなかったという結果が明らかになりました。これは、初期段階のサポートが不十分だった場合、サービスの契約継続率が大幅に低下する傾向にあることを示唆しています。

SaaSでは、継続利用が収益のベースとなるため、最初のサポート段階で成果を実感できるかどうかが、売上に大きく影響します。そのため、カスタマーサクセスでは、オンボーディングを重要な取り組みの施策のひとつと位置づけています。

関連記事:オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説

【定着支援】アダプション活動

アダプション活動とは、サービスが顧客の業務にしっかりと定着するように支援する取り組みです。この段階では、「サービスを十分に使いこなしているか」「日々の業務に自然な形で組み込まれているか」といった利用状況を確認し、必要に応じて適切なサポートを提供します。

また、新機能の紹介や、他の顧客の成功事例を共有すること、さらには個別の課題に合わせた活用提案なども有効な手段となります。利用頻度が上がり、「これがないと困る」と感じてもらえるようになれば、解約のリスクも下がります。

タッチモデルを活用したアプローチ戦略

カスタマーサクセスは、導入から定着、価値提案まで、顧客のライフサイクル全体を支えます。しかし、すべての顧客に対して同じように手厚いサポートを行うのは、リソースの観点から現実的ではありません。ここで役立つのが「タッチモデル」というアプローチの考え方です。

タッチモデルでは、顧客の事業規模や契約状況、期待されるLTV(顧客生涯価値)などに応じて、コミュニケーションの頻度や方法を戦略的に変えていきます。主に以下の3つのタイプに分類されます。

  • ハイタッチ:LTVが高いと見込まれる大口顧客や、戦略的に重要な顧客に対して、専任の担当者が個別最適化された手厚いサポートを提供します。定期的な打ち合わせや顧客の状況に合わせたカスタマイズ支援で、深い関係性を築きます。
  • ロータッチ:中規模の顧客には、効率を重視した柔軟な支援を行います。ウェビナーの開催や、定期的な活用状況レポートの送付などを活用し、人手を抑えながらも顧客との接点を維持し、関係性を維持する手法です。
  • テックタッチ:FAQサイトの充実、チャットボットの導入、ステップメールの配信といったテクノロジーを活用し、自動化された形で多くの顧客をサポートするスタイルです。人手を最小限に抑えつつ、幅広い顧客層に情報提供や問題解決の手段を提供できる点が大きなメリットです。

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【契約継続】リテンション活動

リテンション活動は、契約を継続してもらうための取り組みです。顧客のログイン頻度や機能の利用状況、操作履歴といったデータを分析することで、離脱の兆しを早期に発見します。利用が減っている場合には、その背景を丁寧にヒアリングし、必要な対応を行います。

たとえば、「導入時のサポートが十分でなかった」「特定の機能がわかりにくい」など、原因が明らかになれば、的確な改善策を講じることができます。

また、契約更新時には、今後のサポート体制や活用方法を改めて共有し、メリットを顧客に伝えることで継続利用を促せるでしょう。定期的なミーティングの実施や、顧客の状況に合わせたカスタマイズレポートの提供も、信頼関係の構築に有効です。

関連記事:リテンション率(ユーザー定着率)とは?意味や計算方法・向上させるメリットと5つの改善方法

【売上拡大】アップセル・クロスセル活動

アップセル・クロスセルは、顧客にさらなる価値を提案することで、売上の拡大を図る活動です。アップセルは、より上位のプランを提案すること。クロスセルは、関連する別サービスを紹介することを指します。

たとえば、顧客が現在利用しているプランでは機能が不足しており、業務の目的を十分に達成できていない場合、より上位のプランに変更することで課題が解決できるケースがあります。また、他の製品と組み合わせることで、業務の効率化や生産性向上が見込める場合もあります。

重要なのは、顧客が抱える課題や真のニーズを正確に把握し、最適なタイミング、自然な形で提案することです。無理に勧めるのではなく、選択肢のひとつとして提示する姿勢が成果につながります。

関連記事:アップセル・クロスセルとは?意味や違い・カスタマーサクセスにおける重要性、事例を解説

【事例】クラウドサーカスのカスタマーサクセスの仕事内容

チャットボットツール「IZANAI」のカスタマーサクセスにおける業務内容は、①導入方法や操作説明・サポート②オンラインセミナーの実施③スタートアッププログラムの仕組み化の3つです。また、その内容は経路によって内容が変わってきます。

”営業チームとフリーCSからのパターンは、別の担当者がお客様から課題の抽出を行った上で提案をし、ご成約いただいていただいているものです。契約が成立した段階で、私のところに引き継ぎが行われて実際にCSがスタートします。一方で、PLG受注と呼ばれるパターンもあります。これはIZANAIの無料版を使ってくださったお客様がご自身で有料版に切り替えてくださり、契約に至るものです。この場合、特に引き継ぎなどがないので、私自身でお客様の課題の抽出を行い、より成果を出していただけるように活用提案を行っていきます。”

引用:プロダクトと二人三脚でお客様を支援する〜自己成長&プロダクト成長&顧客成長を実現するマインドセット〜

SaaSビジネスでカスタマーサクセスを導入する流れ

カスタマーサクセスを導入する際、まず何からはじめればよいのでしょうか。
ここでは、導入に向けた具体的な導入ステップを解説します。

1.「顧客の成功」を定義する

まず取り組みたいのが「顧客の成功とは何か」を明確にすることです。この定義があいまいのままでは、支援の方向性が定まらず、顧客にとって価値の感じにくいサポートになってしまうかもしれません。

では、どのように定義すればよいのでしょうか。考えるポイントは、「顧客が継続的にサービスを活用している、理想の状態から逆算すること」です。たとえば、以下のようなイメージです。

  • A:初期設定が完了し、必要な機能の使い方を理解している状態
  • B:サービスの価値を実感し、継続して利用できる体制が整っている状態

あわせて、「どの時点をひと区切りとするか」という期間を設定しておくことも大切です。「◯か月以内に活用フェーズに移行する」「◯回まで個別支援を行う」といったように、具体的な期間や回数を数値で示すと、顧客と目指すべきゴールに対する認識を合わせやすくなります。

もちろん、「成功」の定義はプロダクトや顧客の業種・規模によって異なります。ただ共通していえるのは、「顧客とゴールを共有する姿勢」が重要だという点です。顧客目線に立ち、何をもって成功とするかを一緒に考えることが、実効性の高いカスタマーサクセスにつながります。

2.まずは「オンボーディング」支援にフォーカスする

カスタマーサクセスの導入において、最初に注力したいのがオンボーディング支援です。当社が実施した「カスタマーサクセスの実態調査」において、実施している施策とその効果について尋ねたところ、最も効果が高いと評価されたのが「オンボーディングプロセスの改善」でした。

「実施されている施策」としての順位は4位でしたが、効果ランキングでは1位に輝いています。これは導入初期のつまずきを防ぎ、顧客がスムーズに使いはじめられるようにサポートすることが、継続的な利用につながる重要な要素であるといえます。

このようにSaaSビジネスでは、導入から定着までのスピード感が、顧客の成果実感に直結しやすい傾向があります。そのため、まずは短期間で顧客が成果を実感できる「クイックウィン」の提供を目指しましょう。初期設定のサポートや操作トレーニングといった支援を通じて、顧客が理想の使い方に早く到達できるよう導いていくことが大切です。

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3.徐々に支援領域を広げつつ、ナレッジを蓄積していく

最初からすべてをカバーしようとすると、担当者の負担が大きくなり、カスタマーサクセス活動そのものの継続が難しくなることもあります。まずは注力する領域を絞り、そこで得られた知見やノウハウを社内でしっかりと整理・蓄積していくことが重要です。

たとえば、解約理由のヒアリングから「使い方がわからない」「現場に定着しない」といった課題が見つかった場合は、その一つにフォーカスして改善に取り組みましょう。

試行錯誤のなかで得たデータや対応事例は、チーム全体の貴重なナレッジとなります。こうした経験を積み重ねることで、支援の精度が高まり、顧客との信頼関係も深まっていきます。

4.カスタマーサクセスツールで効率化・自動化を進める

以前、当社では、「カスタマーサクセスツール導入の有無による施策効果の違い」をテーマに調査を行いました。具体的には、「オンボーディングプロセス」「解約顧客のアラート」「NPS・アンケートの取得」という3つの項目について比較しています。

その結果、ツールを導入している企業の方が、すべての施策で高い効果を得ていることがわかりました。つまり、カスタマーサクセスの業務は専用ツールを活用することで、より効果的に進められるということです。

カスタマーサクセスの業務は、大きく「定型業務」と「非定型業務」に分けられます。初期設定支援やNPSアンケートの収集などの定型業務は、プロセスが決まっているため、ツールで効率化しやすくなります。一方、個別提案やリニューアル対応、定期的なフォローアップなどの非定型業務には、柔軟な対応が求められます。

まずは、ツールで定型業務を効率化し、チーム全体の負荷を軽減しましょう。操作ガイドやチュートリアルを簡単に作成できるツールを導入すれば、顧客が自ら初期設定を進められる「セルフオンボーディング」も可能になります。人手をかけずに、スムーズな導入体験を提供できます。

SaaS向けカスタマーサクセスツール「Fullstar」で業務を効率化

クラウドサーカスが提供する「Fullstar」は、SaaS企業向けに設計されたカスタマーサクセス支援ツールです。ノーコードで操作ガイドやチュートリアルを作成・表示でき、ユーザーは画面の案内に従って直感的に操作を覚えられます。マニュアルを読む手間がなくなり、初期導入のスピードもアップします。

「Fullstar」は他にも、利用状況やエンゲージメント、アンケートの結果などを簡単に見える化できます。たとえば、自由記述式のアンケートを活用することで、顧客の率直な感想を把握しやすくなります。顧客とのコミュニケーションの質を高めるためにも有効な手段です。

さらに、状況に応じたタスクを自動で割り当てる機能もあり、アップセルや解約の兆候に迅速に対応しやすくなります。限られたリソースでも、一人ひとりに合ったサポートを実行でき、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。

参考:カスタマーサクセスツール「Fullstar」

SaaSビジネスでカスタマーサクセスを成功に導くポイント

カスタマーサクセスを軌道に乗せ、SaaSビジネスの成長を加速させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、その中でも特に効果的な4つの取り組みをご紹介します。

1.ナレッジや成功事例の蓄積・活用

カスタマーサクセス活動で得られる情報は、SaaSビジネスを成長させるうえで貴重な財産となります。顧客対応で得られた知見やノウハウは、チーム内で共有しやすい「ナレッジ」として蓄積し、日々の業務に役立てていきましょう。

サービス利用時につまずきやすいポイントや、解約につながる要因、それに対する効果的なサポート方法などは、非常に参考になります。「運用体制が整っていなかった」「サポートが不十分だった」といった具体的な課題が見つかれば、改善のヒントにもなります。

こうした課題解決のノウハウに加え、成果を出している顧客の活用方法や工夫も記録しておくことが大切です。どの業種の顧客が、どのような課題を抱え、サービスをどう使い、どのような効果を得たのか。こうした成功事例は、他の顧客への提案やサポートの質を向上させる手がかりになります。

情報を蓄積するだけでなく、誰でもすぐに確認できる仕組みを整えることも必要です。ナレッジの共有がスムーズに行われれば、担当者ごとの対応に差が出にくくなり、チーム全体のスキルアップにもつながるでしょう。

2.フレームワークやメソッドの策定

業務の質と効率を両立させるには、体系的なフレームワークやメソッドの導入が有効です。手探りで進めるのではなく、すでに実績のある方法を取り入れることで、効果的な顧客対応が可能になります。

他社の成功事例やチェックリストを参考にしながら、導入から定着・活用までの流れを整理しておくと、対応の抜け漏れを防げるでしょう。

当社が提供するMAツール「BowNow」でも、導入初期から成果につなげるための特別プログラムを用意しています。基礎講座・設定トレーニング・最終ミーティングといった段階的なサポートで、着実にステップアップできる構成を採っています。

画像引用元:サポート体制について|無料で使えるマーケティングオートメーション「BowNow(バウナウ)」


こうしたフレームワークは、新人教育にも活用できます。社内に蓄積された知見をもとに、必要に応じて内容を更新していくことで、チーム全体の対応品質を一定に保ちやすくなります。

3.自社サービスに関連するコンサルティングも行う

カスタマーサクセスは、単なる操作サポートにとどまりません。顧客がサービスを使って成果を上げられるよう支援する、「ビジネスパートナー」としての側面も担っています。

そのためには、サービス自体の理解はもちろん、顧客の業務全体やデジタル環境にも目を向ける必要があります。顧客自身がまだ気づいていない課題を発見し、それに対して適切なアドバイスを行えば、より深い信頼関係を築くことができます。

「業務にどう組み込めば効率化できるか」「他のシステムとどう連携すれば効果的か」といった一歩踏み込んだ提案は、顧客にとって大きな付加価値となり得るでしょう。

4.マーケティング・営業部門と連携を強化する

カスタマーサクセスは、顧客と継続的に接点を持つ部門です。だからこそ、マーケティングや営業との情報共有が非常に重要になります。

たとえば、顧客の利用状況や解約理由を営業に共有すれば、より顧客のニーズに合致した的確な提案を行えるようになります。期待とのギャップを埋めることで、満足度向上にもつながります。また、「どのようなユーザーが継続利用しているか」「どのような層が離脱しやすいか」といった情報は、マーケティング施策の見直しにも役立ちます。

一方で、営業活動の過程で見えてきた顧客の潜在的なニーズや市場のトレンドを、カスタマーサクセス部門にフィードバックすることも有効です。そうした情報を把握しておくことで、質の高いサポートを提供できるようになります。部門間での連携が進めば、組織全体として顧客を多角的に支える強固な体制が整っていくでしょう。

SaaSビジネスでのカスタマーサクセス成功事例

先ほどご紹介したように、成功企業の取り組みを参考にすることで、カスタマーサクセスの体制を効率よく構築できます。ここでは、当社が提供するカスタマーサクセスツール「Fullstar」の導入事例をご紹介します。

「ジンジャーナビ」のリリースで新規顧客のオンボーディングを促進!(jinjer株式会社様)

jinjer株式会社様は、クラウド型の人事労務システム「ジンジャー」を開発・提供している企業です。勤怠管理や給与計算など人事業務を一元化できるSaaSサービスで、新規導入企業の増加に伴い、カスタマーサクセスの工数が膨らんでいたことから、オンボーディング支援を効率化する仕組みの構築が急務となっていました。

そこで「Fullstar」を導入し、操作ガイドやチェックリストを管理画面上に表示する仕組みを構築。この取り組みは「ジンジャーナビ」と名付けられ、ユーザーは画面上の案内に従って、スムーズに初期設定を進められるようになりました。

ツールチップも設置し、専門用語の補足説明ができるようになったことで、問い合わせ件数の削減にもつながっています。さらに、チュートリアルやチェックリストの進捗状況はイベントトラッキングで確認できるため、データに基づいた支援も実現しています。

進捗の可視化には、チェックリストとイベントトラッキングの両機能を活用。たとえば、初期設定で必ず実行されるボタン操作を測定することで、どの段階でユーザーがつまずいているのかを把握できるようになりました。

参考記事:「ジンジャーナビ」のリリースで新規顧客のオンボーディングを促進!18,000社以上に導入されているジンジャーが新たに取り組むFullstarを活用したテックタッチ施策とは?

導入初期の操作研修時間を1/3に削減!(エコナビスタ株式会社様)

エコナビスタ株式会社様は、睡眠解析技術を活用した高齢者見守りSaaS「ライフリズムナビ+Dr.」を提供する企業です。施設や医療機関を中心に200以上の導入実績があり、介護現場の業務負担軽減を支えるソリューションとして注目されています。

導入施設の増加にともない、カスタマーサクセス対応の負荷が大きな課題となっていました。現場スタッフや管理者など、利用者の立場がさまざまで、問い合わせ内容も幅広く、対応にかかる時間が増えていたそうです。

この課題を解決するため、「Fullstar」でチュートリアルやガイドを作成し、「IZANAI」でチャットボットによる対応を導入。よくある質問には自動で回答できるようになり、操作方法の見える化も進みました。その結果、これまで何度も開催していた操作研修が1回で完了するようになり、研修にかかる工数は約3分の1にまで削減されました。

また、チャットボットにより、定型的な問い合わせの約24%がユーザー自身で解決されるようになり、サポート体制の負担も軽減。これにより、CSチームはより複雑な課題に集中できる体制を整えることができました。

習熟度に差が出やすい介護現場でも、活用レベルを一定に保てたことが成果につながり、解約率はわずか0.003%。まさにカスタマーサクセスが事業成長を支える好事例といえるでしょう。

参考記事:導入初期の操作研修時間を1/3に削減!解約率0.003%を実現するエコナビスタのカスタマーサクセス

カスタマーサクセスはSaaSビジネスの肝!

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスは、顧客対応にとどまらず、継続率や収益の向上、満足度アップなど、あらゆる面に影響を与える重要な役割を担います。顧客の課題に寄り添い、継続的に価値を届ける姿勢が、サービスの信頼と成長につながっていきます。

導入初期は「オンボーディング」に重点を置き、その後、少しずつ支援領域を広げていくことが成功のポイントです。社内に蓄積されたナレッジの有効活用や、営業・マーケティング部門との連携も、効果的な運用体制を構築するうえで大切な要素となります。

「顧客の成功」を考え、それを実行できる企業こそが、変化の激しいSaaS時代をリードしていけるはずです。自社のサービスだけでなく、顧客の業務全体に視野を広げ、頼れるビジネスパートナーを目指しましょう。

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