NPS®(Net Promoter Score/ネット・プロモーター・スコア)とは、顧客ロイヤルティを知るための指標で、顧客に「あなたはこの商品・サービスをどの程度、友人や同僚に勧めますか?」という質問に0~10の11段階で答えてもらった結果を数値化したものです。
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、米国のコンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)」でフェローだったフレッド・ライクヘルド(Fred Reichheld)氏により提唱されました。
本コラムでは、NPS®(ネット・プロモーター・スコア)の計算方法や平均値、CSAT(顧客満足度)との違いから事例、本、セミナーまで、NPS®に関する情報をまとめてご紹介いたします。
目次
10まとめ
NPS®(Net Promoter Score/ネット・プロモーター・スコア)とは、顧客ロイヤルティを知るための指標です。
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客に「あなたはこの商品・サービスをどの程度、友人や同僚に勧めますか?」というアンケート項目(質問)を投げかけます。この質問に0~10の11段階で答えてもらった結果を数値化して求めます。
例:Adobe ILUSTRATORのポップアップ
「NPS®の計算方法」で詳述しますが、回答された数値によって、顧客を3グループに分け、最下位の批判的なグループの比率を、最上位の推奨するグループの比率から引いた数値となり、‐100~100の間で表されます。
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、米国のコンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)」でフェローだったフレッド・ライクヘルド(Fred Reichheld)氏により、著書『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」(原題:The Ultimate Question)』の中で提唱されました。
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)使用時の注意点として、あくまでもその時点での顧客ロイヤリティを反映しているに過ぎないため、一度、調査した結果を重視するのではなく、定期的に調査を行って顧客ロイヤルティ向上のための施策を練ったり、一定の数値を維持したりするためのバロメーターとして活用することが大切です。
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、以下の手順で計算します。
まず、顧客に「あなたはこの商品・サービスをどの程度、友人や同僚に勧めますか?」という質問を投げかけ、0~10の11段階で答えてもらいましょう。
非常にシンプルながら、自分の親しい人に対して勧めることができるかという聞き方をすることで、商品・サービスに対してシビアに評価を行ってもらえる質問です。
NPS®を提唱したフレッド・ライクヘルドが著書のタイトルにした通り、まさに究極の質問だといえるでしょう。
ブランドに対する評価なら「このブランドを」、従業員の自社に対する評価を行ってもらう場合は「この企業を」と、ロイヤリティを知りたい対象に合わせて質問をカスタイマイズしてください。
1で得た回答によって、顧客を「推奨者」「中立者」「批判者」の3グループに分けていきます。
全体に占める「推奨者」「批判者」の割合を算出します。
たとえば、100人中、9、10の数値を答えた顧客が20人だとすれば、20%という具合です。
3で求めた「推奨者」割合から「批判者」の割合を差し引きます。
たとえば、100人中、9、10の数値を答えた顧客が20人、0~6の数値を答えた顧客が50人だとすれば、
20(%)‐50(%)=‐30(%)
という具合です。
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客ロイヤルティを測る指標ですが、似たものに顧客満足度を測る指標「CSAT」があります。
CSAT(顧客満足度)とは、商品・サービスに対して顧客がどの程度、満足しているかを数値化したもので、測定方法は企業によってまちまちです。
顧客に対し、たとえば、「あなたは商品・サービスに満足しましたか?」といった質問を投げかけ、1~5、1~10などの点数で答えてもらい、平均や標準偏差などを取って顧客満足度の指標とします。
【関連記事】
>CSAT(顧客満足度)とは?NPS®やその他の主要指標との比較
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とCSAT(顧客満足度)は、似ていますが、用途によって使い分けることができます。要は、「何を知りたいか?」によって用いるスコアを変えるということです。
たとえば、商品・サービスを改良した前後ではCSAT(顧客満足度)を用いることで、改良した点の顧客からの評価を測ることができますし、競合から新製品が発売された後で、自社の顧客がそちらに流れそうかどうかを把握したいときは、NPS®(ネット・プロモーター・スコア)を用いる方が適しています。
デジタルマーケティングなどを手がけるNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の調査によれば、2020年の業界別のNPS®(ネット・プロモーター・スコア)の平均値は、以下の通りです。
(出典:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「NPS®ランキング&アワード」)
前項の平均値をご覧いただくとお気づきのように、すべての業界でマイナス値となっています。次章の「NPS®(ネット・プロモーター・スコア)ランキング」をご覧いただくと、各業界のトップ企業の数値ですらマイナス値が並びます。
顧客体験向上クラウド「EmotionTech」や従業員体験向上クラウド「EmployeeTech」を提供する株式会社Emotion Techによれば、これには、日本人の国民性が大きく影響しているといいます。
日本人は、評価を行うようなアンケート調査で複数の選択肢がある場合、中間の選択肢を選ぶ傾向があるというのです。これを「回答中心化傾向」といい、自分の意見を簡潔・率直に伝えるよりも、曖昧にぼかして伝えることで、相手に嫌われたり集団の中で浮いたりするのを避けようとするためだと考えられます。
NPS®の回答数値でいえば、日本人が選びやすい「4~6点」は、「批判者」に分類されてしまうため、NPS®が低く出やすいというわけです。
ただ、NPS®の絶対値にこだわってもあまり意味はなく、NPS®の推移を見ながら顧客満足度向上のための施策を続けることが大切です。
(出典:株式会社Emotion Tech「マイナスに出やすい?NPS®調査における日本人の回答傾向を解説! 」)
こうした日本特有の事情を踏まえた上で、日本の業界別のNPS®(ネット・プロモーター・スコア)ランキング第1位をチェックしていきましょう。
前出のNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の調査結果では、それぞれ以下の通りです。
Indeed(インディード):-21.1pt
ジェイ エイ シー リクルートメント:-22.2pt
Netflix:-4.4pt
ソニー銀行:-24.5pt
ソニー損害保険:-20.2pt
東京海上日動火災保険:-40.4pt
楽天カード:-17.0pt
楽天でんき(楽天エナジー):-18.7pt
アフラック:-37.1pt
(出典:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「NPS®ランキング&アワード」)
NPS®はとてもシンプルな指標ですが、この指標を活かして実際に顧客ロイヤルティを活用している事例をいくつかご紹介いたします。
それまでは、紙のアンケートで顧客満足度を調査していた美容系クリニックで、理念のひとつである「究極の三方良しを実現する」を叶えるため、従業員に負担をかけていたアンケートの依頼や集計作業を軽減することも視野に、ツールとともにNPS®を導入。
導入後は、メールでアンケートを配信し、結果は自動集計されるように。NPS®結果は、各院がツールにログインして確認でき、本部では成績の良かった院をモデル院として取り組みを横展開したり、表彰したりしているといいます。
また、NPS®値が下がっていたりアップダウンが激しかったりする院をマークするなどの対応を行ったり、施術別・医師別のNPS®値を見てロイヤリティの高い治療を新事業に活かせるようになったそう。
事例の詳細は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の事例ページをご覧ください。
NPS®を取り入れてから3年が経過していた某インターネットセキュリティ製品メーカーでは、計測・集計を行い、現状把握はできるものの、その結果をどう活かせば良いかわからず、スコアが上がったり下がったりする原因もよくわからない点が課題でした。
そこで、年1回の調査のほか、新規登録開始直後のオンボーディング調査を実施。それぞれの結果を加味するほか、比較も行い、施策改善につなげるといいます。今後はさらに、ライセンス取得後の調査も加える予定だとか。
「私たちが正解だと思う施策を、ユーザーは実際どう受けとめているか」という観点で調査を行うことで、改善すべきポイントが明確になったそうです。
事例の詳細は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の事例ページをご覧ください。
試合結果が「負け」でも、また球場に来たいと思ってもらえるように勝敗以外の体験を向上したいと考えていた某野球球団では、球団ファンへ向けたサービスの改善のためにNPS®を導入し、NPS®スコアとチケットなどの売上との相関性がわかったといいます。
実施しているNPS®調査は2種類で、一つはチケット購入者の一部を対象とした調査、もう一つがファンクラブ会員の全員を対象とした調査だそうで、試合ごとの小さな振り返りと、年間での大きな振り返りの二軸で運用されています。
事例の詳細は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の事例ページをご覧ください。
ERPのトライアルユーザーのリードタイムを90日間短縮!少数精鋭でプロダクト改善を行い、1年間でNPSスコアは40%以上改善。(https://fullstar.cloudcircus.jp/media/cases/cam)
事例インタビュー第2弾! 問い合わせ数削減施策に加え、顧客管理・データ活用にFullstarを活用。NPSの回答数はさらに5倍以上に。(https://fullstar.cloudcircus.jp/media/cases/hr-cloud-2 )
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)を導入したいと考えるなら、アンケート調査や集計、結果の分析や推移ウォッチを自動化・効率化してくれるツールの導入がおすすめです。
無料で利用できるNPS®ツールもありますので、ご紹介いたします。
Qualtricsは、米国のクアルトリクス社が提供するNPS®ツールです。ユニコーン企業として注目されていたクアルトリクス社は、2018年に日本法人を開設。2019年には基幹システム最大手のSAP社に買収されました。
顧客用のNPS®ツールのほか、従業員用、製品開発用、ブランディング用の4つのツールを提供しており、導入実績は、世界100ヵ国以上で1万1,000ブランド以上。
従業員用の「EmployeeXM」は、2020年フォレスター社の調査で従業員エクスペリエンス分野において「リーダー」の評価を得ています。
Mopinionは、Webサイトのほか、プランによってはアプリでもユーザーからの回答を収集できるツールで、アンケートフォームの作成やNPS®計測のほか、集計レポート機能、マーケティング用キャンペーン作成機能などがついています。
日本語対応されていないため、利用は英語のみですが、無料プランもあり、有料プラン(月額229ドル~)にも14日間無料トライアルが付いています。
Wootricは、カスタマージャーニー全体を見据え、NPS®のほかCSATも計測できるツールで、Webサイトのほか、メールやSNSなどからもユーザーからの回答を収集できます。
こちらも利用は英語のみですが、フォームは言語選択をすると日本語でも作成することができます。
利用料金は、無料プランもあり、有料プランはESSENTIALプラン月額89ドル~で、30日間無料トライアルが付いています。
Delightedは、調査結果をリアルタイムにダッシュボードで確認できる点に特徴のあるNPS®ツールです。NPS®のほかCSAT、CES(カスタマーエフォートスコア)の測定までが可能。
NPS®、CSAT、CESのどの数値を計測するかを選び、どの手段(Webサイト、SNSなど)で回答を受け取るかを選び、フォームを作成するという3ステップで簡単に使えます。
こちらも無料プランが用意されており、有料プランは月額224ドル~で年額払いの場合は10%割引になります。
最後にご紹介するのが、弊社が2021年4月にリリースをしたFullstar(フルスタ)です。チュートリアル機能をベースとした顧客管理が可能で、チャーンの防止に役立てることができます。簡単操作でちょうどいい機能が揃っているのが特徴です。
フリープランもご用意しているため、気軽にお試しいただけます。ぜひお申し込みください。
フリープランはこちらから▼
https://cloudcircus.jp/fullstar/free/
NPS®を知るため読んでおきたい参考本をご紹介いたします。
著:フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー プレジデント社出版:(2013年1月発刊)
NPS®は非常にシンプルな質問で行える調査なので、実施するのは簡単ですが、それを成果に結びつけ有効活用することが重要であり、難しくもあるポイントです。
本書は、NPS®の生みの親であるフレッド・ライクヘル氏による著書で、これからNPS®を始めたいと考える企業にCS担当者におすすめです。
経営層の方に向けた内容も豊富で、NPS®調査を実施する価値について、理解できるようになっています。
アップルやアメリカン・エキスプレス、ロジクール、ザッポスといった欧米企業の事例も多数、収録されています。
【ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS®〉で「利益ある成長」を実現する の目次の一部】
序章 スコアからシステムへ
第I部 ネット・プロモーター・システムの基礎
第1章 悪しき利益と良き利益、そして究極の質問
第2章 成果を測定する基準
第3章 NPS®が利益ある成長をもたらすメカニズム
第4章 エンタープライズの物語――意味のあるものを測定する
第5章 NPS®を測定するには
日本語版コラム I 日本企業がよく陥る課題と改善のアプローチ
第II部 結果をつくり出す
第6章 NPS®で成果を出すということ
第7章 経済性と動機付け:二つの欠かせない柱
第8章 顧客との「クローズド・ループ」を回す
第9章 長期的な変革に備える
第10章 ネット・プロモーターの最前線
日本語版コラム II 顧客ロイヤルティ強化で成功している日本の事例
付録 ネット・プロモーター先進企業からのアドバイス
引用元:ネット・プロモーター経営 顧客ロイヤルティ指標NPS®で「利益ある成長」を実現する(PRESIDENT STORE)
著:酒井 隆 出版:日本能率協会マネジメントセンター(2012年1月発刊)
NPS®調査に限らず、アンケート調査の実施方法と、結果の解析方法の基本が解説された本です。
旧版のロングセラーを受けて、インターネットアンケート調査を大幅に加筆した新版が出版されました。実務的な内容で、手順やポイントについてわかりやすく書かれています。
調査の初心者から理解できる内容ですが、何度も調査経験を行ってきた方にも、これまでのやり方を見直す意味で役立つ内容となっています。
【図解 アンケート調査と統計解析がわかる本[新版] の目次】
第1部 アンケート調査はこうして進める!
第1章 これが代表的なアンケート調査だ
第2章 アンケート調査の企画を立てる
第3章 アンケート票を作る
第4章 実査を行う
第5章 インターネットアンケート調査を行う
第6章 データ集計を行う
第2部 統計解析はこうして進める!
第7章 統計解析の基本を押さえる
第8章 多変量解析はこうして進める!
著:磯部 光毅 出版:宣伝会議(2016年月発刊)
本書はNPS®に特化した内容ではありますが、NPS®調査を行う本質的な目的である、顧客体験を向上して顧客満足度を上げ、利益アップにつなげるために、どのように顧客とコミュニケーションを取ったら良いかを考えるのに最適です。
コミュニケーション戦略を「ポジショニング論」「ブランド論」「アカウントプランニング論」「ダイレクト論」「IMC論」「エンゲージメント論」「クチコミ論」の7つに整理した上で、それぞれの歴史や具体的なプランニング方法が解説されています。
現場での実践的なノウハウだけでなく、全体を俯瞰して体系的に理解したいと考えるマーケター向けです。
タイトル通り、随処に(目次にも!)手描きのイラストが掲載されていて理解を助けてくれます。
【手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略 の目次の一部】
はじめに
プロローグ
第1章 ポジショニング論
第2章 ブランド論
第3章 アカウントプランニング論
第4章 ダイレクト論
第5章 IMC論
第6章 エンゲージメント論
第7章 クチコミ論
最終章 7つの戦略論を俯瞰する
参考文献
あとがき
初心者にとって、直接、質疑応答などにも対応してもらえるセミナーへの参加は収穫が大きいはず。
NPS®について学べるセミナーの主宰者をご紹介いたします。
NPS®向上を支援するクラウドサービス「NPS® Pro」の提供を始め、NPS®に関するソリューションを提供するNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社では、毎月デジタルマーケティングに関するさまざまなテーマで複数のセミナーやイベントを主催しており、NPS®関連のセミナー・イベントも毎月2回ほど企画されています。参加費は無料。
顧客体験向上クラウド「EmotionTech」や従業員体験向上クラウド「EmployeeTech」を提供する株式会社Emotion Techでは、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)マネジメントや、従業員体験(エンプロイーエクスペリエンス)などをテーマに、毎月、セミナーを主催しています。参加費は無料。
顧客の声を可視化する「マーキットゲージ」の提供やWebマーケティングサービスを手がけるマーキットワン株式会では、NPS®調査に関するセミナーを不定期で開催しています。
過去に開催されたセミナーは、NPS®調査の取り組み方に関するテーマが多く、初心者におすすめです。参加費は無料。
調査方法がシンプルなNPS®。計算方法も簡単ですが、調査結果をうまく成果に結び付けるためには、継続して実施し、推移を見ることや、具体的にどのような施策を行って顧客満足を上げていくかを検討する部分で、工夫が必要になってきます。
ただし、日本人に評価を行うようなアンケート調査で複数の選択肢がある場合、中間の選択肢を選ぶ「回答中心化傾向」があり、数値そのものが低いことよりも、下がり続けたりアップダウンを繰り返すことの方が心配です。
こちらでご紹介したセミナーや書籍なども参考に、NPS®を実施してみてはいかがでしょうか。