本記事では国内企業10社の具体的なNPS®活用事例を紹介します。NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは、商品やサービスに対する顧客の信頼や愛着度を測る指標を指します。
顧客との関係性を深め、サービスの質を継続的に高める上で、NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は今や欠かせない指標です。企業の成長に直結する「顧客ロイヤルティ」を可視化できるこの指標は、さまざまな業界で導入が進んでいます。
本記事においては、業界別に各社がどのようにNPS®を向上させているのかを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
カスタマーサクセス組織の効率化・工数削減をお考えの方へ
導入実績1,900社以上!オンボーディング工数90%削減・解約率低減・ヘルススコア向上に使える!
SaaSのカスタマーサクセスの工数削減の方法と事例を解説!
【ヘルススコア・NPSを収集・向上させたい方へ】
ヘルススコアやNPS・満足度を、計測するだけで終わらせていませんか?
その数値を「アダプション(定着化)支援」「解約防止」に繋げ、NPSを+40pt改善した”テックタッチ施策”の仕組み化ノウハウをご紹介します。
「HRクラウド」様や「jinjer」様、「いい生活」様など、有名SaaS企業も活用している取り組み事例を資料にまとめました。
◆SaaS企業500社が実践!テックタッチ施策の事例集を見る(無料DL) >
目次
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは、商品やサービスに対する顧客の信頼や愛着度を測る指標で、企業の「顧客ロイヤルティ」を可視化するものです。
顧客に「このサービスを友人や同僚にすすめたいか」を0〜10点で評価してもらい、その結果をもとに顧客を以下の「推奨者」「中立者」「批判者」に分類します。
最上位である「推奨者」の割合から、最下位の「批判者」の割合を引いた数値がNPSとなります。たとえば、推奨者が20%、批判者が50%の場合は以下のように計算可能です。
例として、合計43件の回答があった場合を考えてみましょう。このうち、9〜10点をつけた「推奨者」が21人、0〜6点をつけた「批判者」が17人いたとします。それぞれの割合を求めると、推奨者は全体の48.8%、批判者は39.5%となります。
NPS = 48.8%(推奨者) − 39.5%(批判者) = +9.3pt
となり、NPSスコアは「+9.3」となります。
ちなみにスコアがマイナスであっても珍しいことではなく、日本人は真ん中あたりの数値を選択する傾向にあります。実際に各業界のNPSトップスコア企業のほとんどのNPSがマイナスです。重要なのは、NPSスコアを評価し、改善に活かすことです。
企業の成長性や顧客との関係性を示す重要なデータとして注目されています。
弊社ではBtoB SaaS企業におけるNPSランキング「The best SaaS NPS in Japan」を選出しています。
関連記事:NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは?平均値、質問、事例など、まとめました!
参考:Net Promoter Score: The Power Behind A Single Number
NPS®を活用した顧客体験の改善は、業種を問わず多くの企業で成果を上げています。NPSを向上させる施策は多岐にわたり、業界によって効果的な施策は異なってきます。
ここでは、クレジットカードやネット証券、リフォーム、旅行業界など、幅広い分野から国内10社の具体的なNPS®活用事例を厳選して紹介します。
それぞれの企業がどのように顧客の声を施策に活かし、ロイヤルティを高めているのか、業界特有の工夫や成功ポイントを交えながら紹介しますので、自社での活用を検討するヒントとして、ぜひ参考にしてください。
楽天カードは、顧客満足度の高さで知られる国内最大級のクレジットカード会社です。楽天グループは、2014年に新規顧客の伸び悩みを契機として、顧客との関係性に着目。NPS®を成長戦略の重要KPIに据え、全社的に顧客満足度の向上に取り組んでいます。
楽天カードもその方針のもと、NPSを軸とした顧客志向の施策を展開した結果、検索機能の改善や送料無料ライン導入など、日常的な接点における改善が進み、NPSスコアも競合を上回る成果を上げる結果に。
NTTコム オンラインが実施したクレジットカード18社のNPS調査で、楽天カードはトップの評価を獲得しました。
参考:クレジットカード NPSおすすめランキング | NTTコム オンライン
楽天カードのNPS®向上施策の核心は、顧客視点の徹底にあります。
顧客の声を朝会で全従業員と共有することで、日々の業務に自然と顧客目線を取り入れる文化を築いています。また、各事業所にNPS向上向上を担う「NPSマネージャー」を配置し、サービスの枠を超えて成功事例や課題を共有・展開しているのも特徴です。
また、開発部門を含む全事業部門がNPSを共通の指標として活用し、顧客体験を良くするための具体的な改善を実施。効果が出た取り組みは他部門にも広げられ、全社的にNPSを活用した改善のサイクルが定着しています。
先述したNTTコム オンラインの調査では、「ポイントの貯まりやすさ・還元率」や「利用手続きのしやすさ」が高評価を得ており、楽天ポイントの利便性が顧客ロイヤルティを強く後押ししていることがわかります。
参考:クレジットカード NPSおすすめランキング | NTTコム オンライン
SBI証券は、NTTコム オンラインが実施した「NPSベンチマーク調査2023」において、ネット証券5社の中でNPSトップの評価を獲得しました。手数料とサービスのバランス、商品ラインナップの豊富さ、他金融機関とのスムーズな連携などが高く評価され、顧客のロイヤルティ向上に直結しています。
特に新NISAへの利用意向も非常に高く、SBI証券の利便性と信頼性がユーザーから強く支持されていることがわかります。
SBI証券のNPS®向上の取り組みポイントについて、以下で見てみましょう。
SBI証券は「顧客中心主義」を経営理念に掲げ、業界最低水準の手数料と高品質なサービス提供を進めています。同社公式サイトにも「顧客中心主義に基づく業務運営」への取り組みを明確に示し、公正な評価制度や従業員研修にも注力しているとしています。
特に、新NISAの導入に際しては、制度内容やメリットを丁寧に案内するなど、情報提供の強化に力を入れているのがポイントです。低コストで魅力的な商品構成や、他の金融機関との連携強化によって顧客にとっての利便性に注力することで、NPSスコア向上につながっています。
富士通株式会社は、IT企業からDX企業への進化を掲げる中で、顧客・従業員からリアルタイムで集めたフィードバックをもとに業務改善を進める「エクスペリエンスマネジメント(XM)」に取り組んでいます。
この取り組みは、2022年にはSAPジャパンから「Experience Management部門」で表彰されるなど、外部からも高く評価されています。
この活動の中心となるのが「VOICEプログラム」です。アンケートなどを通じて集めた声を分析・可視化し、迅速な意思決定や行動の変革につなげています。
こうした取り組みにより、従来は見えにくかった課題を明確にし、改善アクションをスピーディーに展開する仕組みを整えている点が特徴です。詳しくは以下で解説します。
参考:お客様や従業員の「声」を新たな経営指標に、VOICEプログラムの取り組みとは - フジトラニュース : 富士通
富士通はVOICEプログラムの推進に際し、2つの大きなチャレンジに取り組んだ点がポイントです。
1つ目は、従来の顧客満足度調査(CS調査)を「お客様NPS調査」に切り替えたこと。2つ目は、そのNPS調査をグローバル共通の内容に統一し、世界中で同じ基準で実施できるようにしたことです。
以前は地域ごとに調査が行われていたため、収集された顧客の声が全社的な改善に十分生かしきれない状況がありました。
そこで2020年以降、調査プロセスを標準化し、世界6地域・30カ国以上のお客様から得られる声を共通指標で収集・分析・共有できる体制を整備したことで、グローバル全体で顧客の期待や課題を可視化し、経営やサービス改善に直結させることが可能になりました。
顧客と従業員双方の声を可視化し、行動に結びつけるプロセスが、NPS向上と持続的な成長を支えています。
参考:お客様や従業員の「声」を新たな経営指標に、VOICEプログラムの取り組みとは - フジトラニュース : 富士通
積水ハウスリフォームは、NTTコム オンラインが実施したNPS®ベンチマーク調査2024(リフォーム部門)で、13社中トップのNPS値 −8.9ポイントを記録し、堂々の1位を獲得しました。
NPS®向上において、同社が取り組んだポイントについて以下で紹介します。
参考:NPS業界別 おすすめランキング | NTTコム オンライン
積水ハウスリフォームの高い評価の理由は、営業スタッフの丁寧な説明や、透明性のある見積もり、プロとして的確なアドバイスが支持されたなどの背景があります。
同社のNPS®を向上させるために具体的に取り組んだ内容は、以下の通りです。
上記のポイントが、顧客の信頼と満足を築き、リフォーム業界で高いNPSスコアを実現しています。
アップル引越センターは、顧客体験の質を数値で可視化し、改善に活かす「NPS経営」をいち早く導入した企業です。2016年には、見積もりから予約までをWEB上で完結できる「ラクニコス」を開始し、利便性向上に注力しています。
加えて、NPSスコア67.5という高水準を維持し、アンケート内容やスコアの詳細もホームページ上で公開するなど、透明性の高い姿勢が特徴です。顧客の声を経営にダイレクトに反映させるこの取り組みは、顧客満足と信頼の両立に大きく貢献しています。
同社は、NPSを従業員評価の中心指標として位置付け、全社・支社・職種・スタッフごとに明確な目標スコアを設定し、達成度を定期的に計測している点が特徴です。
アンケート結果は、CS専門チームがデータ化・分析し、社内SNSで全社員に共有。役職や部門の垣根を超えて意見を交換し、改善につなげる仕組みが整っています。
また、従業員満足(ES)向上にも注力しており、「やりがいのある仕事」が「より良い顧客体験」へとつながる好循環を生んでいる点もポイントです。NPSを軸にした人事・組織戦略が、顧客満足向上を支えています。
参考:NPS® | 紹介したくなる引越しはアップル|その秘密は公式サイトで
コニカミノルタは、情報機器をはじめとする長期使用型の製品を多く扱っており、顧客との継続的な関係構築が不可欠な企業です。そうした背景から、同社は2012年にNPS®を導入し、グローバルでの顧客体験(CX)向上に着手しています。
具体的な取り組みのポイントについては、以下で紹介します。
同社は、2017年には顧客接点ごとのNPSを把握できるトランザクション調査を導入し、2020年からは個別の声に即応する改善プログラムを開始しました。さらに、「製品・サービスを使い続けたいか」という独自の設問を通じて、顧客の継続意向も測定。データは週単位で集計され、販売活動や製品改善に活かしています。
トランザクション調査を通じて、問い合わせや修理などの顧客接点で得られる評価や不満を即時に把握しているのがポイントです。さらに、不満が検知された場合は「チケッティング」機能で自動的に社内対応が行われ、解決までを一元管理します。こうした徹底した顧客志向の取り組みが、NPSの回復と信頼向上に貢献しています。
また、顧客や従業員、製品などのさまざまなエクスペリエンスデータを収集、管理、分析し、改善に繋げるためのプラットフォームである「クアルトリクス」の導入により、調査・分析・改善が迅速化。デジタルツールの活用で、現地主導のCX改善が進み、NPSの着実な向上につながっています。
参考:新たな品質価値の創出 - サステナビリティ | コニカミノルタ
参考:クアルトリクス プレスリリース「コニカミノルタ、クアルトリクスで
ジャルパックは、日本航空株式会社が運営する旅行会社です。NTTコム オンラインが実施したNPS®ベンチマーク調査2024(総合型旅行会社対象)において、同社はブランドイメージやサービスの信頼性が高く評価され、9社中トップの評価を獲得しています。
すでに高い評価を得ていた同社は、さらなるサービス向上を目指してCX向上を支援するNPSツール「NPX Pro」を導入。カスタマージャーニーに基づく詳細な分析により、見えなかった課題の発見と改善を推進しています。詳しい取り組みは以下で紹介します。
参考:総合型旅行会社 NPSおすすめランキング | NTTコム オンライン
ジャルパックでは、従来の満足度調査では捉えきれなかった顧客体験の質を把握するために、NPS®を導入しました。特に、カスタマージャーニーに着目した調査設計により、旅前・旅中・旅後それぞれの接点での評価を収集しているのが特徴です。
また、社内での講習会やWeb会議を通じてNPSへの理解と活用を促進する取り組みも行っています。
さらに、調査結果を全社員と共有し、現場レベルで改善に取り組む体制を整えた点もポイントです。部門を越えた情報連携や、自由記述コメントの共有といった仕組みにより、顧客の声が日々の業務に活かされる環境が整っています。
日程調整の効率化を支援するクラウドサービス「TimeRex」を提供するミクステンド株式会社では、2023年にカスタマーサクセス専任組織を立ち上げたのを機に、顧客体験の強化に本格的に取り組み始めました。
導入したのは、顧客管理とテックタッチ施策を同時に実現できるクラウドサーカス社の「Fullstar」。導入後、NPS®スコアは「+42.08pt」を記録。中でもフリープランユーザーの満足度が高く、「+64.35pt」という驚異的な数値を達成しました。
具体的な取り組みポイントについてみていきましょう。
ミクステンドでは、Fullstarを活用した、ユーザーの利便性と継続利用を促す取り組みを実施している点がポイントです。
直感的に使えるTimeRexの特性を踏まえ、過剰なチュートリアルではなく、必要なユーザーに必要な情報を届けるチェックリストやポップアップを重視しているのがポイントです。顧客をランク別に分類し、それぞれに最適なガイドを表示しています。
また、日程調整が本ツールの強みであるため、利用頻度の低下をシグナルとしたアラート機能や、メール配信によるテックタッチ施策を通じてフォローし、NPS®向上を図っています。
参考:NPSスコアは脅威の「+42pt」。顧客管理とテックタッチ施策を目的に導入した、TimeRexのFullstar活用方法。
株式会社キャムは、複雑な業務を抱える中小企業のバックオフィス業務を効率化する、中小企業向けクラウドERP「キャムマックス」を展開しています。
同社は、工数をかけずにトライアルユーザーのオンボーディング、カスタマーサクセス領域をカバーしたいという狙いから、クラウドサーカスが提供するカスタマーサクセスマネジメントツール「Fullstar」を導入しました。
その結果、プロダクトの理解促進とNPSの可視化が進み、1年でNPSスコアを40%以上改善。トライアルユーザーの受注までのリードタイムも約90日短縮されるなど、大きな成果を獲得しました。
具体的な取り組みのポイントについて以下で解説します。
株式会社キャムでは、Fullstarを活用し、トライアルユーザー向けに初期設定のチュートリアルを提供することで、複雑なERPシステムの導入ハードルを下げ、ユーザー自身での設定完了を可能にしています。
マニュアルでは伝えきれない操作や設定を、画面内チュートリアルで直感的にサポートすることで、お客様自身が初期設定をスムーズに完了できるようになり、トライアル期間中の離脱率も大幅に低減しました。
また、NPS収集とSlackへの自動通知を活用し、日々の改善につなげている点もポイントです。Fullstar導入により、人的リソースを最小限に抑えつつ、プロダクト理解の促進・顧客満足度の向上・ファイナンス指標としての活用までを実現しています。
参考:ERPのトライアルユーザーのリードタイムを90日間短縮!少数精鋭でプロダクト改善を行い、1年間でNPSスコアは40%以上改善。
都市ガス12社を対象としたNPS®ベンチマーク調査で、東京ガスは業界トップとなるNPSスコアを記録。シンプルで選びやすい契約プランや、スムーズな手続き対応が評価され、顧客ロイヤルティの向上につながりました。
東京ガスが業界トップのNPSを獲得した背景について、以下で紹介します。
東京ガスが業界トップのNPSを獲得した背景には、顧客視点に立ったサービス設計と、利便性の高い手続き対応があります。
特に「契約プランがシンプルで分かりやすいこと」や「引越し・住所変更などの手続きがスムーズであること」が、顧客の信頼と満足感を高める要因となりました。
参考:都市ガスを対象にしたNPS®ベンチマーク調査2024の結果を発表。NPSおすすめランキング1位は東京ガス
~シンプルで自分に合った契約プランがあることがロイヤルティ向上の鍵~
本記事では、国内企業10社の具体的なNPS®活用事例と、各取り組みのポイントを紹介しました。
各社の成功事例から見えてきたのは、「顧客の声に真摯に向き合い、改善を積み重ねる姿勢」が、NPS®向上において欠かせないポイントであるということです。業界や事業形態にかかわらず、ロイヤルティを高めるためには、サービスの分かりやすさや手続きのスムーズさ、そして顧客との接点を大切にする姿勢が共通して重要でした。
また、NPS収集・活用ツール「Fullstar」を導入することで、効率的にNPS向上を図ることができることもわかりました。
NPS®は単なる数値ではなく、顧客との信頼関係を可視化する重要な指標です。本記事を参考に、自社でも顧客体験の質を見直し、継続的な改善サイクルの中にNPS®を取り入れてみることをおすすめします。
無料プランで始める
書類不要!最低利用期間なし!
ずっと無料で使えるアカウントを発行