カスタマーサクセスは、既存顧客の成功を目指し、積極的にサポートすることに特化した活動や組織を指します。近年、SaaSやPaaSを中心としたサブスクリプション型ビジネスでカスタマーサクセスが注目されていますが、この取り組みは特定の業界に限られたものではありません。私たちは、今のデジタル時代を生き抜くすべての企業にとってカスタマーサクセスが不可欠であると考えています。
この記事では、カスタマーサクセスの概要からカスタマーサポートとの違い、ミッションや役割、提供方法、さらには具体的な業務内容や成功事例まで、カスタマーサクセスについて包括的に解説していきます。
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、直訳で「顧客の成功」となりますが、実際には「顧客が求める成果や目標を達成するために、顧客と共に歩みながら、自社の利益を最大化するための活動や組織」を指します。この概念は、特にサブスクリプション型ビジネスモデルにおいて重要です。例えば、SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのビジネスモデルでは、顧客が製品やサービスを継続的に利用し続けることが収益の維持に直結します。したがって、カスタマーサクセスの役割は非常に重要です。
カスタマーサクセスの目的は、単に顧客に製品やサービスを提供するだけでなく、その顧客が自社の製品を最大限に活用し、期待する成果を上げることを支援することです。カスタマーサクセスは、顧客との長期的な関係構築を目指し、以下のプロセスを通じて顧客満足度を高め、結果として自社の利益を最大化します。
顧客の成功体験の提供:カスタマーサクセスは、顧客が自社の製品やサービスを利用することで成功を実感できるよう、個別のニーズに応じた支援を行います。これには、顧客の目標設定、成果の追跡、適切なアドバイスの提供などが含まれます。
顧客ロイヤルティの向上: 顧客が自社の製品に対して満足し、信頼を寄せることで、ロイヤルティが高まります。ロイヤルティの向上は、顧客の維持や契約更新の可能性を高めるため、カスタマーサクセスの重要な役割です。
契約の更新促進:カスタマーサクセスチームは、契約更新のタイミングを把握し、顧客に対してその価値を再確認させることで、契約の更新を促進します。これにより、長期的な収益を確保することができます。
契約金額の増加(アップセル・クロスセル):顧客が自社の製品やサービスをより深く理解し、利用することで、追加の機能やサービスを提供する機会が増えます。カスタマーサクセスは、顧客のニーズに応じてアップセルやクロスセルを提案し、契約金額の増加を図ります。
口コミや紹介による二次収益の獲得:満足した顧客は、自社の製品やサービスを他の人に推薦することが多くなります。カスタマーサクセスは、顧客の成功体験を共有し、紹介や口コミを通じて新たなビジネスチャンスを生み出すことができます。
カスタマーサクセスの実行には、顧客のニーズやゴールを正確に理解し、それに基づいた支援を行うことが不可欠です。顧客が製品やサービスを導入しただけでは成功は達成されません。カスタマーサクセスチームは、顧客と密に連携し、成功の指標や成果を確認しながら、常に顧客の成功を支援する役割を果たします。さらに、カスタマーサクセスは「組織」であり、また「活動」や「理念」としても存在します。たとえば「営業」という言葉が部署名や活動を示すように、カスタマーサクセスも組織内での役割や活動として、またその理念としても理解されています。カスタマーサクセスの組織は、顧客との関係を深めるための専門チームであり、顧客が期待する成果を実現するために一貫した支援を提供します。
このように、カスタマーサクセスは単なるサポートの枠を超えて、顧客の成功を共に目指すパートナーシップを築く重要な役割を担っています。その結果、顧客満足度の向上や収益の最大化など、長期的なビジネスの成功につながります。
「カスタマーサクセス」と「カスタマーサポート」は、名前が似ているため混同されがちですが、それぞれ異なる役割と目的を持っています。どちらも顧客と接点を持ち、サービスに関する専門知識が必要であり、略して「CS」と表記されることもありますが、それぞれの役割と目的には明確な違いがあります。ここでは、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを詳しく解説し、その役割と目的について説明します。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
---|---|---|
目指すべきところ | 自社の定期収益増加 | 顧客満足度向上 |
目的 | 顧客の成功 | クレーム処理・不満解消 |
顧客への姿勢 | 能動的/先回り型 | 受動的/要望対応型 |
KPI | ●リテンション(継続・維持)率 ●オンボーディング完了率 ●解約率 ●アップセル・クロスセル率 ●顧客満足度 など |
●FCR(初回解決率) ●自己解決率 ●対応件数 ●顧客満足度 ●返信時間の短さ など |
ゴール | 顧客の成功 | 問題の収束 |
顧客との関わり方 | 継続的 | 一時的 |
関連部門 | ●マーケティング ●インサイドセールス ●営業 ●サポート ●開発 |
●カスタマーサクセス ●開発 |
管理範囲 | 購入後のアフターケア | 一連の顧客体験 (リード〜成約〜オンボーディング〜導入〜解約) |
業務内容 | 顧客努力の低減 回答品質・速度の向上 |
顧客サービス理解・活用速度の向上 |
製品に対する専門性 | 必要 | 必要 |
接客スキル | 高 | 高 |
カスタマーサクセスは、顧客と一緒に成長し、顧客が成功するためのパートナーとして機能します。顧客が製品やサービスを利用することで期待する成果や目標を達成できるよう、積極的に支援を行います。カスタマーサクセスのチームは、データを分析し、顧客のニーズを先回りして把握し、問題が発生する前に対策を講じることが求められます。顧客との関係は長期的であり、定期的なフォローやオンボーディング、契約更新などの活動を通じて、顧客の成功をサポートします。カスタマーサクセスの主要なKPIには、リテンション率、オンボーディング完了率、解約率、アップセル・クロスセル率が含まれます。
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせや問題に対して迅速に対応することを主な目的としています。顧客が直面する問題や質問に対して、電話、メール、チャットなどの手段で解決策を提供し、顧客満足度を向上させる役割を担っています。カスタマーサポートは、顧客の要望に応じて受動的に対応することが特徴で、問題解決が行われた後の関わりは限定的です。主なKPIには、初回解決率(FCR)、自己解決率、対応件数、返信時間の短さが含まれます。
カスタマーサクセスは、顧客との関係を継続的に構築し、長期的な成功をサポートします。顧客の成功を目指して、オンボーディングから始まり、サービスや製品の利用促進、契約更新のフォローまで、広範な支援を提供します。これにより、顧客が自社の製品を効果的に活用し続けられるようサポートします。
一方、カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対して一時的に対応し、迅速な問題解決を目指します。顧客の問題が解決すると、通常、関わりは終了します。サポートは、顧客が直面する問題に即座に対応し、満足度を向上させることを目的としています。
カスタマーサクセスは、顧客が自社の製品やサービスを継続的に利用し、最大限の成果を得ることを目指します。そのため、カスタマーサクセスのKPIはリテンション率やアップセル・クロスセル率、オンボーディング完了率、解約率など、顧客の長期的な利用状況や成果を測る指標が中心です。
カスタマーサポートは、顧客の問題を迅速に解決することが主要な目標であるため、初回解決率(FCR)、自己解決率、対応件数、顧客満足度、返信時間など、迅速で効果的な問題解決を測る指標が主なKPIとなります。
上記のようにカスタマーサクセスとカスタマーサポートは、それぞれ異なる役割と目的を持っています。カスタマーサクセスは、顧客と長期的に関わりながら成功をサポートし、自社の収益を最大化することを目指します。対して、カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対して迅速に対応し、問題を解決することで満足度を向上させることを目的としています。両者の役割を理解し、自社のビジネスモデルに合わせて最適な体制を整えることが、顧客満足と企業の成功に繋がります。
カスタマーサクセスと営業(セールス)は、いずれも「自社の利益を最大化する」ことを共通の目標としていますが、そのアプローチや目的には明確な違いがあります。営業の主な目的は「新規顧客の契約獲得」であり、新たなビジネスチャンスを開拓することに焦点を当てています。一方、カスタマーサクセスの目的は「既存顧客を成功に導く」ことであり、既に契約した顧客に対して、長期的に継続的に利用してもらえるよう支援することです。
営業は、新たに顧客を獲得するためにさまざまな戦略を用います。これにはリードの発掘から契約締結までが含まれます。新規顧客の獲得は、多くのリソースと時間を要するプロセスであり、コストも高くつくことが一般的です。実際に、新規顧客獲得には既存顧客の維持の約5倍のコストがかかるという「1:5の法則」が存在します。これにより、新規顧客の獲得は高い難易度を伴い、その成果には営業力に大きな個人差が出やすいとされています。
一方、カスタマーサクセスは、既存顧客が自社の製品やサービスを最大限に活用し、期待する成果を達成できるようにサポートします。カスタマーサクセスチームは、顧客が成功するための支援を行い、顧客との関係を深めることで、契約の更新やアップセル、クロスセルを促進します。顧客が満足し続けることで、長期的なリテンション(顧客の維持)を実現し、自社の定期収益を安定させることが狙いです。
このように、営業とカスタマーサクセスはそれぞれ異なるフェーズで自社の利益を追求しています。営業が新規顧客の獲得に注力するのに対して、カスタマーサクセスは既存顧客の成功と長期的な関係構築に重点を置いています。どちらも自社のビジネスにとって重要な役割を果たし、両者の連携が成功に繋がるのです。
カスタマーサクセス | 営業(セールス) | |
---|---|---|
目指すべきところ | 自社の定期収益増加 | 自社の収益増加 |
目的 | 既存顧客の契約維持 | 新規顧客の契約獲得 |
活動 | 顧客を成功に導くための活動 | 新規顧客獲得のための活動 |
成果 | 担当者ごとの成果に差が出にくい | 個々の営業の力量によって成果に差が出やすい |
近年、ビジネス界で「カスタマーサクセス」という概念が急速に注目されています。このトレンドの背後には、ビジネスモデルの大きな変化が影響しています。特に「買い切り型」から「サブスクリプション型」へのシフトが、カスタマーサクセスの重要性を高める要因となっています。以下では、カスタマーサクセスの台頭に至る背景と、ビジネスに与える影響について詳しく解説します。
カスタマーサクセスが普及し、多くの企業で求められるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか。
従来のビジネスモデルでは、多くの企業が「買い切り型」の製品やサービスを提供していました。顧客は一度高額な料金を支払うことで、製品を永続的に所有する形式が一般的でした。このモデルでは、顧客が一度購入すれば、その後の収益はあまり考慮されませんでした。顧客サポートも重要ではありましたが、企業の収益モデルとしては、契約や販売が主要な指標でした。
このようなビジネスモデルでは、企業は販売時点での利益を重視し、顧客の購買後の体験や継続利用に対する戦略はそれほど重要視されませんでした。顧客が製品やサービスを使い続けるかどうかは、あまりビジネスの収益に影響しないとされていました。したがって、企業は販売活動や初期のサポートに注力する一方で、顧客の継続的な成功にはあまり気を使わない傾向がありました。
しかし、近年では「サブスクリプション型」のビジネスモデルが急速に普及しています。サブスクリプション型では、顧客が月額や年額などの定額でサービスを利用する形式が採用されています。これにより、企業は安定的な収益を確保できる一方で、顧客の継続的な利用が収益の鍵となります。この変化により、企業は顧客が長期間にわたってサービスを利用し続けることを重視するようになり、ここで重要なのが「カスタマーサクセス」の概念です。
サブスクリプション型ビジネスの特性として、契約がゴールではなく、契約後の顧客体験が重要です。顧客がサービスを使い続ける限り、企業は定期的な収益を得ることができますが、顧客がサービスを利用しなくなると、収益は途絶えてしまいます。したがって、顧客の満足度を維持し、長期間にわたってサービスを利用してもらうことが求められます。これを実現するために、カスタマーサクセスが欠かせません。BtoB業界でも今までは、パッケージ型サービス(導入時に高額を支払いきる形)が主流でしたが、この数年はインターネット上でサービスが提供されるようになり、月額制の料金体系が浸透してきています。この背景には「体験」をより重視するようになった「消費者行動の変化」=「利用・成果重視の時代への変化」があるのです。以下に、サブスクリプションモデルのサービスの一例をご紹介します。
これらのサービスは、すべてサブスクリプション型で提供されており、顧客の利用継続が収益に直結しています。例えば、NetflixやApple Musicでは、顧客が定期的に料金を支払うことでコンテンツにアクセスできます。企業は、顧客が満足し続けるようにコンテンツの質を維持し、新しい機能やサービスを追加することで、顧客の継続利用を促進しています。
BtoBのサブスクリプション事例:
これらのBtoBサービスも同様に、サブスクリプション型で提供され、顧客の継続的な利用が収益の安定に寄与しています。特にSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)として提供されるこれらのツールは、企業の業務プロセスを支える重要な役割を果たしています。
SaaS市場は急速に成長しています。特に新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークやリモートワークが普及し、企業のデジタルトランスフォーメーションが進んでいます。これに伴い、SaaSの需要が増加しており、2024年には市場規模が約1兆6000億円に達する見通しです。また、2027年までには国内企業の7割がSaaS製品を利用すると予測されております(『SaaS業界レポート2023』)。この成長に伴い、カスタマーサクセスの役割もますます重要になっています。
SaaSビジネスモデルでは、顧客がサービスを長期間にわたって利用し続けることが収益の安定に直結します。カスタマーサクセスチームは、顧客の成功を確保し、利用状況をモニタリングする必要があります。顧客がサービスを最大限に活用し、成果を実感できるようにすることで、解約率を低下させ、安定した収益を確保できます。
カスタマーサクセスの戦略
カスタマーサクセス戦略には、顧客のニーズに応じたパーソナライズされたサポートが含まれます。例えば、利用状況に応じてカスタマイズしたトレーニングや、業務の改善提案を行うことが挙げられます。これにより、顧客はサービスの価値を最大限に引き出し、より高い満足度を得ることができます。
最近では、サブスクリプションモデルに加えて、「コンサンプションモデル」が注目されています。コンサンプションモデルでは、顧客がサービスを利用する量に応じて料金が発生します。例えば、SlackやSnowflake、AWS(アマゾンウェブサービス)などがこのモデルを採用しています。
コンサンプションモデルの特徴は、顧客が実際に利用した分だけ料金を支払う点です。入会や契約時に費用が発生しないため、顧客はリスクを感じることなくサービスを試すことができます。しかし、顧客の利用頻度や利用量が収益に直結するため、企業はカスタマーサクセスに注力し、顧客の利用促進やアップセルを図る必要があります。
コンサンプションモデルでは、利用量が収益に影響を与えるため、カスタマーサクセスの役割が一層重要になります。企業は、顧客がより多くのサービスを利用し、その価値を実感できるようにサポートする必要があります。これには、利用状況の分析や、追加機能の提案が含まれます。顧客がサービスをより多く利用することで、企業は収益を最大化できるのです。
カスタマーサクセスは、ビジネスモデルの変化に伴い、ますます重要な役割を果たしています。サブスクリプション型やコンサンプションモデルの導入により、顧客の継続利用が収益の安定に直結するため、カスタマーサクセスの戦略的な支援が求められています。顧客の成功をサポートし、満足度を高めることで、企業は収益を最大化し、長期的な成長を実現できます。カスタマーサクセスの重要性を理解し、その実践に取り組むことが、現代のビジネス成功の鍵となるでしょう。
カスタマーサクセスは、現代のビジネス環境において重要な役割を果たしています。特に、サブスクリプション型ビジネスやSaaS(Software as a Service)など、長期的な顧客関係を前提とするビジネスモデルにおいて、その価値が高まっています。以下では、カスタマーサクセスの位置と役割を、営業プロセスモデル「The Model」を中心に詳しく解説します。
「The Model」は、営業プロセスを4つの主要なフェーズに分けて考えるフレームワークです。このモデルは、企業の営業活動を効率的に進めるために設計されており、以下の4つの部門が協力し合って顧客との関係を築き、ビジネスの成長を促進します。
役割:リードの獲得と育成。マーケティング部門は、潜在的な顧客をターゲットにしたキャンペーンやプロモーションを実施し、リードの関心を引き出します。また、リードナーチャリングのプロセスを通じて、有望なリードを育て、営業チームに引き渡す準備を整えます。
②インサイドセールス:
役割:リードに対する積極的なアプローチと商談の確度を高める。インサイドセールスは、リードとコンタクトを取り、商談の段階に進めるためのアクションを起こします。見込み顧客との関係を深め、営業チームに対して高い確度の案件を引き渡します。
③営業(フィールドセールスまたはアウトサイドセールス):
役割:商談の進行と契約の獲得。営業チームは、インサイドセールスから引き渡された見込み顧客と商談を進め、最終的に契約に結びつけるための交渉や提案を行います。
④カスタマーサクセス:
役割:契約後の顧客の成功をサポートし、長期的な関係を築く。カスタマーサクセスチームは、顧客が製品やサービスを最大限に活用できるようにサポートし、顧客の成功を促進します。解約率を低下させ、顧客ロイヤルティを高め、アップセルやクロスセルの機会を創出します。
このモデルにおいて、カスタマーサクセスは営業プロセスの最終段階に位置しており、顧客との長期的な関係を築くための重要な役割を担っています。
マーケティングから営業までを通して、ようやく顧客にサービスを契約してもらっても、カスタマーサクセスの支援なくしては契約期間が終われば解約されてしまう確率が高くなります。オンボーディングプロセスの実行から製品・サービスの活用促進を促し、顧客の課題を先回りして解消することで、契約更新(解約防止)を実現するほか、アップセル・クロスセルによって自社の収益向上へとつなげていくことが「カスタマーサクセス」の役割なのです。カスタマーサクセスの位置と役割についてみてきましたが、次の章ではカスタマーサクセスのミッションについて解説します。
カスタマーサクセスにおける最も重要なミッションは「LTVの最大化」です。LTVの最大化を実現する重要な指標として「解約(チャーン)の減少」「顧客ロイヤルティ向上」「アップセル・クロスセル」「顧客ニーズの吸い上げとフィードバック」の4つが挙げられます。
LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)とは、顧客が自社と契約開始してから解約するまでの間に得られる利益の総額を指します。顧客生涯価値は企業にとって非常に重要な指標であり、特にサブスクリプション型ビジネスモデルにおいては、顧客一人ひとりの長期的な価値を最大化することが収益の安定に繋がります。
LTVの基本的な計算式は以下の通りです:
LTV=平均購買単価×購入頻度×購買継続期間
たとえば、月額制のサブスクリプションサービスで10,000円のサービスを3年間利用した場合、LTVは以下のように割り出せます。
1アカウントの契約単価(10,000円)×購入回数(12ヵ月)×継続期間(3年)=360,000円
LTV=360,000円
上記の式からわかる通り、顧客の契約単価が高く、利用期間が長いほどLTVは高くなります。したがってLTVを最大化するためには、解約(チャーン)の減少、顧客ロイヤルティの向上、アップセル・クロスセルの獲得、顧客のニーズを把握という4つの指標に注力することが重要です。
解約(チャーン)とは、顧客がサービスを解約することを指します。特にサブスクリプション型やSaaS型のビジネスモデルでは、解約が多いと事業は成長できません。そのため、「いかに顧客に継続利用してもらえるか=どれだけ解約を減少させるか」が重要になります。解約を減少させるためには、以下の施策が有効です:
顧客ヘルススコアの活用:顧客の利用状況や満足度を測定するための指標であるヘルススコアを活用し、解約リスクが高い顧客に対して早期にアプローチします。
プロアクティブなサポート:顧客が問題を抱えたり、利用状況が低下したりした場合に、迅速にサポートを提供することが重要です。
定期的なレビューと改善:顧客との定期的なレビューを行い、顧客のニーズやフィードバックを基にサービスを改善します。
顧客ロイヤルティは、顧客が特定のブランドやサービスに対して感じる信頼や愛着を指します。ロイヤルティを高めることで、顧客の継続的な利用や他者への推薦を促進することができます。ロイヤルティを向上させるための施策にはNPS(Net Promoter Score)の活用が効果的です。NPSは顧客の推奨度を測る指標で、顧客のロイヤルティを評価するために利用されます。NPSを定期的に測定し、顧客の満足度やロイヤルティの向上に向けた施策を講じます。
アップセルとクロスセルは、既存顧客に対して追加の製品やサービスを提案し、顧客の購買単価を向上させる手法です。
アップセルは顧客が現在利用している製品やサービスよりも高額なオプションや上位製品を提案することです。顧客が製品に満足し、成果を実感していることが前提です。
クロスセルは顧客が現在利用している製品やサービスに関連する別の製品やサービスを提案することです。顧客が他の製品やサービスの利用によって更なる成功を得られると考えられる場合に有効です。
顧客からのフィードバックを収集し、そのニーズに応じて製品やサービスを改善することもLTVの最大化に重要です。顧客からのアンケートやインタビューを通じて、利用状況やニーズを把握し、収集したフィードバックを分析し、顧客が抱える問題や改善点を特定します。
顧客のフィードバックを基に製品やサービスの改善を行い、顧客満足度の向上を図ることでLTVの向上が期待できます。
SaaSやその他のサブスクリプションモデルでは、顧客が最初にサービスを利用し始める際に安心して使い始められる環境を整えることが重要です。これを実現するための最初のステップが「オンボーディング」です。オンボーディングは、顧客が製品やサービスを購入した直後から始まるプロセスで、顧客が製品をスムーズに導入し、自立して使いこなせるようになるための一連の活動を指します。
オンボーディングが完了すると、次に「アダプション(活用促進・製品定着)」というプロセスが続きます。この段階では、顧客が製品やサービスをさらに深く活用し、高い成果を上げられるように支援します。アダプションが成功すると、顧客の満足度が高まり、次のステップである「リニューアル(契約更新)」につながります。リニューアル後には、「エクスパンション(契約拡大:アップセル・クロスセル)」が続き、顧客の利用範囲や契約内容を拡大することが目指されます。これら一連のプロセスを総称して「カスタマーサクセス」と呼びます。
本章では、各プロセスの意味とそれぞれの業務内容について詳しく解説します。
クラウドサーカスのオンボーディングプログラム
クラウドサーカスでは「スタートアッププログラム」を通じて、顧客のオンボーディングをサポートしています。このプログラムでは、以下のような複数の支援活動が実施されます:
※クラウドサーカス社のMAツール「BowNow」のオンボーディングプログラム
オンボーディングの重要性
オンボーディングは、顧客の契約更新やアップセル、クロスセルに直接的な影響を与えるため、極めて重要なプロセスです。具体的には、以下の点が特に重要です。
まず、オンボーディングが全体のプロセスに与える影響の大きさが挙げられます。オンボーディングが成功することで、顧客の利用意欲や満足度が高まります。これは、製品やサービスに対する初期の期待感や信頼感を大きく左右します。一方で、オンボーディングに失敗すると、顧客の初期体験が悪化し、利用意欲が低下する可能性があります。具体的には、設定や操作が難しかったり、サポートが不十分だったりすると、顧客は製品に対する関心を失うかもしれません。こうした状況が続くと、顧客は早期に解約を決定するリスクが高まります。また、満足度が低下することで、顧客がネガティブな印象を持ち、再契約や継続利用の意欲が大きく減少する可能性もあります。このため、オンボーディングの段階で顧客の期待に応え、良好な体験を提供することが不可欠です。
次に、タイム・トゥ・バリュー(TTV)の短縮も重要です。タイム・トゥ・バリューとは、顧客が製品から実際の価値を感じるまでにかかる時間を指します。顧客が迅速に価値を実感できることは、顧客満足度の向上と解約リスクの低下に直結します。具体的には、製品やサービスのセットアップがスムーズであれば、顧客は早期に製品の価値を体験できます。例えば、簡単な初期設定や事前に設定されたテンプレートなどがあれば、顧客はすぐに使用を開始でき、価値を実感しやすくなります。また、分かりやすい初期ガイダンスやチュートリアルの提供も有効です。これにより、顧客は製品の主要機能や利用方法を迅速に理解し、初期の成功体験を得ることができます。こうした施策により、顧客が早期に製品の成果を実感し、満足度が高まることが期待されます。
さらに、アップセルやクロスセルの機会を創出することもオンボーディングの重要な要素です。顧客が製品を使いこなせるようになると、新たなニーズや課題が浮かび上がることがあります。オンボーディングの段階で顧客が製品を十分に理解し、活用できるようになると、顧客から追加の機能やサービスに対するニーズが明確になります。この状態で、適切なタイミングでアップセルやクロスセルの提案を行うことが可能になります。例えば、顧客が基本的な機能を使用する中で、さらに高度な機能や追加モジュールが必要であると感じる場合、これに応じた提案ができます。このように、オンボーディングを成功させることで、顧客のニーズに応じた提案が可能になり、収益の向上につながるのです。
このように、オンボーディングは顧客の初期体験を形作り、製品の利用開始から価値を実感できるまでの時間を短縮することが求められます。これにより顧客の満足度が向上し、解約リスクが低下すると同時に、アップセルやクロスセルの機会も創出されるのです。成功するオンボーディングは、顧客のロイヤルティを高め、長期的な関係を築くための基盤となります。
オンボーディングはハイタッチ・ロータッチ・テックタッチなどカスタマーサクセスの提供方法によってかわりますが、主な業務としては、以下のものがあります。
オンボーディング項目 | 説明 |
---|---|
導入後のサポート・フォロー体制についての説明 | ●サポート問い合わせ窓口の案内 ●マニュアルサイト ●ユーザー会・顧客向けセミナーの案内 ●サポートからのメルマガの登録 など |
KPI/KGI設定、活動計画設定 | ●具体的な成功の指標を決める ●定期的な状況確認と報告 ●ゴールまでのロードマップ(計画書)作成 など |
製品・サービスの使い方のトレーニング、研修 | ●ID登録や基本設定 ●チュートリアル(プロダクトツアー)による操作方法 ●スタートアッププログラムの実施 ●個別勉強会 など |
その他 | ●コンサルメニューの紹介 |
関連記事: オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説
アダプションの主な業務として、下記の活動が挙げられます。
定例会実施 | 活用度チェック |
計画進捗チェック | 顧客満足度調査 |
ユーザー会・セミナー開催 | 顧客の活用事例紹介 |
個別勉強会 | 機能アップデート共有・説明 |
カスタマーサクセスのタッチモデルには、主に「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つがあり、それぞれ顧客の規模やニーズに応じて異なるアプローチを取ります。これらのタッチモデルは、カスタマーサクセスを最適化し、効率的に顧客をサポートするための基本的なフレームワークです。顧客数が増加する中で、すべての顧客に対して同じレベルの対応をするのは現実的ではないため、このようなモデルを活用することで、人的リソースやコストを効率的に活用しつつ、顧客満足度を最大化することができます。
まず、ハイタッチ(High Touch)について説明します。ハイタッチモデルは、企業にとって非常に重要な顧客、つまりLTV(顧客生涯価値)が高く、収益に大きな影響を与える顧客を対象に行われるものです。このモデルでは、カスタマーサクセス担当者が1対1で個別対応を行い、顧客のニーズに応じたきめ細やかなサポートを提供します。具体的な施策としては、対面での打ち合わせ、定期的なビジネスレビュー、カスタマイズされたソリューションの提供などが挙げられます。ハイタッチへのアプローチ施策としては対面などの個別対応が中心で、よりフレキシブルな対応が必要になります。活用に向けた個別の目標設定・定期的な進捗確認、機能などのカスタマイズなど、コンサルティングのような手厚いサービスを実施するのが一般的です。ハイタッチの主な目的は、顧客との強固な関係を築き、エンゲージメントを高めることです。このアプローチはコストがかかるため、すべての顧客に対して行うのは難しいですが、大口顧客や戦略的パートナーには非常に有効です。ハイタッチモデルでは、専任のカスタマーサクセスマネージャーが顧客との長期的な関係を構築し、顧客が成功するための手厚いサポートを行います。
ハイタッチへのアプローチ施策としては対面などの個別対応が中心で、よりフレキシブルな対応が必要になります。活用に向けた個別の目標設定・定期的な進捗確認、機能などのカスタマイズなど、コンサルティングのような手厚いサービスを実施するのが一般的です。
具体的なハイタッチの施策としては以下の方法があります。
関連記事: ハイタッチとは?カスタマーサクセスのタッチモデル「テックタッチ」「ロータッチ」との違いや分類方法、具体例をわかりやすく解説
次に、ロータッチ(Low Touch) について見ていきます。ロータッチは、ハイタッチほど個別対応には重点を置かないものの、人とテクノロジーを組み合わせて効率的に顧客サポートを行うモデルです。ロータッチの顧客は中規模であり、LTVはそこまで高くないものの、今後の成長が期待できる層です。ロータッチ施策には、ウェビナーやグループトレーニング、メールキャンペーン、または定期的なオンラインセミナーなどが含まれます。これにより、顧客に対して効率的かつ一貫した支援を提供できます。ロータッチはハイタッチのように個別での対応をするわけではなく、1:n(多数)の集団的な接点づくりによって、顧客に対して効率的に支援を行いため、顧客数が多いが個別対応のリソースが限られている場合に適したモデルです。例えば、同じ製品を使用している顧客グループに対して共通の情報を提供したり、顧客が自ら情報を見つけ出せるようなリソースを準備することで、時間やコストを抑えつつも質の高いサポートを提供することができます。
具体的なロータッチの施策としては以下の方法があります。
最後に、テックタッチ(Tech Touch)について説明します。テックタッチは、テクノロジーを駆使して大規模な顧客基盤に対して効率的なサポートを行うモデルです。このモデルは、特にLTVが低く、顧客数が多い場合に有効です。中小企業や個人事業主が主な対象であり、人的リソースを介さず、ツールや自動化を活用して顧客のエンゲージメントを高めます。また、LTVは低いものの数としては一番多い層となり、収益にも大きく影響を及ぼします。具体的なテックタッチ施策としては、チュートリアル動画やオンラインガイド、ステップメール、チャットボット、そしてカスタマーポータルなどがあります。これにより、顧客は自分のペースで製品を理解し、活用することができ、サポートチームの負担を軽減しつつ、顧客の満足度を維持することが可能です。テックタッチは、人員が限られているが顧客が大量にいる場合に非常に有効な戦略です。このモデルは、顧客が自らサポートリソースにアクセスできるように設計されており、効率的かつスケーラブルなサポートを実現します。特に、SaaS企業においては、サービスの成長に伴い顧客数が急増することが一般的であり、その際にテックタッチを活用することで、リソースを効果的に管理しながら顧客満足度を高めることが可能です。
テックタッチは、テクノロジーを活用することで顧客にとって最適なタイミングでアプローチを行い、効率の良い接点作りを実現できます。
具体的なテックタッチの施策としては以下の方法があります。
関連記事: テックタッチとは?カスタマーサクセスの重要なタッチポイント ~知っておきたい基礎知識について~
また、これら3つのタッチモデルに加えて、コミュニティタッチの存在も忘れてはなりません。コミュニティタッチは、顧客同士が交流し、情報やノウハウを共有する場を提供することで、顧客のエンゲージメントをさらに高めるアプローチです。コミュニティフォーラムやユーザーグループ、SNSを活用したディスカッションなど、顧客同士が支え合うエコシステムを構築することが目的です。コミュニティタッチは、全てのタッチモデルを横断する施策として機能し、顧客が自ら情報を共有し、問題解決を図ることができる環境を提供します。このようなコミュニティは、顧客のエンゲージメントを高め、LTVの向上にも寄与するため、長期的な成長戦略としても非常に有効です。総じて、カスタマーサクセスの3つのタッチモデルとコミュニティタッチは、顧客の多様なニーズに応えるための効果的な戦略です。これらを適切に活用することで、顧客満足度の向上、エンゲージメントの強化、そしてLTVの最大化が実現可能です。担当者は、自社のリソースと顧客の特徴を考慮し、最適なアプローチを選択することが求められます。
具体的なコミュニティタッチの施策としては以下の方法があります。
関連記事: コミュニティタッチとは?カスタマーサクセスの3つのタッチモデルとの関係やメリット・デメリット、成功事例などを解説
カスタマーサクセスを効果的に運営するためには、成果を測定し、進捗を評価するためのKPI(重要業績評価指標)を定めることが不可欠です。特に解約率(チャーンレート)や契約継続率、アップセル・クロスセル率など、顧客のライフタイムバリュー(LTV)の最大化に直結する指標が重要視されます。本記事では、カスタマーサクセスにおける主要なKPIとその測定方法について詳しく解説し、成果を最大化するための戦略を提案します。
継続利用を前提としたサービスの解約(チャーン)の割合を指すのが「解約率(チャーンレート)」です。カスタマーサクセスにおいて特に重要なKPIとされています。
解約率とは、サービスを解約した顧客の割合を示す指標で、特にサブスクリプション型ビジネスにおいて非常に重要です。カスタマーサクセスの役割は、顧客に価値を提供し、長期的にサービスを利用してもらうことです。そのため、解約率を低く抑えることが最優先の課題となります。顧客の離脱を防ぐためには、解約率を正確に測定し、その要因を分析する必要があります。解約率には「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2つのタイプがあります。
計算式:
カスタマーチャーンレート = (期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の顧客数) × 100
例えば、前月末の顧客数が200名で、そのうち14名が翌月に解約した場合、解約率は(14 ÷ 200)× 100 = 7%となります。
例えば、「通常プラン:月額5000円・プレミアムプラン:月額10000円」の商品の場合、4月末の登録者は両プランともに5名ずつであるとします。そのうち2名が5月になるとプレミアムプランを解約したとなると、以下のように計算できます。
計算式:
{サービス単価10000円 × 解約数2 ÷ 総収益(5000円×5 + 10000円×5)}x 100 = 約27%(四捨五入)
解約率はサブスクリプション型ビジネスにおいて、解約率の管理は企業の成長に直結します。解約率が高いと、収益が減少するだけでなく、ブランドイメージにも悪影響を与える可能性があります。したがって、カスタマーサクセスの戦略として、顧客の解約リスクを早期に察知し、適切なフォローアップを行うことで、顧客をつなぎとめて解約を最小限に抑えていくことが重要になります。
契約継続率(リテンションレート)は、解約率と対をなす指標で、サービスを継続利用している顧客の割合を示します。解約率が「去っていく顧客」に焦点を当てる一方で、契約継続率は「継続している顧客」に焦点を当てる、よりポジティブな指標です。カスタマーサクセスの活動がうまく機能しているかどうかを判断するための重要な指標です。「既存顧客維持率」や「定着率」と呼ばれることもあります。
解約率と同様に、契約継続率にも「カスタマーリテンションレート」と「レベニューリテンションレート」の2種類の指標があります。
①カスタマーリテンションレート
カスタマーリテンションレートは、顧客数をベースにした以下の計算式で割り出せます。
計算式:
{(期間終了時の顧客数 - 期間中に増加した顧客数) ÷ 期間開始時の顧客} × 100
例えば、8月時点での顧客数が1000人、同月に350人の顧客が増加し、8月末での顧客数が1300人とします。これを上記の計算式に当てはめてみると、
(1300-350)÷1000×100=95となり、維持率は95%と計算できます。
②レベニューリテンションレート
レベニューリテンションレートは収益をベースにした以下の計算式で割り出します。
計算式:
{(期間終了時の収益 - 期間中に増加した収益) ÷ 期間開始時の収益} x 100
複数の商品・サービスを顧客に合わせて提供している場合や、サブスクリプション型モデルでの販売で顧客ごとに金額が異なる場合などは、レベニューリテンションレートで計算するのが一般的です。
サブスクリプション型ビジネスでは、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持が収益に大きな影響を与えます。契約継続率を高めることは、解約率の低減につながり、企業の成長を支える重要な要素となります。
カスタマーサクセスでのオンボーディング完了率は、サービスの利用開始プロセスである「オンボーディング」がどれだけ完了しているかを示す指標です。オンボーディングの成功は、顧客がサービスを長期的に利用するかどうかを左右する重要な要素です。オンボーディングが不十分な場合、顧客はサービスの価値を感じる前に解約してしまうリスクが高まります。つまりオンボーディング完了率はそのまま解約率・契約継続率にも影響を及ぼすということです。
計算式:
オンボーディング完了率 = (オンボーディングが完了した顧客数 ÷ オンボーディングを受けた全顧客数) × 100
オンボーディングが完了したかどうかを判断する基準は、企業やサービスによって異なりますが、カスタマーサクセスを行う上で共通の認識を持つことが重要です。また、オンボーディング完了率が高いほど、顧客はサービスの価値を理解し、解約リスクが低下します。逆に、オンボーディングが不十分な場合、顧客はサービスに価値を見出せず、解約の原因となる可能性があります。したがって、オンボーディングを効率的かつ効果的に進めることで、顧客の満足度を高め、解約率の低下につなげることができます。
アップセル率は、顧客が現在利用しているプランよりも上位のプランやオプションを購入した割合を示します。アップセルの成功は、顧客単価を向上させ、LTVの最大化に寄与します。クロスセル(cross-sell)は、顧客が現在利用している商品・サービスに関連する商品・サービスの購入を促して利益を得る手法です。この「アップセル・クロスセル率」はどれだけの顧客に対してアップセル・クロスセルを実現できているかを示す割合を意味します。
計算式:
アップセル率 = (アップセルした顧客数 ÷ 全顧客数) × 100
クロスセル率 = (クロスセルした顧客数 ÷ 全顧客数) × 100
アップセルやクロスセルの成功は、既存顧客に対して追加の価値を提供し、企業の収益を増加させる効果があります。しかし、顧客のニーズに合わない提案は、逆に顧客の不満を招き、解約リスクを高める可能性があるため、慎重なアプローチが求められます。
カスタマーヘルススコアは、各顧客の健康状態を数値化した指標で、解約リスクの早期察知に役立ちます。このスコアは、顧客の利用状況、サポートリクエストの頻度、アンケート結果など、複数の要素を統合して算出されます。ヘルススコアは日本語で「ヘルス=健康」「スコア=得点」を意味し、顧客の健康状態を数値化して把握することが可能です。つまり顧客のヘルススコアが高ければ「継続が見込める」、低ければ「解約の確率が高い」ということが判断できます。
定期収益型ビジネスにおいて、リテンション率の向上は企業存続の鍵を握っています。顧客に成功体験を提供できなければ、競争の激しい市場で生き残ることは難しいでしょう。製品やサービスを利用する中で、顧客がその価値を実感できれば、リテンション率は自然と高まり、企業の安定的な経営が実現します。この成功のために不可欠な要素が、カスタマーヘルススコアによる顧客状況の把握と管理です。
カスタマーヘルススコアを活用することで、顧客の健康状態を数値化・可視化し、変化や傾向を迅速に察知できます。これにより、顧客ごとに最適なアプローチが可能となり、リテンションを強化できるのです。効果的にヘルススコアを運用することで、カスタマーサクセス活動がより効率的になり、解約率の低下やアップセル・クロスセルの成功率向上、さらには顧客生涯価値(LTV)の最大化が期待できます。
ただし、ヘルススコアの導入や運用は高度なリソースを要します。自社の成長段階や製品、さらには体制がスコアの運用に適しているかどうかを慎重に見極めることが重要です。
ヘルススコアを計算する前に、「企業にとって健康な状態とは何か」を定義する必要があります。これには、以下のような基本的な要素が含まれます。
定期収益型ビジネスにおいて、リテンション率の向上は企業存続の鍵を握っています。顧客に成功体験を提供できなければ、競争の激しい市場で生き残ることは難しいでしょう。製品やサービスを利用する中で、顧客がその価値を実感できれば、リテンション率は自然と高まり、企業の安定的な経営が実現します。この成功のために不可欠な要素が、カスタマーヘルススコアによる顧客状況の把握と管理です。
カスタマーヘルススコアを活用することで、顧客の健康状態を数値化・可視化し、変化や傾向を迅速に察知できます。これにより、顧客ごとに最適なアプローチが可能となり、リテンションを強化できるのです。効果的にヘルススコアを運用することで、カスタマーサクセス活動がより効率的になり、解約率の低下やアップセル・クロスセルの成功率向上、さらには顧客生涯価値(LTV)の最大化が期待できます。ただし、ヘルススコアの導入や運用は高度なリソースを要します。自社の成長段階や製品、さらには体制がスコアの運用に適しているかどうかを慎重に見極めることが重要です。
ヘルススコアを計算する前に、「企業にとって健康な状態とは何か」を定義する必要があります。これには、以下のような基本的な要素が含まれます。
項目 | 詳細 |
---|---|
ビジネスポテンシャル | ●契約金額 ●年商 ●従業員数 ●契約金額の増減 ●支払い履歴 など |
製品・サービスの活用度 | ●活用スコア 利用時間・活用(ログイン)頻度・機能利用頻度など ●更新リスク ●カスタマーサポートの利用頻度 ●運用担当者数 ●新規アカウント発行数 ●ゴール達成度 など |
プログラム活用度 | ●メルマガ ●導入支援コンサル ●追加コンサル ●活用支援セミナー参加 ●基礎トレーニング ●ユーザー会参加 ●コミュニティ登録 など |
顧客とのリレーション・関係性 | ●Topリレーション ●担当者リレーション ●お客様の声・事例登録 ●お客様からの名刺獲得数 ●ネットプロモータースコア(NPS®) ●顧客満足度 (CAST) など |
マーケティング、インサイドセールス、営業、サポート、開発など複数部門 | カスタマーサクセス、開発部門 |
日本では主にBtoB向けSaaSビジネス | BtoC、BtoB関わらず、ほぼすべての企業に存在している |
また、ヘルススコアを導入し、効果的に運用するためには、以下の5つのステップを踏むことが推奨されます。
①顧客の健康状態を定義する
まず、自社における「健康な顧客」の基準を明確に設定します。これは、製品やサービスの特性に応じて、どの状態が良好で、どの状態がリスクを示すのかを判断するプロセスです。
②指標を決定する
企業の目標や業種に合わせ、適切なヘルススコアの指標を選定します。一般的には、利用状況、顧客満足度、契約状況などが含まれますが、業種ごとに優先される項目は異なることがあります。
③スコア算出方法を決定する
各指標の重みづけや採点基準を定め、スコアの算出方法を構築します。たとえば、サポートへの問い合わせ頻度やトレーニング参加回数をどう評価するかを決め、独自のスコアリングモデルを作り上げます。
④アクションを設定する
スコアが低下した場合や特定の条件を満たした場合に実行する施策を具体化します。これには、カスタマサポートや営業チームによるフォローアップなどが含まれます。
⑤運用と改善を繰り返す
実際にヘルススコアを運用し、結果をモニタリングします。効果的な施策が実行されているかどうかを分析し、必要に応じて改善を行います。
信頼できるヘルススコアを構築することで、顧客が解約する可能性や追加の収益機会を正確に予測し、効率的なアプローチを可能にします。
NPS(Net Promoter Score)は、顧客が企業やサービスに対してどれほどの愛着や信頼を持ち、継続的に利用し続けるかを数値で示す指標です。これは、企業の業績と強い関連性があるため、カスタマーサクセスにおいても重要なKPI(重要業績評価指標)とされています。
NPSは「顧客推奨度」を測る指標で、顧客を「批判者」「中立者」「推奨者」の3つのカテゴリーに分類します。具体的には、商品やサービスに否定的な「批判者」は0~6点を、再購入率が低めの「中立者」は7~8点を、再購入率が高く、友人や知人に紹介する可能性が高い「推奨者」は9~10点を与える顧客を指します。
計算式:
NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合
例えば、推奨者の割合が60%、批判者の割合が30%であれば、60% - 30% = NPS 30となります。NPSの理想値は業界や商材により異なりますが、競合のNPSを基準に設定し、それを上回ることを目指すのが一般的です。NPSが高い企業は、顧客がその商品やサービスに対して信頼を持ち、継続利用してくれる可能性が高いことを示しています。そのため、NPSは顧客ロイヤルティを測る上で非常に重要な指標です。大手企業であるAmazonやGoogleもNPSをKPIとして採用しており、日本企業においても重要視される指標となっています。NPSの測定は、簡単なアンケートで行うことができます。「今利用している商品・サービスを友人や知人に勧める可能性はどのくらいありますか?」といった質問に対し、顧客に0〜10のスコアで評価してもらう形式が一般的です。
このようにカスタマーサクセスでは、解約率、契約継続率、オンボーディング完了率、アップセル率、NPSの5つの指標を重視し、顧客の成功を促進し長期的な成長を目指すべきです。
Salesforce(株式会社セールスフォース・ジャパン)は、CRM(顧客管理システム)を提供する企業として、「カスタマーサクセス」の概念を最初に提唱した業界のパイオニアです。
かつてIT業界では「売り切り型」のビジネスが主流でしたが、Salesforceはクラウドベースのサブスクリプションモデルを導入し、2004年には「カスタマーサクセス」の仕組みを本格的に運用し始めました。同社はカスタマーサクセスを「Salesforceを活用し、顧客がビジネスで成功を収めること」と定義し、最終的な目標は「顧客が自走できる状態になること」としています。
顧客のオンボーディングと定着化の課題をクリアし、Salesforceを活用したPDCAサイクルを回せる環境を提供することで、顧客の成功を支援します。この流れが確立されると、契約更新率が向上し、アップセルやクロスセルの機会が増加するという好循環が生まれます。結果として、顧客生涯価値(LTV)の最大化、つまりカスタマーサクセスの成功を実現することが可能になります。
また、カスタマーサクセスの実現において重要な指標として「契約更新率」「ヘルススコア」「エンゲージメント」が挙げられます。設立当初、主な活動は解約防止に焦点が当てられていましたが、現在では「顧客の成功」を明確に定義し、それに基づいたKPIを設定して活動を展開しています。
このように、既存顧客の成功と定着を図ることで、より大きな成果をもたらすカスタマーサクセスの好事例と言えます。
Sansan株式会社は、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺アプリ「Eight」を提供する、2007年創業の日本発SaaS企業です。
同社は、まだサブスクリプションビジネスが浸透していない時代に事業を開始し、「まずは使ってもらうことが重要」という考えから、2012年に国内初のカスタマーサクセス部門を設立しました。
同社は5つの重要な柱に基づいた組織体制を構築しており、これには、利用促進を担当するCSM(カスタマーサクセスマネージャー)、トレーニング&コミュニティ、プロダクト・フィードバック、テクノロジー&マーケティング、そして契約更新を担うリニューアルセールスが含まれます。これらの柱が組織の枠を超えて連携することで、顧客に柔軟かつ迅速な対応が可能な基盤を築きました。
その結果、顧客価値を大幅に向上させ、最終的には売上の増加にも成功。現在では、SaaS業界でもトップクラスの驚異的な成果を達成しています。
ビジネスモデルや市場の変化に伴い、「顧客の成功」と「自社の収益向上」を両立するカスタマーサクセスの重要性は、今後さらに高まるでしょう。サブスクリプション型ビジネスモデルやコンサンプションモデルなどが主流となる今のデジタル時代において、カスタマーサクセスはすべての企業にとって欠かせない要素です。本記事では、カスタマーサクセスの基礎から、具体的な業務内容、そして成功事例まで幅広く解説いたしました。皆様がカスタマーサクセスへの理解を深めるきっかけとなれば幸いです。また、顧客数の増加に伴いカスタマーサクセスのリソース不足にお困りの場合は、ぜひFullstarの無料プランをご活用ください。