カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いやミッション・役割・主な業務・KPI・事例などわかりやすく解説

カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いやミッション・役割・主な業務・KPI・事例などわかりやすく解説

カスタマーサクセス(Customer Success)は、「顧客を成功に導く」ことにフォーカスし、既存顧客の成功体験を実現するために能動的に支援する組織・活動のことです。

近年、SaaSやPaaSをはじめとしたサブスクリプション型ビジネスモデルの企業が「カスタマーサクセス」に力を入れています。しかし、SaaSビジネスやサブスクリプションモデルに関係なく、今のデジタル時代を生き抜く企業すべてにとって必要であると私たちは考えます。

本記事ではカスタマーサクセスの意味からカスタマーサポートの違い、ミッションや役割、提供方法、具体的な業務や事例に至るまで、カスタマーサクセスの全てが分かるように網羅的に解説します。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、顧客の成功を実現し、自社の収益を最大化すること

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、直訳すると「顧客の成功」という意味で、「顧客が求める成果や目標の達成」を実現するために顧客と一緒に伴走し、且つ「自社の利益を最大化」する活動や組織のことを指します。

例えばSaaSやPaaSをはじめとするサブスクリプション型ビジネスモデルの場合、顧客に製品・サービスを毎年継続利用してもらわなければ採算が取れません。そのためカスタマーサクセスが既存顧客に対し継続的且つ能動的に支援していくことで

1

顧客の成功(体験)を実現

2

ロイヤルティ向上

3

契約更新

4

契約金額増加(アップセル・クロスセル)

5

口コミや紹介による二次収益

のプロセスを生み出し、自社の定期収益を最大化することを目指します。

顧客が製品やサービスを導入しただけでは成功は届けられません。

顧客の成功が何かを正しく理解し、ゴールを把握したうえで常に成果や成功を確認し、顧客の成功を実現するためにパートナーとして伴走する存在がカスタマーサクセスなのです。

また、カスタマーサクセスとは、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)に特化した「組織」であり、また「活動」「理念」でもあります。たとえば「営業」と言うとき、単に部署名を指す場合と活動を示す場合があるのと同様で、概念はまったく異なるもののカスタマーサクセスも同様に組織と活動が密接に関係しています。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを解説

カスタマーサクセスと似た名前に「カスタマーサポート」があります。

「カスタマーサクセス」と「カスタマーサポート」はどちらも

  • 顧客と接点がある
  • サービスに対しての高い専門知識を必要とする
  • 略すとCSと表記される
  • 最初に「カスタマー」がつく

など、似たような所も多く混同されやすいため、ここではそれぞれの違いを分かりやすく解説します。

  カスタマーサクセス カスタマーサポート
目指すべきところ 自社の定期収益増加 顧客満足度向上
目的 顧客の成功 クレーム処理・不満解消
顧客への姿勢 能動的/先回り型 受動的/要望対応型
KPI ●リテンション(継続・維持)率
●オンボーディング完了率
●解約率
●アップセル・クロスセル率
●顧客満足度
など
●FCR(初回解決率)
●自己解決率
●対応件数
●顧客満足度
●返信時間の短さ
など
ゴール 顧客の成功 問題の収束
顧客との関わり方 継続的 一時的
関連部門 ●マーケティング
●インサイドセールス
●営業
●サポート
●開発
●カスタマーサクセス
●開発
管理範囲 購入後のアフターケア 一連の顧客体験
(リード〜成約〜オンボーディング〜導入〜解約)
業務内容 顧客努力の低減
回答品質・速度の向上
顧客サービス理解・活用速度の向上
製品に対する専門性 必要 必要
接客スキル

役割と目的の違い

カスタマーサクセスは顧客と一緒に伴走し顧客を成功に導く

カスタマーサクセスは、データを分析することで先回りして顧客の問題を回避し、顧客に対して能動的にはたらきかけることで解約を防ぎます。顧客からの要請の有無に関わらず、自ら能動的且つ戦略的に支援するのが特徴です。顧客と常に寄り添って伴走し、顧客を成功に導くことが役割です。

カスタマーサポートは顧客が抱える問題をいかに迅速に解決できるか

カスタマーサポートとは、カスタマー(既存顧客)からの問い合わせに対応する業務、あるいはその部署のことです。

カスタマーサポートは、製品・サービスにまつわる問題や質問を顧客から受け、電話やメール、チャットなどで問題解決に向けた手助けをします。

「課題を先回りして解決する」のが主目的である能動的なカスタマーサクセスに対して、カスタマーサポートの主な目的は「押し寄せる顧客の問題に迅速に対応し解決することで満足度を向上させる」ことです。

顧客との関わり方の違い

カスタマーサクセスは能動的で顧客と継続的なつながりをもつ

カスタマーサクセスの顧客との関わり方は能動的且つ継続的です。「オンボーディング」プロセスからはじまり、導入支援、サービス・製品の活用促進、契約更新のフォローなど顧客が成功体験を実現するまで定期的にさまざまな支援を行います。

カスタマーサポートは受動的かつ単発的・一次的な関わり

カスタマーサクセスは顧客からのアクションから対応が始まるため受動的であることが特徴です。既存顧客からきた問い合わせの問題が解決すると顧客との関わりもなくなります。

KPIの違い

カスタマーサクセスはLTVに関するKPI

カスタマーサクセスは「顧客が求める成果や目標達成」を実現し、リテンション率(利用率、定着率)やLTVを最大化することを目標としているため、KPIは主にリテンション率やアップセル・クロスセル率、オンボーディング完了率、解約率になります。

カスタマーサポートは顧客が抱える問題をいかに迅速に解決できるかがKPI

カスタマーサポートはどれだけ顧客に負担やストレスを与えることなく迅速に対応・問題解決できるかがカギとなるため、KPIは主に初回解決率(FCR)や自己解決率、顧客満足度(CSAT)の高さになります。

以上のように、カスタマーサクセスとカスタマーサポートはそれぞれ異なる役割をになっています。自社の商品・サービスを考慮したうえで、両者のバランスをとった体制整備が必要です。

関連記事: カスタマーサポートとは?目的や重要性、仕事内容、カスタマーサクセスとの違いをわかりやすく解説

カスタマーサクセスと営業(セールス)の違い

カスタマーサクセスと営業(セールス)の違いを解説

カスタマーサクセスも営業(セールス)も、「自社の利益につなげること」が目指すべきところなのは共通していますが、大きな違いは担当領域と目的です。

営業の目的が「新規顧客の契約獲得」なのに対し、カスタマーサクセスの目的は「既存顧客を成功に導く」ことで、営業が契約した顧客に長く継続利用してもらえるよう支援することです。

新規顧客獲得には既存顧客の5倍のコストがかかるという1:5の法則があるように、新規顧客獲得は既存顧客維持より難易度が高く、営業力には個人差があるため成果に差が出やすいと言われています。

  カスタマーサクセス 営業(セールス)
目指すべきところ 自社の定期収益増加 自社の収益増加
目的 既存顧客の契約維持 新規顧客の契約獲得
活動 顧客を成功に導くための活動 新規顧客獲得のための活動
成果 担当者ごとの成果に差が出にくい 個々の営業の力量によって成果に差が出やすい

カスタマーサクセスが注目される理由と背景

カスタマーサクセスが注目され、重要視されるようになった理由と背景には「ビジネスモデルの変化」があります。

買い切り型からサブスクリプション(月額・定額)型のビジネスモデルへ

カスタマーサクセスが普及し、多くの企業で求められるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか。

サブスクリプション型ビジネスモデルの急増

「カスタマーサクセス」という概念が誕生した背景には、サブスクリプション型ビジネスモデルが急速に普及したことがあります。

従来は多くのビジネスが、最初にモノを買う・所有する「買い切り型ビジネスモデル」でしたが、近年では「利用する期間だけ支払う」方式に切り替わりつつあります。とくにSaaSやPaaSをはじめとするクラウド事業においては、サービスの利用期間中「定額・月額」で利用するサブスクリプション型ビジネスモデルが主流となりました。

BtoB業界でも今までは、パッケージ型サービス(導入時に高額を支払いきる形)が主流でしたが、この数年はインターネット上でサービスが提供されるようになり、月額制の料金体系が浸透してきています。この背景には「体験」をより重視するようになった「消費者行動の変化」=「利用・成果重視の時代への変化」があるのです。以下に、サブスクリプションモデルのサービスの一例をご紹介します。

<BtoCのサブスクリプション事例>

  • 音楽配信「Apple Music」
  • 動画配信「Netflix」
  • カーシェア「タイムズカー」

<BtoBのサブスクリプション事例>

  • SalesforceのCRMソフトウェア「Sales Cloud」
  • Microsoft Officeアプリ「Microsoft 365」
  • 人事労務・会計ソフト「freee」
  • コミュニケーションツール「Slack」

SaaSのサブスクリプションは契約からが始まり

従来の「契約・購入」がゴールとなる買い切り型ビジネスモデルでは、契約や購入後の顧客にそれほど注意を払う必要はなく、「カスタマーサポート」といった受動的な支援でも企業は収益をあげることが可能でした。営業の分野でも、いかに契約をとるかという方法論を重視したノウハウ本などが数多く出版されてきました。

一方サブスクリプションモデルは、「契約」からがスタートとなり、顧客の利用期間に応じて収益を得る仕組みです。「はじめに高額の支払いをする」といった決断をせずとも比較的安価にスタートできるため、使い始めてもらうハードルが低い反面、安定的に収益を確保するためには、顧客に長期間継続して利用してもらう必要があります。また「簡単に解約されてしまう」といったデメリットもあり、製品・サービスの「継続利用」は喫緊の課題となりました。

継続利用してもらうためには、「具体的に成果が出ていること」と「顧客が成果を実感できていること」がカギになります。「買っていただいた後が大切」というのは精神論ではなく、複利的に加速する売り上げ成長と同義であり、加えてコスト効率も格段に良いのです。この「顧客の成果が直接収益に還元される仕組み」において、「カスタマーサクセス」の概念はより重視されるようになりました。

伸び続けるSaaS市場

新型コロナウイルス感染症拡大防止によるテレワークでの働き方が普及するなど、企業の働き方が大きく変化する中、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてSaaSがより一層注目されるようになりました。

SaaS業界レポート2020 』によると、SaaS市場は急成長しており、2024年には約1兆1,200億円へと拡大する見通しが立っており、今後もさらに拡大していくことが見込まれています。

また、独立系ITコンサルティング・調査会社である株式会社アイ・ティ・アールは、ERP(統合基幹システム)製品における市場規模の推移と予測について以下のように発表しました。

下記の図からも、SaaS市場が伸び続けており、今後もその勢いは止まらないと予測されていることがわかります。それに伴いカスタマーサクセスの重要性もより高まっていくでしょう。

ITR Market View:ERP市場2021

・引用元サイト: ITR(アイ・ティ・アール)プレスリリース:

今後、サブスクリプションモデルから従量課金のコンサンプションモデルへ

これまでは利用の有無に関わらず、契約したサービスの月額費用を支払うサブスクリプションモデルが主流でしたが、昨今SaaS業界では使用量ベースでの従量課金型のビジネスモデル「コンサンプションモデル」が増加しつつあります。

コンサンプションモデルは、新規契約時に費用は発生せず、顧客がサービスを利用することで初めて企業の売上が出るビジネスモデルです。このモデルでは顧客の中長期的な継続利用に加え、アップセル率・クロスセル率に指標が置かれるため、カスタマーサクセスの重要度は今後より一層高まることが予想されます。

コンサンプションモデルの例として分かりやすいのが、電通デジタル「 サブスクとその後の未来に向けて、今取り組むこと 」の記事で紹介されているフィットネスジムの話です。

現在多くのフィットネスジムは月額制ですが、今後滞在時間での課金モデルへと変化していった場合、入会しただけでは売上につながらず、いかに顧客の利用頻度を上げるか、もしくは滞在時間を延ばすかということが重要になります。つまり、入会契約数がいくら多くても、顧客に利用してもらえなければ意味がなくなるということです。

今後コンサンプションモデルが主流になれば、営業とカスタマーサクセスの役割が一緒になる、もしくは営業自体がなくなっていくことが予想されます。

コンサンプションモデルの実例

完全使用量ベースでのコンサンプションモデルを採用している会社で有名なのが、メッセージングアプリ「Slack」やデータクラウド「Snowflake」、「AWS(アマゾンウェブサービス)」などです。

例えばコミュニケーションツール「Slack」では、ユーザー単位での課金システムを採用し、実際に利用した顧客分だけ費用を請求し、利用していないメンバー分は課金されない仕組みになっています。

米国では既にコンサンプションモデルが主流になってきており、日本においても今後増えていくことが見込まれます。

※注:コンサンプションモデルの定義は各所によって定義が異なりますが、ここでは非アクティブなユーザーも対象となる課金システムや月額費用(サブスクリプション)が含まれるものは対象外とし、「完全使用量ベースでの課金モデル」のみコンサンプションモデルとして定義しています。

カスタマーサクセスの位置と役割

カスタマーサクセスはどのような位置づけで、どのような役割を果たしているのかを、セールスフォース・ドットコムで活用されてきた営業プロセスモデル「The Model」を元に解説します。

営業プロセスモデル「The Model」とは

「The Model(ザ・モデル)」とはマーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスの分業体制のことを指します。

セールスフォース・ドットコムで活用されてきた営業プロセスモデルのひとつで、集客から商談・契約、カスタマーサクセスに至るまでの各段階で情報を可視化・数値化し、部門間の連携により企業の売上増加を図っていく考え方・概念でもあります。

この4つのプロセスに当てはめて、カスタマーサクセスがどのような役割を果たしているの解説いたします。

営業プロセスモデル「The Model」におけるカスタマーサクセスの位置と役割

「The Model」で見るカスタマーサクセスの位置と役割

ひとつ目のプロセスである「マーケティング」では、認知拡大施策によるリード(見込み顧客)獲得、また獲得したリードを育成(リードナーチャリング)することで有望リードへと育成することが求められます。いかに多く自社の利益につながる見込み顧客を集めるかが、マーケティング部門の役割です。

ふたつ目の「インサイドセールス」では、マーケティング部門が送客してきた見込み顧客に対して能動的にアプローチを行い、購買意欲を高め、商談が成立するかどうかを見極めてできる限り確度の高い顧客を営業へと引き渡すことが役割です。

みっつ目の営業(フィールドセールスまたはアウトサイドセールス)は、インサイドセールスから送客された見込み顧客を案件化し、最終的に契約を獲得する役割を担っています。

そして最後のプロセスに位置するのが「カスタマーサクセス」です。

マーケティングから営業までを通して、ようやく顧客にサービスを契約してもらっても、カスタマーサクセスの支援なくしては契約期間が終われば解約されてしまう確率が高くなります。

オンボーディングプロセスの実行から製品・サービスの活用促進を促し、顧客の課題を先回りして解消することで、契約更新(解約防止)を実現するほか、アップセル・クロスセルによって自社の収益向上へとつなげていくことが「カスタマーサクセス」の役割なのです。

カスタマーサクセスの位置と役割についてみてきましたが、次の章ではカスタマーサクセスのミッションについて解説します。

カスタマーサクセスのミッション

カスタマーサクセスのミッションはLTVの最大化

カスタマーサクセスにおける最も重要なミッションは「LTVの最大化」です。LTVの最大化を実現する重要な指標として「解約(チャーン)の減少」「顧客ロイヤルティ向上」「アップセル・クロスセル」「顧客ニーズの吸い上げとフィードバック」の4つが挙げられます。

LTV(顧客生涯価値)の最大化

LTV(顧客生涯価値)とは

LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略称で、「顧客生涯価値」を意味し、顧客が自社と契約開始してから解約するまでの間に得られる利益の総額を指します。

ビジネスモデルによっても多少異なりますが、最も基本的かつシンプルな計算式は下記で表せます。

LTV=平均購買単価×購入頻度×購買継続期間

たとえば、月額制のサブスクリプションサービスで10,000円のサービスを3年間利用した場合、LTVは以下のように割り出せます。

 1アカウントの契約単価(10,000円)×購入回数(12ヵ月)×継続期間(3年)=360,000円

 LTV=360,000円

上記の式からわかる通り、顧客の契約単価が高く、利用期間が長いほどLTVは高くなります。

LTV(顧客生涯価値)を最大化させるために

LTVを最大化するためには

  • アップセル・クロスセルで契約単価を上げる
  • 解約率を引き下げる=リテンション(継続)率を上げる
  • 顧客ロイヤリティを高める
  • プロダクト・サービスをより改善する

以上の4つが重要になります。

従来の「買い切り型モデル」では、収益は「顧客が契約・購入したタイミング」でほとんど回収できていましたが、「サブスクリプション型モデル」は、顧客が月々に支払う金額が比較的安価で手軽に利用できるメリットがある反面、中長期にわたって継続利用してもらわなければ利益をあげられない仕組みになっています。

カスタマーサクセスに取り組むことで、

1

サービス導入後、オンボーディングにより顧客が自立的に活用できるようになる

2

製品・サービスを利用して顧客が成果をあげる

3

顧客にとってなくてはならないプロダクト・企業になる

4

継続利用につながる

5

契約拡大(アップセル・クロスセルで他のサービスも利用する)

6

ロイヤルティ向上

7

口コミ・紹介

というカスタマーライフサイクルを回すことが可能になります。

それによって企業はLTVを最大化し、安定した定期収益を得ることができるようになります。

カスタマーサクセスのカスタマーライフサイクル

LTVが注目される背景

現在、SaaSやPaaSをはじめとしたサブスクリプション型のビジネスモデル増加や人口減少、顧客の購買行動の変化によって新規顧客の獲得は困難になりつつあり、契約継続の重要性が高まっています。

新規顧客に販売するコストは、既存顧客に販売するコストの5倍かかるという「1:5の法則」をはじめ、「5:25の法則」では顧客離れを5%改善できれば、最低でも25%の収益向上が見込めるといわれており、企業は新規顧客を獲得することで売上・収益を伸ばすのではなく、顧客の維持と顧客あたりの収益をより多く確保するための活動に注力するようになり、LTVが注目されはじめました。

関連記事: LTVとは?基礎知識や算出方法からカスタマーサクセスとの関係性など、その重要性をまとめました

解約(チャーン)の減少

LTVを最大化するために、重要とされる指標が「解約(チャーン)の減少」です。

解約(チャーン)とは、顧客が、継続利用を前提としたサービスを解約することです。

サブスクリプション型やSaaS型のビジネスモデルは、継続ユーザー数を積み上げることで利益を出すため、解約が多いと事業は成長できません。

そのため、「いかに顧客に継続利用してもらえるか=どれだけ解約を減少させるか」が重要になります。

解約を減少させるためには、顧客の活用状況やヘルススコアを把握し、適切な接点を持ちながら顧客の成功を実現することで、顧客にとってなくてはならないプロダクト・企業になることが重要です。

関連記事: チャーン(churn)とは?カスタマーサクセスに必須の指標、その意味と計算方法について

顧客ロイヤルティ向上

顧客ロイヤルティの向上もLTVを最大化するための重要な指標のひとつです。

顧客ロイヤルティとは

顧客ロイヤルティとは、顧客が特定のブランドや商品、またはサービスに対して感じる「信頼」や「愛着」のことを指します。ロイヤルティ(Loyalty)は直訳すると「忠誠心」という意味で、企業に対する信頼や愛着の大きさを「ロイヤルティが高い(または低い)」と表現します。

顧客ロイヤルティを高めるメリット

顧客が商品やサービスに対して愛着や信頼をもっていれば継続的に利用してくれる可能性があるため、顧客ロイヤルティ向上は、LTV最大化には欠かせません。

顧客ロイヤルティが高い顧客を「ロイヤルカスタマー」と呼びますが、ロイヤルカスタマーは商品・サービスの継続的な利用だけでなく、自分の身近な人に紹介したり、集客に協力してくれたりと、企業の売上向上に貢献してくれる可能性があるため、顧客ロイヤルティを高めることで大きなメリットを得ることができます。

その他にも、顧客ロイヤルティの向上は顧客単価の向上、口コミによる拡散、リピート率向上、解約率の低下など様々なメリットが挙げられ、様々な企業が力を入れて取り組んでいます。

顧客ロイヤルティを図る指標「NPS」とは

どれだけ顧客がサービスや商品に愛着を感じているか顧客ロイヤルティを測るために、「NPS®(Net Promoter Score/ネットプロモータースコア)=顧客推奨度」が使用されます。NPSは計算方法が簡単であることに加え、信頼性の高さからGoogleやAmazonをはじめ利用する企業が増えています。

NPSの計測は、顧客に対するアンケート形式で行います。顧客が購入した商品・サービスを他人におすすめしたい度合いについて0〜10点で評価してもらい、6点以下だった顧客は「批判者」、7〜8点は「中立者」、9〜10点は「推奨者」として分類します。

NPSの計算方法としてはNPS=「推奨者の割合」-「批判者の割合」で求めることが可能です。NPSの数値が高いほど顧客ロイヤルティが高いということになります。

関連記事: 顧客ロイヤルティとは?向上のための施策や主なメリット

アップセル・クロスセル

既存顧客に販売するものを増やす(定期収益を増やす)ことを目的としたアップセル・クロスセルの解説

既存顧客に販売するものを増やす(定期収益を増やす)ことを目的とした「アップセル・クロスセル」もLTVを最大化するための重要な項目です。

アップセルとは

アップセル(up sell)とは、顧客が購入した自社製品・現在利用しているサービスよりも高額な「上位製品やサービス」、または「追加オプション」の購入を促進することで、定期収益を増やす手法です。顧客の「数」ではなく、顧客の「質(単価)」向上に重点をおいた施策といえます。

ただし、既存顧客にアップセルするためには、顧客が利用している製品・サービスに対して「一定の成果・成功を実感できており、顧客ロイヤルティがある程度高いこと」が必須です。

クロスセルとは

クロスセル(cross sell)とは、顧客が購入した(現在利用している)自社の製品・サービスに対して、関連する別の製品・サービスを購入してもらうことによって定期収益を増やす手法です。「セット販売」という言葉で表すとイメージしやすいかもしれません。アップセル同様、顧客の「数」ではなく、顧客の「質(単価)」向上に重点をおいた施策です。

カスタマーサクセスにおけるクロスセルは、購入後の活用イメージや成功イメージを想起してもらうことが重要になります。「一緒に利用する方がもっと成功につながりそうだ」というポジティブなイメージを持ってもらい、購入後も「成果がでた、成功につながった」と満足する結果を得てもらうことで、顧客ロイヤルティの向上につなげることが可能です。

アップセル・クロスセルの重要性(LTV最大化)

SaaSをはじめとするサブスクリプション型ビジネスモデルにおいて、新規顧客と契約した時点では一般的に顧客獲得単価を回収できず、利益を出すためには顧客に長く商品・サービスを継続利用してもらう必要がありますが、長く利用してもらう以外にも既存顧客の購買単価を上げることでLTVを向上させることが可能です。

LTVの計算式にあるLTV=平均購買単価×購入頻度×購買継続期間

新規顧客を獲得することなく売上を向上させるには、アップセル・クロスセルによる定期収益の増加が非常に有効な手段といえます。収益率をあげ、LTV最大化に貢献する重要な施策です。

関連記事: アップセル・クロスセルとは?意味や違い・カスタマーサクセスにおける重要性、事例を解説

顧客ニーズの吸い上げとフィードバック

顧客との接点が一番多い「カスタマーサクセス」において、顧客ニーズの吸い上げとフィードバックも重要な要素です。

自社の商品やサービスが完成したらそこで終わりではなく、利用している顧客にアンケートを取り、その結果を分析して顧客と市場の変化に対応していく必要があります。

顧客ニーズを的確に把握し、分析→開発→フィードバック→商品の改善という流れで常に商品やサービスの質を向上させていけば、顧客満足度や契約継続率は上がっていきます。

また商品やサービスの改善は集客や商談数の増加にも寄与し、マーケティング部門や営業部門だけでなく、全ての部門にとって利益をもたらします。

クラウドサーカス社でもプロダクトマネージャーをはじめとし、マーケティング部門やインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスを交えたMTGを定期的に実施し、顧客からのニーズをもとにアジャイル開発を行っております。

カスタマーサクセスのプロセスと主な業務

カスタマーサクセスのプロセスと主な業務

上の図は商品・サービス契約後のカスタマーサクセスのプロセスを表したものです。

SaaSのようなサブスクリプションモデルにおいて、最初に顧客が安心してサービスを利用できる環境づくりが欠かせません。その最初の環境づくりとして実施するのがオンボーディングです。

オンボーディング終了後は、顧客に製品・サービスをより使いこなしてより高い価値を出してもらうための活動「アダプション(活用促進・製品定着)」を実施し、「リニューアル(契約更新)」につなげます。その後「エクスパンション(契約拡大:アップセル・クロスセル)」という流れでプロセスが進み、このプロセス全体の総称をカスタマーサクセスと呼びます。

本章では各プロセスの意味とプロセスごとの業務について詳しく紹介します。

オンボーディング(On-boarding)

オンボーディング(On-boarding)とは

「オンボーディング」は顧客が製品・サービスを購入した直後から始まります。

オンボーディング(On-boarding)とは、アカウント登録や基本設定を済ませトレーニングにより利用者に使い方を理解してもらうことで自立的に使える(自走できる)ようにする段階のことを指します。

サービスの理解不足による解約を防ぐためユーザーをフォローし、継続して利用してもらうことがオンボーディングの目的です。

ユーザーが自社サービスを利用する際に生じた課題・不安・疑問を解決して成功へと導くのがカスタマーサクセスですが、中でもオンボーディングのフェーズは特に重要とされています。

クラウドサーカス社でも、オンボーディングプロセスに「スタートアッププログラム」を組み込んでおり、顧客が自走できる状態になるため1on1導入支援や個別相談、勉強会、動画コンテンツ、技術支援などを複数回に渡り実施しています。

クラウドサーカスのオンボーディングプログラム「スタートアッププログラム」の流れを解説

※クラウドサーカス社のMAツール「BowNow」のオンボーディングプログラム

オンボーディングの重要性

オンボーディングが重要視されているのには、主に3つの理由があります。

オンボーディングは後のすべてのプロセスに影響を与える

まず1つ目に「オンボーディングはすべてのプロセスに影響を与える」という理由が挙げられます。

解約の大きな要因の一つが「オンボーディングに失敗することだ」と言われているほど、オンボーディングはとても重要なプロセスです。前述の通り、オンボーディングは導入直後から実施される活動で、顧客自身の活用意欲や期待値が一番大きいタイミングでもあります。

そのタイミングでオンボーディングに失敗し、「思ったより良くなかった」「使いこなせる気がしない」と顧客に失望感を与えてしまうと、その後の全てのプロセスに悪影響を及ぼします。

一度失望させた顧客に対して、カスタマーサクセスが時間を使ってもう一度前向きな気持ちに戻すのは非常に困難で、それが理由で解約になる可能性も高くなります。

最適なオンボーディングを実施するには十分なリソースと人材(またはツール)を投入する必要があります。

タイム・トゥ・バリューを短縮し解約を回避する

2つ目の理由として、「タイム・トゥ・バリューを短縮し、解約を回避する」という点です。タイム・トゥ・バリュー(Time to Value)とは、「顧客が価値を実感するまでに要する時間(速さ)」を指します。

SaaSやサブスクリプションの世界では、いかに迅速に価値をもたらすことができるかが継続や収益拡大のカギとなります。そのためカスタマーサクセスは、価値が小さくても少しでも早く顧客に価値を届けることが重視されます。

オンボーディングによって、顧客が継続して活用していきたいと思える体験や価値をすばやく提供し、顧客満足度を高めることで解約を回避することが可能です。

アップセル・クロスセルで自社の利益を向上できる

最後に、優れたオンボーディングを実施できれば、自社の利益向上につながる「アップセル・クロスセル」が促進されることも理由のひとつです。

顧客が商品・サービスを使いこなせるようになると、新たな課題やニーズが生まれます。

カスタマーサクセスと顧客の信頼関係が築けていれば、顧客は上位プランの導入や関連サービスの購入などをカスタマーサクセスに相談し、新たな収益を生むことができるでしょう。

オンボーディングの主な業務

オンボーディングはハイタッチ・ロータッチ・テックタッチなどカスタマーサクセスの提供方法によってかわりますが、主な業務としては、以下のものがあります。

オンボーディング項目 説明
導入後のサポート・フォロー体制についての説明 ●サポート問い合わせ窓口の案内
●マニュアルサイト
●ユーザー会・顧客向けセミナーの案内
●サポートからのメルマガの登録
など
KPI/KGI設定、活動計画設定 ●具体的な成功の指標を決める
●定期的な状況確認と報告
●ゴールまでのロードマップ(計画書)作成
など
製品・サービスの使い方のトレーニング、研修 ●ID登録や基本設定
●チュートリアル(プロダクトツアー)による操作方法
●スタートアッププログラムの実施
●個別勉強会
など
その他 ●コンサルメニューの紹介

関連記事: オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説

アダプション(Adoption)

アダプション(Adoption)とは

アダプション(Adoption)とはオンボーディングが終わった顧客に対して、製品・プロダクトをより使いこなしてより高い成果を出してもらう段階のことを指します。

ただし製品・サービスをどれだけ使いこなせていることより、顧客がどれだけ価値や成果を得られたと感じているかが重要です。

顧客が継続利用するためにはオンボーディング・アダプションが成功したかどうかで決まるといっても過言ではありません。

アダプションの段階では、顧客の活用率やヘルススコアの確認、満足度調査の実施、顧客に定期的なヒアリングや状況確認を行います。新たな課題が見つかった場合、それに対してのソリューションを具体的に提案したり、潜在的な課題の解決提案まで行ったりと、顧客の成功(体験)を実現します。

アダプションは人的リソースが必要で難易度の高い取り組みですが、高い効果を得ることもできます。

アダプションの重要性

アダプションのフェーズで細かなサポートと最適なアプローチを行えれば、自社商品・サービスの継続利用率をアップさせられるほか、アップセル・クロスセルへとつながる可能性が高まり、自社の利益向上が期待できます。

アダプション段階において活用事例や施策・方法を伝えることで顧客を成功体験へと導き、顧客のロイヤルカスタマー化やLTVの最大化が実現できるため、オンボーディングと同様、カスタマーサクセスにおいて非常に重視されています。

アダプションの主な業務

アダプションの主な業務として、下記の活動が挙げられます。

定例会実施 活用度チェック
計画進捗チェック 顧客満足度調査
ユーザー会・セミナー開催 顧客の活用事例紹介
個別勉強会 機能アップデート共有・説明

リニューアル(Renewal)

リニューアル(Renewal)とは

リニューアル(Renewal)とは、顧客の契約更新の段階を指します。

サブスクリプション型ビジネスモデルにおいて、契約の更新(リニューアル)数は企業の安定した定期収益を確保するための重要な指標です。

リニューアルの段階までに、自社商品・サービスを通して成功体験を積み重ねてもらうことで契約更新の可能性を高めることができ、安定した収益確保が実現できます。

リニューアルの重要性

前述の通りサブスクリプション型ビジネスモデルにおいて、契約更新数は安定した定期収益の確保のために非常に重要で、カスタマーサクセスの指標におかれることが多いです。

サービス導入後のオンボーディングプロセスから高い顧客満足度を維持することができていれば、自ずとリニューアル(契約更新)にもつながり、ひいては更新のタイミングでアップセルやクロスセルも実現できます。

主な業務

リニューアルの主な業務内容としては、「契約更新の見積書の提出」「次年度の活用提案書(ロードマップ)の説明・提出」があります。

エクスパンション(Expansion)

エクスパンション(Expansion)とは

エクスパンション(Expansion)とは、「拡張」を意味し、アップセルやクロスセルにより、自社商品・サービスの活用をさらに拡大してもらうことを指します。

SaaSやPaaSをはじめとするサブスクリプション型の企業では、ARR(年間経常収益)やMRR(月間経常収益)の増加を目指します。その際、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客からのエクスパンション(アップセルやクロスセル)によって売上を増やす、または事業拡大を目指すことが、ビジネスを成長させるカギになります。

アップセルやクロスセルを行うには、「顧客が成果(成功)を実感しており、顧客満足度を得られている」という前提条件があります。そのためには、繰り返しになりますがオンボーディングとアダプションをしっかりと行うことが必須です。

契約更新や、アップセル・クロスセルは商談力や決裁者との交渉の必要がでてくるため、必ずしもカスタマーサクセスが担当する必要はありません。契約更新・クロスセル・アップセルの商談化からフィールドセールスなど、役割に合った人にアサインしましょう。

エクスパンションの重要性

ロイヤルティ戦略論 」の著者でもあるフレデリック・F. ライクヘルドが見出した「1:5の法則」(新規顧客の獲得コストや販売コストは既存顧客への販売コストあるいは顧客維持コストの5倍かかる)から分かるように、顧客への維持コストと販売コストは新規顧客の5分の1のコストで済むため、企業のさらなる収益向上のためには顧客の継続利用とエクスパンションが重要です。

顧客単価の向上が実現できる「アップセル・クロスセル」はLTVの最大化に直結しているため、LTVの最大化が重要視されているカスタマーサクセスにおいて非常に大切なプロセスです。

主な業務

エクスパンションでの業務は「アップセル」「クロスセル」など、必要と思われる機能・サービスの追加提案があります。

カスタマーサクセスの提供方法~3つのタッチモデルと横断するコミュニティタッチ~

カスタマーサクセスのタッチモデルとは

カスタマーサクセスの3つのタッチモデル「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の解説

タッチモデルとは、自社の顧客を3つの階層に分類して、カスタマーサクセスを提供する手法です。3つのタッチモデルは、「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」と呼ばれます。タッチモデルは、顧客やその対応に優劣をつけることが目的ではなく、それぞれの顧客に合ったより最適な対応を行うための施策です。

カスタマーサクセスの担当者がすべての顧客に同じように丁寧に対応(ハイタッチ)することは理想的ではありますが、顧客数の増加が重要視されるSaaS型のビジネスモデルでは、増え続ける顧客に対し、すべてハイタッチによる対応を実施することは容易ではありません。

したがって分類の方法は、人的リソースの使い方に応じて行います。具体的にはLTV(顧客生涯価値)やポテンシャル(見込み度合い)を軸に顧客を分類して、それぞれの層に適切なアプローチを行うことで、コストパフォーマンスを最大化します。

ハイタッチ(high touch)モデル

カスタマーサクセスにおける「ハイタッチ」は専任担当者による1対1の個別対応

ハイタッチ(high touch)とは

ハイタッチ(high touch)とは、LTVが高く自社の収益に大きく影響を及ぼす大口顧客に対する対応方法を指し、基本的にはすべてのやり取りが1対1の個人単位(個別対応)で行われます。対面・電話・1対1のWeb会議などを活用し、ある程度のコストを投じて、専任担当者がきめ細やかなサポートを行うことで、エンゲージメントを高めていく必要があるからです。

企業にとって、もっとも価値が高い顧客のみを対象としている点が特徴で、取引規模が大きく顧客単価が大きいことから、LTVに大きく貢献することが期待できる顧客層です。自社の顧客企業を代表する存在であり、最も重要度が高く、数としては一番少なくなります。

ハイタッチ施策

ハイタッチへのアプローチ施策としては対面などの個別対応が中心で、よりフレキシブルな対応が必要になります。活用に向けた個別の目標設定・定期的な進捗確認、機能などのカスタマイズなど、コンサルティングのような手厚いサービスを実施するのが一般的です。

具体的なハイタッチの施策としては以下の方法があります。

  • ハイタッチ用オンボーディングプロセスの実施
  • 毎月の顧客状況の進捗確認および支援<
  • 個別訪問による導入サポート
  • 企業ごとの勉強会や定例会議の実施
  • 定期的なヘルスチェック
  • 半年または四半期ごとのビジネスレビュー
  • 顧客の要望に合わせたオリジナルプラン、カスタマイズの提供

関連記事: ハイタッチとは?カスタマーサクセスのタッチモデル「テックタッチ」「ロータッチ」との違いや分類方法、具体例をわかりやすく解説

ロータッチ(low touch)モデル

カスタマーサクセスにおける「ロータッチ」は人とテクノロジー活用による1対多数の対応

ロータッチ(low touch)とは

ロータッチ(low touch)のカスタマーサクセスモデルはハイタッチとテックタッチの混合で、人とテクノロジー両方を活用した対応方法になります。ロータッチモデルが対象となるのはハイタッチとテックタッチの中間にあたる顧客です。

ハイタッチのように個別での対応をするわけではなく、1:n(多数)の集団的な接点づくりによって、顧客に対して効率的に支援を行います。

ロータッチ施策

ロータッチ施策では勉強会やセミナーの開催など、ある程度まとまった顧客層に対して集団的に支援を行うのが特徴です。このフェーズでより良い顧客体験を提供できれば、より高いLTVが見込めます。

具体的なロータッチの施策としては以下の方法があります。

  • パッケージ化されたオンボーディングプロセスの実施
  • イベントやセミナー、ユーザー会、ワークショップの開催
  • 集合研修・オンライン研修
  • 1年に1回のビジネスレビュー
  • 複数の担当者による電話およびメール対応
  • チャットでの問い合わせサポート

テックタッチ(tech touch)モデル

カスタマーサクセスにおける「テックタッチ」はテクノロジー(ツール)活用による対応

テックタッチ(tech touch)とは

テックタッチ(tech touch)のカスタマーサクセスモデルは、ハイタッチやロータッチと違い、人力ではなくテクノロジーを活用して支援します。1:1や1:nといった考え方ではなく、メールや管理画面上のチュートリアルなどを利用して、人員を介さずに顧客の活用促進を目指します。

テックタッチは、ロータッチ(ミドルタッチ)よりもさらにLTVの低い層で、例としては中小企業や個人経営者などが該当します。LTVは低いものの数としては一番多い層となり、収益にも大きく影響を及ぼします。

特に顧客数が多く低価格なサービスでは、対人で全てを支援をすることが難しいため、マニュアル動画やチュートリアル、ステップメールなど、テクノロジーの力を使って支援を実施するケースが増えています。

テックタッチ施策

テックタッチは、テクノロジーを活用することで顧客にとって最適なタイミングでアプローチを行い、効率の良い接点作りを実現できます。

具体的なテックタッチの施策としては以下の方法があります。

  • メールマーケティングの実施
  • チャットボットによるサポート
  • チュートリアルや学習ガイドによるオンボーディング
  • マニュアルサイトや動画による情報提供
  • ウェブセミナー
  • コミュニティやユーザーグループ
  • 機能実装による課題の解消

関連記事: テックタッチとは?カスタマーサクセスの重要なタッチポイント ~知っておきたい基礎知識について~

3つのタッチモデルを横断するコミュニティタッチ

3つのタッチモデルを横断するコミュニティタッチの解説

LTVを軸とした上記3つの分類とは少し異なりますが、カスタマーサクセスにおいて比較的新しいタッチモデル「コミュニティタッチ」について解説します。

コミュニティタッチとは

「コミュニティタッチ」とは、3つのタッチモデル「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」を横断する新しいタッチモデルで、自社のユーザー同士・またはユーザー対ベンダーのコミュニティを設置して、掲示板・チャットツール・オフライン会などで生まれる双方のコミュニケーションによって、ユーザーにポジティブな影響をもたらすようアプローチする手法です。

コミュニティは、従来の「ベンダーが一方的に価値を提供する手法」とは異なり、ユーザー対ユーザー、あるいはユーザー対ベンダー間において、双方向性のあるチームを構築する目的で運営されます。ユーザーのロイヤリティ・エンゲージメントを高め、あらたな顧客体験価値を提供できるのです。

コミュニティの提供方法としては、従来はオフラインのユーザー交流会が一般的でしたが、近年ではオンラインサービスを活用したオンラインコミュニティが多く立ち上げられています。また、オフライン開催の交流セミナーをWebで配信するなど、オンラインツールを掛け合わせることで、双方の短所を補うハイブリット型で行うケースも増えています。

コミュニティタッチ施策

具体的なコミュニティタッチの施策としては以下の方法があります。

  • ユーザー交流会などのイベント開催
  • SlackやFacebookなどを活用したコミュニティの運営
  • 顧客企業専用の会員制サイトの作成

関連記事: コミュニティタッチとは?カスタマーサクセスの3つのタッチモデルとの関係やメリット・デメリット、成功事例などを解説

カスタマーサクセスの主なKPI(評価指標)

カスタマーサクセスを組織として運用するために、評価となる指標を定め、その成果や進捗具合を確認する必要があります。

カスタマーサクセスの主なKPI(重要業績評価指標)には、「解約率(チャーンレート)」「契約継続率」「オンボーディング完了率」「アップセル・クロスセル」「カスタマーヘルススコア」「NPS(顧客推奨度)」などがあります。

解約率(チャーンレート)

継続利用を前提としたサービスの解約(チャーン)の割合を指すのが「解約率(チャーンレート)」です。カスタマーサクセスにおいて特に重要なKPIとされています。

解約率(チャーンレート)とは

「解約率(チャーンレート)」とは、顧客の継続利用を前提としたサービスの解約の割合を指します。前述でLTVの最大化において最も重要とされる指標としても紹介しました。

サブスクリプション型のビジネスモデルではサービスの導入ハードルが低い反面、顧客の要望を満たすことができなければすぐに解約されてしまうため、「いかに長期間多くの顧客に利用してもらえるか」つまり「解約率をいかに引き下げるか」がカギになります。

そこでカスタマーサクセスでは、多くの場合「解約率」をKPIとして設定しています。

解約率の計算方法

解約率には「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2種類あります。それぞれの計算・算出方法について解説します。

まず、解約率を計算する際に必要になる以下4つの情報についてまとめておきましょう。

  • チャーンの定義(解約した顧客、一定期間アクティビティがない顧客など)
  • どこまでを計算に含めるのか。期間を定める
  • 一定期間のうちに解約した顧客数
  • 期間前の顧客数

解約率は業界や扱う商品・サービスによって大きく異なるため、相対的な判断が必要です。

①カスタマーチャーンレートの計算方法

「カスタマーチャーンレート」は顧客数ベースの計算式です。商品・サービスの価格が一律、もしくは大きく差がない場合によく使用し、解約した顧客の割合や、有料プランから無料プランにダウングレードした顧客の割合を示します。

・カスタマーチャーンレート=(期間中に解約した顧客数÷期間前の顧客の合計数) x 100
 ※月次で計算する場合:(当月の解約顧客数 ÷ 前月末の顧客数) x 100

例えば4月末の顧客数が200名で、そのうち5月に14名が解約した場合のカスタマーチャーンレートは(14÷200)x 100=7%と計算できます。

②レベニューチャーンレートの計算方法

「レベニューチャーンレート」は収益をベースにした計算式です。価格プランが複数あり、顧客単価に差がある場合に使用し、解約が売上全体へ与えた影響の割合を指します。

・レベニューチャーンレート=(サービス単価×期間内に解約した顧客数 ÷ 期間内の総収益)x 100
※月次で計算する場合:(サービス単価×当月に解約した顧客数 ÷ 当月の総収益)x 100

例えば、「通常プラン:月額5000円・プレミアムプラン:月額10000円」の商品の場合、4月末の登録者は両プランともに5名ずつであるとします。そのうち2名が5月になるとプレミアムプランを解約したとなると、以下のように計算できます。

{サービス単価10000円 × 解約数2 ÷ 総収益(5000円×5 + 10000円×5)}x 100 = 約27%(四捨五入)

解約率(チャーンレート)の重要性

サブスクリプション型ビジネスモデルは、継続ユーザー数を積み上げることで利益を出すため、解約が多いと企業は成長できません。そのため、顧客をつなぎとめて解約を最小限に抑えていくことが重要になります。

解約率が上がってしまうと直接的な利益の損失につながるだけでなく、企業への不満から評判を落としてしまう可能性もあります。

しかし、解約率には顧客の業績低迷や倒産、営業の過度な期待値設定など外部要因のものも多くあるため、別の視点から見た目標設定も必要になるでしょう。

契約継続率 (リテンションレート)

「契約継続率 (リテンションレート)」は解約率(チャーンレート)同様、カスタマーサクセスのKPIとして非常に重要です。

契約継続率(リテンションレート)とは

「契約継続率 (リテンションレート)」は契約数に対してどれだけ継続利用をしてもらっているかの割合=サービスの定着率を数値化したものです。「既存顧客維持率」や「定着率」と呼ばれることもあります。

先程の解約率では「去っていく顧客の割合」というネガティブな面に着目しましたが、契約維持率では「継続利用してくれている顧客の割合」というポジティブな側面に着目しているのが特徴です。

また契約継続率には、顧客数をベースにした「カスタマーリテンションレート」と、収益をベースにした「レベニューリテンションレート」があり、自社の提供している商品・サービスや販売方法などを考慮して最適な計算式を選ぶ必要があります。

契約継続率(リテンションレート)の重要性

「どれだけ長期間、多くの人に利用してもらうか」ということが重要になるサブスクリプション型のビジネスにおいて、現状を最もわかりやすく把握できるのが「契約継続率」です。

自社の商品・サービスを継続的に利用してくれる顧客は、口コミによる拡散や集客などに協力してくれる存在でもあり、契約継続率の維持はそのまま解約率の低下を防止することができます。カスタマーサクセスにおいて欠かせない指標のひとつです。

契約継続率の計算・算出方法

契約継続率は顧客数ベースで計算するか、収益ベースで計算するかによって方法が異なります。自社の商品・サービスやプランを考慮して算出してみましょう。

①カスタマーリテンションレート

カスタマーリテンションレートは、顧客数をベースにした以下の計算式で割り出せます。

{(期間終了時の顧客数 - 期間中に増加した顧客数) ÷ 期間開始時の顧客} × 100

例えば、8月時点での顧客数が1000人、同月に350人の顧客が増加し、8月末での顧客数が1300人とします。これを上記の計算式に当てはめてみると、

(1300-350)÷1000×100=95となり、維持率は95%と計算できます。

②レベニューリテンションレート

レベニューリテンションレートは収益をベースにした以下の計算式で割り出します。

{(期間終了時の収益 - 期間中に増加した収益) ÷ 期間開始時の収益} x 100

複数の商品・サービスを顧客に合わせて提供している場合や、サブスクリプション型モデルでの販売で顧客ごとに金額が異なる場合などは、レベニューリテンションレートで計算するのが一般的です。

オンボーディング完了率

「オンボーディング完了率」とは、オンボーディングを受けた顧客の中で、どれくらいの割合の顧客が完了しているかを表す数値で、解約率・契約継続率ともにカスタマーサクセスにおいて欠かせないKPIです。

オンボーディング完了率とは

「オンボーディング完了率」とは、オンボーディングを受けた顧客の中で、自社の商品・サービスがどれくらいの顧客に正しく定着し、運用開始されたかを示す割合を指します。

オンボーディング完了率が低いと、せっかく顧客が商品・サービスを購買してくれても、使用方法やその価値がわからないために解約されてしまうという可能性が高くなります。

つまりオンボーディング完了率はそのまま解約率・契約継続率にも影響を及ぼすということです。

オンボーディング完了率の重要性

オンボーディング完了率の向上は解約率の低下・契約継続率の向上につながり、LTV最大化実現のために非常に重要です。

「オンボーディング」の章でも紹介しましたが、オンボーディングを成功させることでサービスの価値を理解してもらえれば、スムーズな継続利用やアップセルやクロスセルへとつながるなど、企業にとって多くのメリットがあります。

オンボーディング完了率の計算・算出方法

オンボーディング完了率は以下の式で計算できます。

(オンボーディングが完了した顧客数 ÷ オンボーディング期間にいる全ての顧客数)×100

何を基準に「オンボーディングが完了した」と判断するかは企業や商材・サービスによって異なるため、どんな状態がオンボーディング完了かということを予め決めておき、社内の共通認識としておくことが大切です。

アップセル率・クロスセル率

「アップセル率・クロスセル率」を向上すると、カスタマーサクセスにおいて最も重要なLTVの最大化を実現でき、収益アップを見込めます。

アップセル率とは

アップセル(up-sell)とは、顧客が現在利用している商品・サービスよりも上位のプラン、あるいはオプションの購入を促して利益を向上することを指し、「アップセル率」はどれだけ顧客に対してアップセルを実現できているかを示す割合です。

クロスセル率とは

クロスセル(cross-sell)とは、顧客が現在利用している商品・サービスに関連する商品・サービスの購入を促して利益を得る手法です。「クロスセル率」はどれだけの顧客に対してクロスセルを実現できているかを示す割合を意味します。

アップセル率・クロスセル率の重要性

「アップセル率・クロスセル率」の向上は企業の利益増加=LTVの最大化に直結するため、LTV最大化を重視するカスタマーサクセスにおいて非常に重要視されています。

サブスクリプション型のビジネスモデルにおいて、新規顧客と契約した時点では顧客獲得単価を回収しづらいという課題がありますが、アップセル率とクロスセル率を向上させることで新規顧客を獲得しなくても顧客の単価を上げることができ、課題解消へとつながります。

しかし顧客のニーズに合わない提案をしてしまうと解約のリスクも高まってしまうため、慎重に進めていくことが必要です。

計算・算出方法

アップセル率・クロスセル率を計算する際は、全ての顧客に占める割合を計算するのが一般的です。以下の計算式で算出することができます。

アップセル率=(アップセルした顧客数÷全顧客数)x 100

クロスセル率=(クロスセルした顧客数÷全顧客数)x 100

売上で計算する場合は顧客単価を算出しましょう。

カスタマーヘルススコア

「カスタマーヘルススコア」の指標を用いることで、顧客の解約リスクや活用度を計測することができます。ヘルススコアを理解することで、カスタマーサクセスの運用をより確かなものにすることが可能です。

カスタマーヘルススコアとは

「カスタマーヘルススコア」とは、「顧客が自社の商品・サービスを継続利用してくれるかどうかを測る指標(数値)」を指します。

ヘルススコアは日本語で「ヘルス=健康」「スコア=得点」を意味し、顧客の健康状態を数値化して把握することが可能です。つまり顧客のヘルススコアが高ければ「継続が見込める」、低ければ「解約の確率が高い」ということが判断できます。

ヘルススコアの上昇はカスタマーサクセスの適切な運用を意味するため、顧客の現状を的確に把握するには欠かせない指標です。

ヘルススコアの重要性

定期収益ビジネスにとってリテンションは企業存続にかかわる問題です。顧客に成功をもたらさない限り生き残れません。

顧客が製品利用を通じて価値を得られたと実感すれば高いリテンション率と健全な経営が実現できます。そのために必要なのがカスタマーヘルススコアの現状把握と管理です。

顧客の健康状態を数値化・可視化することができるカスタマーヘルススコアを活用すれば顧客の変化や動向をチェックして、それぞれの顧客に最適なアプローチを行うことができます。

ヘルススコアをうまく運用できれば、カスタマーサクセスの活動が最適化され、効率的なアプローチ、解約率の改善、アップセル率・クロスセル率の向上、そしてLTVの最大化が実現できます。

ただし、ヘルススコアの運用は非常に難易度が高く、リソースも必要です。自社組織のフェーズ、プロダクトに合っているのか、運用できる体制や仕組みはあるのかは取り組む前に確認しましょう。

ヘルススコアの計算・算出に必要な項目

ヘルススコアを算出するためにはまず、どういう状態が企業の「健康」なのかをあらかじめ定義しておく必要があります。その基本的な項目としてビジネスポテンシャルや製品活用度、プログラム活用度、満足度などがあげられます。

項目 詳細
ビジネスポテンシャル ●契約金額
●年商
●従業員数
●契約金額の増減
●支払い履歴
など
製品・サービスの活用度 ●活用スコア
  利用時間・活用(ログイン)頻度・機能利用頻度など
●更新リスク
●カスタマーサポートの利用頻度
●運用担当者数
●新規アカウント発行数
●ゴール達成度
など
プログラム活用度 ●メルマガ
●導入支援コンサル
●追加コンサル
●活用支援セミナー参加
●基礎トレーニング
●ユーザー会参加
●コミュニティ登録
など
顧客とのリレーション・関係性 ●Topリレーション
●担当者リレーション
●お客様の声・事例登録
●お客様からの名刺獲得数
●ネットプロモータースコア(NPS®)
●顧客満足度 (CAST)
など
マーケティング、インサイドセールス、営業、サポート、開発など複数部門 カスタマーサクセス、開発部門
日本では主にBtoB向けSaaSビジネス BtoC、BtoB関わらず、ほぼすべての企業に存在している

ヘルススコアの導入・運用

ヘルススコアを導入・運用していくには、主に5つのステップがあります。

①自社における「顧客の健康状態」を定義する

最初に、自社の商品・サービスに合わせて「顧客がどういう状態であれば健康なのか」「何を不健康な状態とするか」ということを定義しましょう。

②指標を決定する

ヘルススコアの算出に必要となる指標は企業の目標・業態・業種によって異なるため、自社に合った指標及び項目を決定します。

③最適なヘルススコアの算出方法を決める

ヘルススコアの採点方法に決まりはないので、「どの指標をどの割合で掛け合わせるか」「コミュニティへの参加回数が何回なら何点とするか」など、自社に最適な算出方法を決めます。

④検知条件・施策内容を決める

ヘルススコアが何点になったら検知して、どのような施策を実行するのかの内容を考えます。この際、先に解説したタッチモデルの考え方を用いてアプローチするのがおすすめです。

⑤運用・改善

実際にヘルススコアをもとに施策を実行したら、うまく運用できたかどうかを分析・検証し、問題点があれば改善していくことが大切です。

ヘルススコアベースが信頼できる状態のレベルまで達すると、ヘルススコアが低いと解約率が高くなり、ヘルススコアが高いとアップセル・クロスセルにつながるということがわかってくるでしょう。

NPS®(顧客推奨度)

NPSは顧客満足度に並ぶ新たな指標として活用されており、カスタマーサクセスのKPIとしても取り入れられています。

NPS®とは

NPS®とは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で顧客ロイヤルティを測る指標で、「顧客推奨度」と呼ばれています。

顧客が企業やサービスに対して、愛着や信頼をもって継続的に利用してくれるかどうかを数値化・可視化して判断できるほか、自社の業績と強い相関関係があるためカスタマーサクセスにおいて重要な指標と位置付けられています。

NPS®は主にアンケートを活用したシンプルな調査方法で測定できるのが特徴です。

NPS®の重要性

顧客が商品・サービスに信頼や愛着を持ってもらえれば、継続利用してもらえる可能性が上がります。

NPS®が高い=継続利用へとつながるため、顧客ロイヤリティを把握できるNPS®は非常に重要な指標とされているのです。

現在ではAmazonやGoogleなどの大手企業もNPS®をKPIとして導入しており、日本企業においても必須の指標といっても過言ではありません。

計算・算出方法

NPS®を算出する際は一般的にシンプルなアンケート方法が用いられており、顧客に「今利用している商品・サービスを友人や知人に進める可能性はどのくらいありますか?」という質問をして、0~10までの11段階で評価してもらいます。

NPSの「推薦者」「中立社」「批判者」の分け方

商品・サービスに対して否定的な「批判者」、受け身で再購入率が低めの「中立者」、再購入率が高いことに加え、友人・知人に商品を紹介してくれる可能性の高い「推奨者」と位置付け、「0〜6=批判者」「7・8=中立者」「9・10=推奨者」と、顧客を3つのカテゴリーに分類します。

そして全回答に占める「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引くことでNPSが算出できます。以下がNPS®の計算式です。

NPS=推奨者の割合(推奨者の数 ÷ 回答者全員の数)ー批判者の割合(批判者の数 ÷ 回答者全員の数)

例えば推奨者の割合が60%で批判者が30%だった場合、

推奨者60ー批判者30=NPS®30

となります。

NPSの理想数値は商材・業界・業態などによって異なるため、競合他社のNPSなどを確認し、そのNPSを越えられるようにすると良いでしょう。

カスタマーサクセスを成功させるポイント

カスタマーサクセスを成功させる3つのポイントを解説

カスタマーサクセスを成功させるには、「『顧客の成功』を正しく理解する」「顧客のステージを定義し、適切な支援を考える」「関連部署との共業体制」という3つのポイントがあります。

それぞれのポイントを理解し、より効率的なカスタマーサクセスの運用を目指しましょう。

「顧客の成功」を正しく理解する

「顧客の成功」とは、顧客が商品やサービスを利用することで、期待した成果や成功を手に入れた状態を指します。カスタマーサクセスを成功させるには、顧客にとっての成果や成功が何かということを明確にすることが非常に重要です。

なんとなく「顧客の成功」を決め、ただサポートを行っているだけでは顧客が成功しているかどうかもわからなくなってしまいます。カスタマーサクセスを導入したばかりの企業ではよくある失敗例でもあります。

具体的には、「顧客が成功の計測に使っている指標(収益増加・コスト削減・生産性向上など)」と、「企業のサービス・ソリューションに価値があると判断するための基準」を定義します。部署を超え、組織全体としての評価指標も把握することも重要です。

また「利用者の満足度が高い」や「企業のプロダクトやサービスが完璧に利用しつくされている」ことは顧客の成功にはなりません。どれだけ価値や成果を得たかが重要です。

顧客のステージを定義し、適切な支援を考える

カスタマーサクセスを成功させるには、顧客が今どのステージにいるのかを把握し、それぞれの階層に最適な支援を行うことが大切です。

前述で紹介したタッチモデル(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)に顧客を分類し、カテゴリーごとに顧客とのやり取りの指針を決めます。

商品・サービスの導入支援が終わった後も顧客と定期的にコミュニケーションをとり、顧客が商品を活用できているか、新たな課題を抱えていないか、顧客に成功を届けられているかどうかを必ず確認しましょう。

ここで大切になるのが、あくまでも顧客が自力で商品・サービスを使いこなせるようなサポートを行うということです。必要に応じて顧客の課題のヒアリングや、個別のトレーニングなどの支援を実施しましょう。

関連部署との共業体制をとる

開発・マーケティング・インサイドセールス・営業(フィールドセールス)・カスタマーサポート・カスタマーサクセスなど、部署ごとの分業体制を整えた後は共業体制をとる必要があります。

共業体制を取らないとどうなるのか

共業体制をとらず分業体制のままで止まってしまうと、各部署は自分たちのKPIしか意識せず、ノウハウやナレッジを各部門内でのみ溜めてしまうなど、「自分たちさえ良ければいい」となってしまいます。

最初はうまく運用できるかもしれませんが、共業体制を取らずに分業体制のままだと、そのうち新規リード獲得数は頭打ちになるときがくるはずです。

その後営業部門は質の悪いリードでも獲得しようと躍起になり、インサイドセールス部門はただのテレアポスタッフになってしまうという問題が生じます。

そしてなんとしてでも受注したい営業がとってきた案件は受注後にクレームになる可能性が高く、解約率を高めてカスタマーサクセスの負担になってしまうという悪循環になりかねません。

本来の業務に支障が出て生産性は著しく低下するほか、自社の売上の低下・開発費用の捻出困難・集客数減少などの負のスパイラルに陥り、会社として重大な損害を生じてしまう可能性があります。

共業体制・仕組みが重要

売上アップ及びLTVを最大化するための正しいプロセスを経るためには、カスタマーサクセスを起点にする必要があります。

先のカスタマーサポートのミッションでも述べたように、カスタマーサクセスは顧客が望む(改善してほしい・追加してほしい)機能や課題などのニーズを把握し、開発やマーケティング部門にフィードバックすることが大切です。開発部門では顧客の求める機能やサービスをアップデートすることで、顧客満足度を向上させることができます。

商品・サービスが高品質なものへアップデートされることで、マーケティング部門でもコンテンツの材料にすることができ、WEBサイト・オンラインセミナー・展示会からの新規リードが獲得しやすくなるというメリットが生まれます。

また、カスタマーサクセス部門が営業部門に顧客の成功体験をフィードバックすることで、提案の幅が広がり、契約数の向上につながります。

営業部門はインサイドセールス部門に商談内容をフィードバックすることで、見込み客との会話に乖離がないかが確認できるほか、トークスクリプトの幅も広げることが可能です。

インサイドセールス部門はマーケティング部門にどのキャンペーン(施策)がどれくらい効果的だったのかをフィードバックすることで、マーケティング部門の今後の最適な戦略立案に役立てることができます。

このようにそれぞれのプロセスが分断されないように、部署同士が共業できるような体制と仕組みを整えることが、カスタマーサクセスの成功において非常に重要です。

カスタマーサクセス導入の成功事例

本章では実際にカスタマーサクセスの導入成功事例をご紹介します。

Salesforce(株式会社セールスフォース・ジャパン)

Salesforce(株式会社セールスフォース・ジャパン)

「Salesforce(セールスフォース)」というCRM(顧客管理システム)を提供する株式会社セールスフォース・ジャパン は、「カスタマーサクセス」という言葉を最初に使用したとされる草分け的存在です。

IT業界では「売り切り型」が主流であった頃、Salesforceはクラウドを通じたサブスクリプション型のビジネスモデルでサービスを提供しました。そして2004年からカスタマーサクセスを導入し、運用に成功しています。

同社はカスタマーサクセスを「Salesforceを使ってビジネスで成果をあげてもらうこと」と、最終的な目標は「顧客自身で自走かしてもらうこと」と定義し、「オンボーディング」と「定着化」の2つのチャレンジを乗り越えてSalesforce上でPDCAが回り始めるような環境を整えることで、顧客を成功へと導いています。

また上記の流れが作れれば契約更新率は向上し、アップセル・クロスセルも増えるという好循環が生み出され、LTVの最大化=カスタマーサクセスの成功を実現することが可能です。

またカスタマーサクセスを実現するために、特に重要な指標として「契約更新率・ヘルススコア・エンゲージメント」を挙げ、設立当初は主に解約防止のための活動を行っていましたが、今では「顧客の成功」を明確に設定したうえで、KPIにまで落とし込む活動に注力しています。

新規の顧客を獲得するより、既存の顧客が定着することでカスタマーサクセスが成功するということがよくわかる成功事例です。

SanSan

Sansan株式会社

Sansan株式会社 は「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺アプリ「Eight」を展開する、2007年創業の日本のSaaS企業です。

まだサブスクリプションが珍しい時代に事業をスタートし、「まずは使ってもらうことが大事」という考えから2012年に国内初のカスタマーサクセス部門を立ち上げ、この数年は「10%で良好」と言われるSaaSの年間解約率にあって、7.5%以下の低水準を誇っています。

同社はカスタマーサクセスのミッションを「顧客の成功に向けてSanSanの価値を届けLTVを最大化すること」とし、「データの統合・分析に投資して組織全体でデータをフル活用せよ」という原則を実行に移すことで短期間で成功を手にしました。

具体的には、利用促進を行うCSMに加え、トレーニング&コミュニティ、プロダクト・フィードバック、テクノロジー&マーケティング、そして契約に責任を持つリニューアルセールスという5つの柱を軸にした組織のあり方に着目し、組織の部署を越えて柔軟に対応できる基盤を構築しました。

その結果、顧客価値をあげ、最終的に売上も向上させることに成功。現在ではSaaS業界トップクラスの驚異の数字を叩き出しています。

関連記事: テックタッチで自走する顧客を増やす!Sansan多田さんにその秘訣を聞いてみた

株式会社SmartHR

株式会社SmartHR

株式会社SmartHR は「社会の非合理を、ハックする。」をミッションに、法人向けのクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供するSaaS企業です。

現在日本で最も勢いのある企業のひとつでもある株式会社SmartHRは、カスタマーサクセス部門を企業規模や導入フェーズごとに細分化し、それぞれに対して異なるアプローチをとるという独自の戦略をとっています。

そして部署の垣根を越えた全体のKPIを意識しつつ、それぞれの部署ごとのKPIにも注力するほか、サービスの設定方法や機能の使い方を動画で説明する「SmartHRスクール」や導入をスムーズに進めるための導入サポート資料など、様々な施策を行うことで顧客満足度96.7%、継続率99.5%という高い数値を出すことに成功しました。

Slack

Slack

Slack は、アメリカのSlack Technology社が開発したビジネスチャットツールです。Slackはカスタマーサクセスを「Slackでお客様の業務が改善するかどうか」と定義しています。

顧客の価値提供を評価するポイントとして、「導入(アダプション)」「成熟度(マチュリティ)」「感情(センチメント)」の3つを掲げており、顧客がサービスを使いこなすだけではなく、顧客の感情にも着目している点が特徴です。

カスタマーサクセスにおいては「お客様からのコメントや声は、全社に向けられたメッセージであると捉えるべき」という認識をもちながら、チャンピオンズネットワークの運営やスコアリングによるコミュニケーションの最適化、エグゼクティブビジネスレビューなど様々な施策を取り入れて成功しています。

まとめ

ビジネスモデルや市場が変化する中、「顧客の成功の実現」と「自社の収益向上」の双方を達成できるカスタマーサクセスは今後ますます重要になってきます。

サブスクリプション型ビジネスモデルや、コンサンプションモデルをはじめ、今のデジタル時代を生き抜く企業すべてにとってカスタマーサクセスは必要であると私たちは考えます。

本記事ではカスタマーサクセスについて、基礎的なことから具体的な業務や成功事例に至るまで網羅的に解説してきました。理解を深めることに少しでもお役に立てたら幸いです。

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