カスタマーサクセスとは?仕事内容・業務プロセス、成功事例、将来性までわかりやすく解説!

カスタマーサクセスとは?仕事内容・業務プロセス、成功事例、将来性までわかりやすく解説!

他社はどうしてる?カスタマーサクセス実態調査レポート

SaaS企業のカスタマーサクセス・サポート担当200名に行ったアンケート結果。解約率などのKPI・効果があった施策・ツールでの生産性向上など、ちょっと気になる「他社の動き」を見てみませんか?

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カスタマーサクセスは、既存顧客の成功を目指し、積極的にサポートすることに特化した活動や組織を指します。近年、SaaSやPaaSを中心としたサブスクリプション型ビジネスでカスタマーサクセスが注目されていますが、この取り組みは特定の業界に限られたものではありません。私たちは、今のデジタル時代を生き抜くすべての企業にとってカスタマーサクセスが不可欠であると考えています。

この記事では、カスタマーサクセスの仕事内容や業務プロセスと求められるスキル、成功事例、将来性まで、カスタマーサクセスについて包括的に解説していきます。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、顧客の成功を実現し、自社の収益を最大化すること

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、直訳で「顧客の成功」となりますが、実際には「顧客が求める成果や目標を達成するために、顧客と共に歩みながら、自社の利益を最大化するための活動や組織」を指します。この概念は、特にサブスクリプション型ビジネスモデルにおいて重要です。例えば、SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのビジネスモデルでは、顧客が製品やサービスを継続的に利用し続けることが収益の維持に直結します。したがって、カスタマーサクセスの役割は非常に重要です。

カスタマーサクセスの目的・役割

カスタマーサクセスの目的は、単に顧客に製品やサービスを提供するだけでなく、その顧客が自社の製品を最大限に活用し、期待する成果を上げることを支援することですカスタマーサクセスは、顧客との長期的な関係構築を目指し、以下のプロセスを通じて顧客満足度を高め、結果として自社の利益を最大化します。

顧客の成功体験の提供:カスタマーサクセスは、顧客が自社の製品やサービスを利用することで成功を実感できるよう、個別のニーズに応じた支援を行います。これには、顧客の目標設定、成果の追跡、適切なアドバイスの提供などが含まれます。

顧客ロイヤルティの向上: 顧客が自社の製品に対して満足し、信頼を寄せることで、ロイヤルティが高まります。ロイヤルティの向上は、顧客の維持や契約更新の可能性を高めるため、カスタマーサクセスの重要な役割です。

契約の更新促進:カスタマーサクセスチームは、契約更新のタイミングを把握し、顧客に対してその価値を再確認させることで、契約の更新を促進します。これにより、長期的な収益を確保することができます。

契約金額の増加(アップセル・クロスセル):顧客が自社の製品やサービスをより深く理解し、利用することで、追加の機能やサービスを提供する機会が増えます。カスタマーサクセスは、顧客のニーズに応じてアップセルやクロスセルを提案し、契約金額の増加を図ります。

口コミや紹介による二次収益の獲得:満足した顧客は、自社の製品やサービスを他の人に推薦することが多くなります。カスタマーサクセスは、顧客の成功体験を共有し、紹介や口コミを通じて新たなビジネスチャンスを生み出すことができます。

カスタマーサクセスの実行には、顧客のニーズやゴールを正確に理解し、それに基づいた支援を行うことが不可欠です。顧客が製品やサービスを導入しただけでは成功は達成されません。カスタマーサクセスチームは、顧客と密に連携し、成功の指標や成果を確認しながら、常に顧客の成功を支援する役割を果たします。カスタマーサクセスの組織は、顧客との関係を深めるための専門チームであり、顧客が期待する成果を実現するために一貫した支援を提供します。

このように、カスタマーサクセスは単なるサポートの枠を超えて、顧客の成功を共に目指すパートナーシップを築く重要な役割を担っています。その結果、顧客満足度の向上や収益の最大化など、長期的なビジネスの成功につながります。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを解説

「カスタマーサクセス」と「カスタマーサポート」は、名前が似ているため混同されがちですが、それぞれ異なる役割と目的を持っています。どちらも顧客と接点を持ち、サービスに関する専門知識が必要であり、略して「CS」と表記されることもありますが、それぞれの役割と目的には明確な違いがあります。ここでは、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを詳しく解説し、その役割と目的について説明します。

  カスタマーサクセス カスタマーサポート
目指すべきところ 自社の定期収益増加 顧客満足度向上
目的 顧客の成功 クレーム処理・不満解消
顧客への姿勢 能動的/先回り型 受動的/要望対応型
KPI ●リテンション(継続・維持)率
●オンボーディング完了率
●解約率
●アップセル・クロスセル率
●顧客満足度
など
●FCR(初回解決率)
●自己解決率
●対応件数
●顧客満足度
●返信時間の短さ
など
ゴール 顧客の成功 問題の収束
顧客との関わり方 継続的 一時的
関連部門 ●マーケティング
●インサイドセールス
●営業
●サポート
●開発
●カスタマーサクセス
●開発
管理範囲 購入後のアフターケア 一連の顧客体験
(リード〜成約〜オンボーディング〜導入〜解約)
業務内容 顧客努力の低減
回答品質・速度の向上
顧客サービス理解・活用速度の向上
製品に対する専門性 必要 必要
接客スキル

上記のようにカスタマーサクセスとカスタマーサポートは、それぞれ異なる役割と目的を持っています。カスタマーサクセスは、顧客と長期的に関わりながら成功をサポートし、自社の収益を最大化することを目指します。対して、カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対して迅速に対応し、問題を解決することで満足度を向上させることを目的としています。両者の役割を理解し、自社のビジネスモデルに合わせて最適な体制を整えることが、顧客満足と企業の成功に繋がります。

カスタマーサクセスと営業(セールス)の違い

カスタマーサクセスと営業(セールス)の違いを解説

営業とカスタマーサクセスは、いずれも企業利益の最大化を目指していますが、その役割や目的には明確な違いがあります。営業の主な目的は「新規顧客の契約獲得」であり、リード獲得から契約締結まで、多くのリソースとコストをかけて新たなビジネスチャンスを生み出すことに注力します。新規顧客獲得には既存顧客維持の約5倍のコストがかかるため、難易度が高く、営業力の個人差も大きくなります。
一方、カスタマーサクセスは「既存顧客を成功に導く」ことを目的としており、顧客が製品・サービスを最大限に活用できるよう支援します。これにより顧客との関係を強化し、契約更新やアップセル、クロスセルを促進し、長期的な顧客維持(リテンション)を実現して収益を安定化させます。

営業とカスタマーサクセスはそれぞれ異なる役割を担っていますが、連携することで企業の持続的成長につながります。

  カスタマーサクセス 営業(セールス)
目指すべきところ 自社の定期収益増加 自社の収益増加
目的 既存顧客の契約維持 新規顧客の契約獲得
活動 顧客を成功に導くための活動 新規顧客獲得のための活動
成果 担当者ごとの成果に差が出にくい 個々の営業の力量によって成果に差が出やすい

カスタマーサクセスが注目される理由と背景

近年、ビジネス界で「カスタマーサクセス」という概念が急速に注目されています。このトレンドの背後には、ビジネスモデルの大きな変化が影響しています。特に「買い切り型」から「サブスクリプション型」へのシフトが、カスタマーサクセスの重要性を高める要因となっています。以下では、カスタマーサクセスの台頭に至る背景と、ビジネスに与える影響について詳しく解説します。

 

買い切り型からサブスクリプション(月額・定額)型のビジネスモデルへ

カスタマーサクセスが普及し、多くの企業で求められるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか。

買い切り型ビジネスモデルの特性

従来のビジネスモデルでは、顧客が高額な料金を一度支払って製品を所有する形式(買い切り型)が主流でした。このモデルでは企業が販売時の利益を重視し、顧客の購入後の体験や長期的な利用についてはあまり考慮されませんでした。企業は初期の販売活動やサポートに注力しましたが、顧客が継続して製品を使うことは収益モデル上あまり重要ではありませんでした。

近年、「サブスクリプション型」ビジネスが急速に普及しています。月額や年額の定額制でサービスを提供するモデルであり、企業は安定した収益を得る一方、顧客の継続利用が収益を左右するため、契約後の顧客体験が非常に重要です。そのため、顧客が長期間サービスを利用し続けるための「カスタマーサクセス」の取り組みが不可欠になっています。

バーチャレクス社の「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」によると、サブスクリプション商材の取扱いがある企業において、78%が「カスタマーサクセスの必要性を感じるようになった」と回答しています。
カスタマーサクセス日本市場動向実態調査

この背景には、消費者行動が所有から体験重視へとシフトしていることがあります。特にBtoB業界でも従来の買い切り型に代わり、クラウド型の月額課金(SaaS型)サービスが広まっています。

BtoCとBtoBのサブスクリプション事例

BtoCのサブスクリプション事例:

    • 音楽配信: Apple Music
    • 動画配信: Netflix
    • カーシェアリング: タイムズカー

BtoBのサブスクリプション事例:

    • CRMソフトウェア: Salesforce Sales Cloud
    • オフィスアプリ: Microsoft 365
    • 人事労務・会計ソフト: freee
    • コミュニケーションツール: Slack

これらのサービスはすべて、顧客満足度や継続利用を高めることで安定した収益を確保しています。

SaaS市場の拡大とカスタマーサクセス

SaaS市場の成長とカスタマーサクセスの重要性

SaaS市場は急速に成長しています。特に新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークやリモートワークが普及し、企業のデジタルトランスフォーメーションが進んでいます。これに伴い、SaaSの需要が増加しており、2024年には市場規模が約1兆6000億円に達する見通しです。また、2027年までには国内企業の7割がSaaS製品を利用すると予測されております(『SaaS業界レポート2023』)。この成長に伴い、カスタマーサクセスの役割もますます重要になっています。

SaaSビジネスモデルでは、顧客がサービスを長期間にわたって利用し続けることが収益の安定に直結します。カスタマーサクセスチームは、顧客の成功を確保し、利用状況をモニタリングする必要があります。顧客がサービスを最大限に活用し、成果を実感できるようにすることで、解約率を低下させ、安定した収益を確保できます。

カスタマーサクセスの戦略

カスタマーサクセス戦略には、顧客のニーズに応じたパーソナライズされたサポートが含まれます。例えば、利用状況に応じてカスタマイズしたトレーニングや、業務の改善提案を行うことが挙げられます。これにより、顧客はサービスの価値を最大限に引き出し、より高い満足度を得ることができます。

コンサンプションモデルの台頭

コンサンプションモデルの概要

最近では、サブスクリプションモデルに加えて、「コンサンプションモデル」が注目されています。コンサンプションモデルでは、顧客がサービスを利用する量に応じて料金が発生します。例えば、SlackやSnowflake、AWS(アマゾンウェブサービス)などがこのモデルを採用しています。

コンサンプションモデルの特徴は、顧客が実際に利用した分だけ料金を支払う点です。入会や契約時に費用が発生しないため、顧客はリスクを感じることなくサービスを試すことができます。しかし、顧客の利用頻度や利用量が収益に直結するため、企業はカスタマーサクセスに注力し、顧客の利用促進やアップセルを図る必要があります。

コンサンプションモデルとカスタマーサクセス

コンサンプションモデルでは、利用量が収益に影響を与えるため、カスタマーサクセスの役割が一層重要になります。企業は、顧客がより多くのサービスを利用し、その価値を実感できるようにサポートする必要があります。顧客がサービスをより多く利用することで、企業は収益を最大化できるのです。

カスタマーサクセスは、ビジネスモデルの変化に伴い、ますます重要な役割を果たしています。顧客の成功をサポートし、満足度を高めることで、企業は収益を最大化し、長期的な成長を実現できます。カスタマーサクセスの重要性を理解し、その実践に取り組むことが、現代のビジネス成功の鍵となるでしょう。

カスタマーサクセスの仕事内容

カスタマーサクセスのミッションはLTVの最大化

カスタマーサクセスの仕事における最も重要なミッションは「LTVの最大化」です。LTVの最大化を実現する重要な指標として「解約(チャーン)の減少」「顧客ロイヤルティ向上」「アップセル・クロスセル」「顧客ニーズの吸い上げとフィードバック」の4つが挙げられます。

LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)とは、顧客が自社と契約開始してから解約するまでの間に得られる利益の総額を指します。顧客生涯価値は企業にとって非常に重要な指標であり、特にサブスクリプション型ビジネスモデルにおいては、顧客一人ひとりの長期的な価値を最大化することが収益の安定に繋がります。

解約(チャーン)の阻止・減少

解約(チャーン)とは、顧客がサービスを解約することを指します。特にサブスクリプション型やSaaS型のビジネスモデルでは、解約が多いと事業は成長できません。そのため、「いかに顧客に継続利用してもらえるか=どれだけ解約を減少させるか」が重要になります。解約を減少させるためには、以下の施策が有効です:

顧客ヘルススコアの活用:顧客の利用状況や満足度を測定するための指標であるヘルススコアを活用し、解約リスクが高い顧客に対して早期にアプローチします。

プロアクティブなサポート:顧客が問題を抱えたり、利用状況が低下したりした場合に、迅速にサポートを提供することが重要です。

定期的なレビューと改善:顧客との定期的なレビューを行い、顧客のニーズやフィードバックを基にサービスを改善します。

顧客ロイヤルティの向上

顧客ロイヤルティは、顧客が特定のブランドやサービスに対して感じる信頼や愛着を指します。ロイヤルティを高めることで、顧客の継続的な利用や他者への推薦を促進することができます。ロイヤルティを向上させるための施策にはNPS(Net Promoter Score)の活用が効果的です。NPSは顧客の推奨度を測る指標で、顧客のロイヤルティを評価するために利用されます。NPSを定期的に測定し、顧客の満足度やロイヤルティの向上に向けた施策を講じます。

アップセル・クロスセルの推進

アップセルとクロスセルは、既存顧客に対して追加の製品やサービスを提案し、顧客の購買単価を向上させる手法です。

アップセルは顧客が現在利用している製品やサービスよりも高額なオプションや上位製品を提案することです。顧客が製品に満足し、成果を実感していることが前提です。

クロスセルは顧客が現在利用している製品やサービスに関連する別の製品やサービスを提案することです。顧客が他の製品やサービスの利用によって更なる成功を得られると考えられる場合に有効です。

顧客ニーズの吸い上げとフィードバック

顧客からのフィードバックを収集し、そのニーズに応じて製品やサービスを改善することもLTVの最大化に重要です。顧客からのアンケートやインタビューを通じて、利用状況やニーズを把握し、収集したフィードバックを分析し、顧客が抱える問題や改善点を特定します。

顧客のフィードバックを基に製品やサービスの改善を行い、顧客満足度の向上を図ることでLTVの向上が期待できます。

カスタマーサクセスの業務プロセス

カスタマーサクセスのプロセスと主な業務

SaaSやその他のサブスクリプションモデルでは、顧客が最初にサービスを利用し始める際に安心して使い始められる環境を整えることが重要です。これを実現するための最初のステップが「オンボーディング」です。オンボーディングは、顧客が製品やサービスを購入した直後から始まるプロセスで、顧客が製品をスムーズに導入し、自立して使いこなせるようになるための一連の活動を指します。

オンボーディングが完了すると、次に「アダプション(活用促進・製品定着)」というプロセスが続きます。この段階では、顧客が製品やサービスをさらに深く活用し、高い成果を上げられるように支援します。アダプションが成功すると、顧客の満足度が高まり、次のステップである「リニューアル(契約更新)」につながります。リニューアル後には、「エクスパンション(契約拡大:アップセル・クロスセル)」が続き、顧客の利用範囲や契約内容を拡大することが目指されます。これら一連のプロセスを総称して「カスタマーサクセス」と呼びます。

本章では、各プロセスの意味とそれぞれの業務内容について詳しく解説します。

他社はどうしてる?カスタマーサクセス実態調査レポート

SaaS企業のカスタマーサクセス・サポート担当200名に行ったアンケート結果。解約率などのKPI・効果があった施策・ツールでの生産性向上など、ちょっと気になる「他社の動き」を見てみませんか?

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オンボーディング(On-boarding):導入後の初期支援

オンボーディングは、顧客が製品やサービスを購入した直後から始まります。このプロセスでは、顧客が製品やサービスをスムーズに利用開始できるように、アカウントの設定や基本的な操作方法のトレーニングを提供します。具体的には、アカウント登録、初期設定の支援、製品の使い方の説明、サポート体制の案内などが含まれます。オンボーディングの目的は、顧客が自立して製品を利用できるようにすることと、サービスへの理解不足からくる解約を防ぐことです。オンボーディングは顧客体験の初期段階であり、この段階での成功が顧客の今後の利用意欲や満足度に大きな影響を与えます。特に、顧客の期待値が高い初期段階で失望させると、その後のプロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、最適なオンボーディングの実施には、十分なリソースと人材の投入が不可欠です。

クラウドサーカスのオンボーディングプログラム

クラウドサーカスでは「スタートアッププログラム」を通じて、顧客のオンボーディングをサポートしています。このプログラムでは、以下のような複数の支援活動が実施されます

クラウドサーカスのオンボーディングプログラム「スタートアッププログラム」の流れを解説

※クラウドサーカス社のMAツール「BowNow」のオンボーディングプログラム

オンボーディングの重要性

オンボーディングは、顧客の契約更新やアップセル、クロスセルに直接的な影響を与えるため、極めて重要なプロセスです。具体的には、以下の点が特に重要です。

①初期体験の良し悪しによる影響
オンボーディングが成功すると、顧客の製品やサービスへの信頼感・期待感が高まり、満足度が向上します。一方で、この段階での設定方法が複雑だったり、サポートが不十分だったりすると、顧客の利用意欲が低下します。これが続けば早期の解約リスクが高まり、さらにネガティブな印象が継続利用や再契約の意欲を低下させてしまいます。そのため、オンボーディングでは顧客の期待に応える良好な初期体験を提供することが必須です。

②タイム・トゥ・バリュー(TTV)の短縮
タイム・トゥ・バリュー(TTV)とは、顧客が製品の価値を実感するまでにかかる時間を指します。顧客は迅速に製品の価値を感じるほど満足度が高まり、解約のリスクが低下します。具体的には、製品のセットアップや初期設定を簡単にしたり、事前設定されたテンプレートを用意したりすることで、顧客が早期に価値を体験できるようになります。また、初期ガイドやチュートリアルを提供することで、顧客が製品の主要機能や活用法を迅速に理解し、初期の成功体験を得やすくなります。

③アップセルやクロスセル機会の創出
オンボーディングが成功して顧客が製品を十分理解すると、新たなニーズや課題が浮かび上がります。そのタイミングで追加機能やサービスを提案すると、アップセルやクロスセルが効果的に行えます。例えば、顧客が基本機能を使いこなす中で、さらに高度な機能や拡張モジュールの必要性を感じることがあり、これが収益拡大の機会になります。

オンボーディングは顧客の満足度を高め、解約リスクを減らすだけでなく、長期的な収益増加の土台を作ります。顧客の成功体験を早期に実現することで、ロイヤルティ向上や継続的な関係構築につながるのです。

このように、オンボーディングは顧客の初期体験を形作り、製品の利用開始から価値を実感できるまでの時間を短縮することが求められます。これにより顧客の満足度が向上し、解約リスクが低下すると同時に、アップセルやクロスセルの機会も創出されるのです。成功するオンボーディングは、顧客のロイヤルティを高め、長期的な関係を築くための基盤となります。

オンボーディングの主な業務

オンボーディングはハイタッチ・ロータッチ・テックタッチなどカスタマーサクセスの提供方法によってかわりますが、主な業務としては、以下のものがあります。

オンボーディング項目 説明
導入後のサポート・フォロー体制についての説明 ●サポート問い合わせ窓口の案内
●マニュアルサイト
●ユーザー会・顧客向けセミナーの案内
●サポートからのメルマガの登録
など
KPI/KGI設定、活動計画設定 ●具体的な成功の指標を決める
●定期的な状況確認と報告
●ゴールまでのロードマップ(計画書)作成
など
製品・サービスの使い方のトレーニング、研修 ●ID登録や基本設定
●チュートリアル(プロダクトツアー)による操作方法
●スタートアッププログラムの実施
●個別勉強会
など
その他 ●コンサルメニューの紹介

関連記事: オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説

アダプション(Adoption):活用定着

アダプション(Adoption)は、顧客が製品やサービスを十分に活用し、高い成果を上げることを目指すプロセスです。このフェーズでは、単なる利用状況だけでなく、顧客が製品の価値を感じ、成果を上げているかが重要になります。

顧客の状況や利用状況に合わせて、最適なサポートを提供するためのタッチモデルが重要です。主に契約金額に応じて「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」などに分類してフォローアップを進めることが一般的です。
ハイタッチは、大口顧客や重要な顧客に対して、専任担当者がマンツーマンでサポートを提供するモデルです。
ロータッチは、担当者が複数の顧客を同時にサポートし、定期的な情報提供やセミナーなどを実施します。
テックタッチは、オンラインヘルプ、FAQ、チュートリアルなどのデジタルツールを活用し、顧客自身で問題を解決できるように支援するモデルです。
これらのタッチモデルを組み合わせることで、顧客のニーズに合わせた柔軟なサポートを提供できます。最近では、ハイタッチとロータッチの中間的なサポートモデルとして、コミュニティタッチが注目されています。これは、顧客同士が交流し、情報交換ができる場を提供することで、顧客のエンゲージメントを高める効果が期待できます。

アダプションのフェーズは、顧客が製品やサービスを使いこなすことで高い成果を得るための重要な段階です。成功することで、顧客満足度が向上し、製品から期待以上の成果を得られると、顧客の継続利用の意欲が高まり、解約リスクが低下します。
さらに、顧客が製品を使いこなすことで、新たなニーズや課題が明らかになり、これに応じたアップセルやクロスセルの機会が増え、収益の向上が期待できます。顧客が成功体験を得ることで、ロイヤルカスタマーとなり、高い顧客生涯価値(LTV)を持つようになります。これにより、長期的な収益の安定に寄与するのです。 


関連記事: ハイタッチとは?カスタマーサクセスのタッチモデル「テックタッチ」「ロータッチ」との違いや分類方法、具体例をわかりやすく解説

関連記事:テックタッチとは?カスタマーサクセスの重要なタッチポイント ~知っておきたい基礎知識について~

関連記事: コミュニティタッチとは?カスタマーサクセスの3つのタッチモデルとの関係やメリット・デメリット、成功事例などを解説

アダプションの主な業務

アダプションの主な業務として、下記の活動が挙げられます。

定例会実施 活用度チェック
計画進捗チェック 顧客満足度調査
ユーザー会・セミナー開催 顧客の活用事例紹介
個別勉強会 機能アップデート共有・説明

リニューアル(Renewal):契約更新

リニューアル(Renewal)は、顧客の契約更新を指し、特にサブスクリプション型ビジネスモデルにおいては、安定した収益を確保するための重要な指標です。この段階では、顧客が製品やサービスを通じて成功体験を積み重ねることが、契約更新の可能性を高める要因となります。リニューアルプロセスには、契約更新の見積書や次年度の活用提案書の作成、顧客への説明が含まれます。顧客の利用状況や満足度に応じて、次年度の契約条件や追加サービスの提案を行います。 リニューアルは、サブスクリプション型ビジネスの安定収益を確保するために非常に重要です。
リニューアルに成功することで、安定した収益を確保し、企業の成長を支える基盤となります。契約更新率が高いほど、安定した収益を維持できるため、企業の持続可能な成長が実現します。顧客が契約を更新する際には、製品やサービスに対する満足度が重要であり、再契約につながりやすく、収益の向上が図れます。 リニューアルの主な業務には、契約更新の見積書作成や次年度の活用提案書作成、契約更新の交渉が含まれます。顧客満足度を再度調査し、契約更新に向けた改善点や提案を行うことも重要です。

エクスパンション(Expansion):契約拡大

エクスパンション(Expansion)は、顧客へのアップセルやクロスセルを通じて、自社製品やサービスの利用をさらに拡大することを指します。サブスクリプション型の企業では、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客からのエクスパンションも重要な要素です。
エクスパンションのプロセスでは、顧客の利用状況やニーズに応じて、追加機能やサービスを提案します。
エクスパンションは、顧客維持コストを削減しながら収益を向上させるために非常に重要です。顧客単価を向上させることができ、顧客が追加の機能やサービスを導入することで、収益が増加し、顧客生涯価値(LTV)が向上します。また、顧客が新たな機能やサービスを導入することで、より高い成果を得られるようになり、ロイヤルカスタマーの育成や長期的な関係構築が促進されます。
エクスパンションの主な業務には、商談の発掘や顧客の利用状況やニーズを把握し、アップセルやクロスセルの商談を発掘する活動が含まれます。顧客のニーズに応じた追加機能やサービスの提案を行い、契約条件について顧客と交渉し、契約を締結します。その後は、エクスパンション後の顧客の利用状況をフォローアップし、追加のサポートや改善提案を行います。


カスタマーサクセスの主なKPI(評価指標)

カスタマーサクセスを効果的に運営するためには、成果を測定し、進捗を評価するためのKPI(重要業績評価指標)を定めることが不可欠です。カスタマーサクセスにおける主要なKPIとその測定方法について理解し、成果を最大化するための戦略を考えましょう。

また、クラウドサーカスが実施した「カスタマーサクセス実態調査」では、重要指標の平均値が以下の通りに出ています。こちらと自社の数値を比べて、悪い部分は要改善数値としてウォッチしておきましょう。
customersuccess重要指標

解約率(チャーンレート)

解約率とは、サービスを解約した顧客の割合を示す指標で、特にサブスクリプション型ビジネスにおいて非常に重要です。カスタマーサクセスの役割は、顧客に価値を提供し、長期的にサービスを利用してもらうことです。そのため、解約率を低く抑えることが最優先の課題となります。顧客の離脱を防ぐためには、解約率を正確に測定し、その要因を分析する必要があります。
解約率には「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2つのタイプがあります。

①カスタマーチャーンレート

カスタマーチャーンレートは、顧客数ベースでの解約率を計算する方法です。これは、商品やサービスの価格が一律の場合や、ダウングレードした顧客を含む場合に適しています。

計算式:
カスタマーチャーンレート = (期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の顧客数) × 100

例えば、前月末の顧客数が200名で、そのうち14名が翌月に解約した場合、解約率は(14 ÷ 200)× 100 = 7%となります。

②レベニューチャーンレート

レベニューチャーンレートは、売上ベースで解約率を計算します。顧客の単価が異なる場合に使用され、解約が売上に与える影響を把握するのに適しています。

例えば、「通常プラン:月額5000円・プレミアムプラン:月額10000円」の商品の場合、4月末の登録者は両プランともに5名ずつであるとします。そのうち2名が5月になるとプレミアムプランを解約したとなると、以下のように計算できます。

計算式:
{サービス単価10000円 × 解約数2 ÷ 総収益(5000円×5 + 10000円×5)}x 100 = 約27%(四捨五入)

解約率はサブスクリプション型ビジネスにおいて、解約率の管理は企業の成長に直結します。解約率が高いと、収益が減少するだけでなく、ブランドイメージにも悪影響を与える可能性があります。したがって、カスタマーサクセスの戦略として、顧客の解約リスクを早期に察知し、適切なフォローアップを行うことで、顧客をつなぎとめて解約を最小限に抑えていくことが重要になります。

契約継続率 (リテンションレート)

契約継続率(リテンションレート)は、解約率と対をなす指標で、サービスを継続利用している顧客の割合を示します。解約率が「去っていく顧客」に焦点を当てる一方で、契約継続率は「継続している顧客」に焦点を当てる、よりポジティブな指標です。カスタマーサクセスの活動がうまく機能しているかどうかを判断するための重要な指標です。「既存顧客維持率」や「定着率」と呼ばれることもあります。

解約率と同様に、契約継続率にも「カスタマーリテンションレート」と「レベニューリテンションレート」の2種類の指標があります。

①カスタマーリテンションレート
カスタマーリテンションレートは、顧客数をベースにした以下の計算式で割り出せます。

計算式:
{(期間終了時の顧客数 - 期間中に増加した顧客数) ÷ 期間開始時の顧客} × 100

例えば、8月時点での顧客数が1000人、同月に350人の顧客が増加し、8月末での顧客数が1300人とします。これを上記の計算式に当てはめてみると、
(1300-350)÷1000×100=95となり、維持率は95%と計算できます。

②レベニューリテンションレート
レベニューリテンションレートは収益をベースにした以下の計算式で割り出します。

計算式:
{(期間終了時の収益 - 期間中に増加した収益) ÷ 期間開始時の収益} x 100

複数の商品・サービスを顧客に合わせて提供している場合や、サブスクリプション型モデルでの販売で顧客ごとに金額が異なる場合などは、レベニューリテンションレートで計算するのが一般的です。
サブスクリプション型ビジネスでは、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持が収益に大きな影響を与えます。契約継続率を高めることは、解約率の低減につながり、企業の成長を支える重要な要素となります。

オンボーディング完了率

カスタマーサクセスでのオンボーディング完了率は、サービスの利用開始プロセスである「オンボーディング」がどれだけ完了しているかを示す指標です。オンボーディングの成功は、顧客がサービスを長期的に利用するかどうかを左右する重要な要素です。オンボーディングが不十分な場合、顧客はサービスの価値を感じる前に解約してしまうリスクが高まります。つまりオンボーディング完了率はそのまま解約率・契約継続率にも影響を及ぼすということです。

計算式:
オンボーディング完了率 = (オンボーディングが完了した顧客数 ÷ オンボーディングを受けた全顧客数) × 100

オンボーディングが完了したかどうかを判断する基準は、企業やサービスによって異なりますが、カスタマーサクセスを行う上で共通の認識を持つことが重要です。
オンボーディングを効率的かつ効果的に進めることで、顧客の満足度を高め、解約率の低下につなげることができます。

アップセル率・クロスセル率

アップセル率は、顧客が現在利用しているプランよりも上位のプランやオプションを購入した割合を示します。アップセルの成功は、顧客単価を向上させ、LTVの最大化に寄与します。クロスセル(cross-sell)は、顧客が現在利用している商品・サービスに関連する商品・サービスの購入を促して利益を得る手法です。この「アップセル・クロスセル率」はどれだけの顧客に対してアップセル・クロスセルを実現できているかを示す割合を意味します。

計算式:
アップセル率 = (アップセルした顧客数 ÷ 全顧客数) × 100
クロスセル率 = (クロスセルした顧客数 ÷ 全顧客数) × 100

アップセルやクロスセルの成功は、既存顧客に対して追加の価値を提供し、企業の収益を増加させる効果があります。しかし、顧客のニーズに合わない提案は、逆に顧客の不満を招き、解約リスクを高める可能性があるため、慎重なアプローチが求められます。

カスタマーヘルススコア

カスタマーヘルススコアは、各顧客の健康状態を数値化した指標で、解約リスクの早期察知に役立ちます。このスコアは、顧客の利用状況、サポートリクエストの頻度、アンケート結果など、複数の要素を統合して算出されます。ヘルススコアは日本語で「ヘルス=健康」「スコア=得点」を意味し、顧客の健康状態を数値化して把握することが可能です。つまり顧客のヘルススコアが高ければ「継続が見込める」、低ければ「解約の確率が高い」ということが判断できます。

カスタマーヘルススコアを活用することで、顧客の健康状態を数値化・可視化し、変化や傾向を迅速に察知できます。効果的にヘルススコアを運用することで、カスタマーサクセス活動がより効率的になり、解約率の低下やアップセル・クロスセルの成功率向上、さらには顧客生涯価値(LTV)の最大化が期待できます。

ただし、ヘルススコアの導入や運用は高度なリソースを要します。自社の成長段階や製品、さらには体制がスコアの運用に適しているかどうかを慎重に見極めることが重要です。

ヘルススコアを計算する前に、「企業にとって健康な状態とは何か」を定義する必要があります。これには、以下のような基本的な要素が含まれます。

項目 詳細
ビジネスポテンシャル ●契約金額、契約金額の増減
●年商
●従業員数
●支払い履歴
など
製品・サービスの活用度 ●活用スコア
  利用時間・活用(ログイン)頻度・機能利用頻度など
●更新リスク
●カスタマーサポートの利用頻度
●運用担当者数、新規アカウント発行数
●ゴール達成度
など
プログラム活用度 ●メルマガ
●導入支援コンサル、追加コンサル
●活用支援セミナー参加、基礎トレーニング
●ユーザー会参加、コミュニティ登録
など
顧客とのリレーション・関係性 ●Topリレーション
●担当者リレーション
●お客様の声・事例登録
●ネットプロモータースコア(NPS®)
●顧客満足度 (CAST)
など
マーケティング、インサイドセールス、営業、サポート、開発など複数部門 カスタマーサクセス、開発部門
日本では主にBtoB向けSaaSビジネス BtoC、BtoB関わらず、ほぼすべての企業に存在している

また、ヘルススコアを導入し、効果的に運用するためには、以下の5つのステップを踏むことが推奨されます。

①顧客の健康状態を定義する
まず、自社における「健康な顧客」の基準を明確に設定します。これは、製品やサービスの特性に応じて、どの状態が良好で、どの状態がリスクを示すのかを判断するプロセスです。

②指標を決定する
企業の目標や業種に合わせ、適切なヘルススコアの指標を選定します。一般的には、利用状況、顧客満足度、契約状況などが含まれますが、業種ごとに優先される項目は異なることがあります。

③スコア算出方法を決定する
各指標の重みづけや採点基準を定め、スコアの算出方法を構築します。たとえば、サポートへの問い合わせ頻度やトレーニング参加回数をどう評価するかを決め、独自のスコアリングモデルを作り上げます。

④アクションを設定する
スコアが低下した場合や特定の条件を満たした場合に実行する施策を具体化します。これには、カスタマサポートや営業チームによるフォローアップなどが含まれます。

⑤運用と改善を繰り返す
実際にヘルススコアを運用し、結果をモニタリングします。効果的な施策が実行されているかどうかを分析し、必要に応じて改善を行います。

信頼できるヘルススコアを構築することで、顧客が解約する可能性や追加の収益機会を正確に予測し、効率的なアプローチを可能にします。

NPS®(顧客推奨度)

NPSの「推薦者」「中立社」「批判者」の分け方
NPS(Net Promoter Score)は、顧客が企業やサービスに対してどれほどの愛着や信頼を持ち、継続的に利用し続けるかを数値で示す指標です。これは、企業の業績と強い関連性があるため、カスタマーサクセスにおいても重要なKPI(重要業績評価指標)とされています。

NPSは「顧客推奨度」を測る指標で、顧客を「批判者」「中立者」「推奨者」の3つのカテゴリーに分類します。具体的には、商品やサービスに否定的な「批判者」は0~6点を、再購入率が低めの「中立者」は7~8点を、再購入率が高く、友人や知人に紹介する可能性が高い「推奨者」は9~10点を与える顧客を指します。

計算式:
NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合

例えば、推奨者の割合が60%、批判者の割合が30%であれば、60% - 30% = NPS 30となります。NPSの理想値は業界や商材により異なりますが、競合のNPSを基準に設定し、それを上回ることを目指すのが一般的です。NPSが高い企業は、顧客がその商品やサービスに対して信頼を持ち、継続利用してくれる可能性が高いことを示しています。大手企業であるAmazonやGoogleもNPSをKPIとして採用しており、日本企業においても重要視される指標となっています。
NPSの測定は、簡単なアンケートで行うことができます。「今利用している商品・サービスを友人や知人に勧める可能性はどのくらいありますか?」といった質問に対し、顧客に0〜10のスコアで評価してもらう形式が一般的です。

このようにカスタマーサクセスでは、解約率、契約継続率、オンボーディング完了率、アップセル率、NPSの5つの指標を重視し、顧客の成功を促進し長期的な成長を目指すべきです。


カスタマーサクセス成功事例

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Salesforce(株式会社セールスフォース・ジャパン)

Salesforce(株式会社セールスフォース・ジャパン)は、CRM(顧客管理システム)を提供する企業として、「カスタマーサクセス」の概念を最初に提唱した業界のパイオニアです。

かつてIT業界では「売り切り型」のビジネスが主流でしたが、Salesforceはクラウドベースのサブスクリプションモデルを導入し、2004年には「カスタマーサクセス」の仕組みを本格的に運用し始めました。同社はカスタマーサクセスを「Salesforceを活用し、顧客がビジネスで成功を収めること」と定義し、最終的な目標は「顧客が自走できる状態になること」としています。

顧客のオンボーディングと定着化の課題をクリアし、Salesforceを活用したPDCAサイクルを回せる環境を提供することで、顧客の成功を支援します。この流れが確立されると、契約更新率が向上し、アップセルやクロスセルの機会が増加するという好循環が生まれます。結果として、顧客生涯価値(LTV)の最大化、つまりカスタマーサクセスの成功を実現することが可能になります。

また、カスタマーサクセスの実現において重要な指標として「契約更新率」「ヘルススコア」「エンゲージメント」が挙げられます。設立当初、主な活動は解約防止に焦点が当てられていましたが、現在では「顧客の成功」を明確に定義し、それに基づいたKPIを設定して活動を展開しています。

このように、既存顧客の成功と定着を図ることで、より大きな成果をもたらすカスタマーサクセスの好事例と言えます。

Sansan株式会社

Sansan株式会社は、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺アプリ「Eight」を提供する、2007年創業の日本発SaaS企業です。

同社は、まだサブスクリプションビジネスが浸透していない時代に事業を開始し、「まずは使ってもらうことが重要」という考えから、2012年に国内初のカスタマーサクセス部門を設立しました。

同社は5つの重要な柱に基づいた組織体制を構築しており、これには、利用促進を担当するCSM(カスタマーサクセスマネージャー)、トレーニング&コミュニティ、プロダクト・フィードバック、テクノロジー&マーケティング、そして契約更新を担うリニューアルセールスが含まれます。これらの柱が組織の枠を超えて連携することで、顧客に柔軟かつ迅速な対応が可能な基盤を築きました。

その結果、顧客価値を大幅に向上させ、最終的には売上の増加にも成功。現在では、SaaS業界でもトップクラスの驚異的な成果を達成しています。

カスタマーサクセスに求められるスキル

顧客理解スキル

顧客理解スキルは、カスタマーサクセス担当者にとって不可欠なスキルです。顧客の課題、ニーズ、ビジネス目標を正確に把握する能力が求められます。

顧客理解スキルを高めるためには、顧客へのヒアリング、アンケート、データ分析などを積極的に行う必要があります。顧客の言葉だけでなく、言葉の裏にある感情や意図を読み解く力も重要です。また、顧客の業界知識やビジネスモデルに関する知識も必要です。

営業スキル

カスタマーサクセスは、アップセルやクロスセルを行う際、営業スキルが求められます。顧客に自社サービスの価値を効果的に伝え、追加契約や上位プランへの移行を促す能力が必要です。

営業スキルを高めるためには、顧客への提案力、プレゼンテーション能力、交渉力などを磨く必要があります。顧客のニーズを的確に捉え、顧客にとって最適なソリューションを提案することが重要です。近年では、営業とカスタマーサクセスが連携し、顧客のビジネス成長を支援する動きも強まっています。

業務設計スキル

カスタマーサクセスは、顧客の成功を支援するための業務プロセスを設計する能力も求められます。効率的な業務フローを構築し、顧客に価値を提供し続けるためには、業務設計スキルが不可欠です。

業務設計スキルを高めるためには、業務プロセスを可視化し、改善点を洗い出す必要があります。また、業務効率化ツールなどを活用し、より効率的な業務フローを構築することも重要です。カスタマーサクセスチームの人数が増えてくると、業務の標準化や属人化の解消が課題となるため、業務設計スキルが重要になります。

カスタマーサクセスの将来性

市場や求人数は伸びている

カスタマーサクセス職は、インサイドセールスとともに需要が増加すると予想されており、キャリアアップを目指す上で有望な職種と言えるでしょう。特にSaaS企業を中心に、多くの企業がカスタマーサクセス部門を設置し、専任の担当者を積極的に採用しています。カスタマーサクセスは、顧客の成功に直接貢献できるやりがいのある仕事であり、成長を続ける市場で活躍できるチャンスがあります。(新しい営業職求人数推移/doda)
customersuccess求人数

顧客成功と同時に営業力が求められる

これからのカスタマーサクセス担当者は、顧客の成功を支援するだけでなく、自社の収益向上にも貢献する役割を担うことが求められます。そのため、顧客のニーズを捉え、アップセルやクロスセルを行うための営業スキルも重要になります。

カスタマーサクセスは、顧客の課題解決だけでなく、収益にも貢献できるプロフェッショナルとして、今後ますます重要な存在になっていくでしょう。顧客の成功を支援すると同時に、自社のビジネス成長にも貢献できる人材が求められています。

近年では、カスタマーサクセスの役割が拡大し、「カスタマーセールス」という新たな職種も生まれています。これは、顧客の成功を支援するだけでなく、積極的な提案やアップセル・クロスセルを推進し、企業の収益拡大に貢献する役割を担います。

カスタマーサクセスツールの活用がカギ

カスタマーサクセス活動を効率化するためには、カスタマーサクセスツールの活用が不可欠です。カスタマーサクセスツールは、顧客データの一元管理、利用状況の分析、コミュニケーション支援など、さまざまな機能を提供します。

これらのツールを導入することで、顧客データを効果的に活用し、パーソナライズされたサポートを効率的に提供することができます。カスタマーサクセスツールを使いこなすことが、今後のカスタマーサクセス担当者にとって必須のスキルになっていくでしょう。具体的には、CRM(顧客管理システム)、ヘルプデスクツール、オンボーディングツール、分析ツールなどがあります。これらのツールを適切に活用することで、業務効率化だけでなく、より質の高いカスタマーサクセスを実現できます。

カスタマーサクセスの将来展望

今後、カスタマーサクセスは、AIや自動化技術の進化によって、より高度化・効率化していくと予想されます。AIを活用して顧客データを分析し、顧客の課題やニーズを予測し、最適なサポートを自動的に提供するような仕組みが導入されるでしょう。

また、カスタマーサクセスは、企業全体で取り組むべき重要な戦略として、その重要性がますます高まっていくでしょう。カスタマーサクセスは、単なる部門ではなく、全社的な顧客中心の文化を醸成していく役割を担うと考えられます。そして、より顧客のビジネスに深く入り込み、顧客との共創を通じて新たな価値を創出する存在へと進化していくでしょう。

 

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ビジネスモデルや市場の変化に伴い、「顧客の成功」と「自社の収益向上」を両立するカスタマーサクセスの重要性は、今後さらに高まるでしょう。サブスクリプション型ビジネスモデルやコンサンプションモデルなどが主流となる今のデジタル時代において、カスタマーサクセスはすべての企業にとって欠かせない要素です。皆様がカスタマーサクセスへの理解を深めるきっかけとなれば幸いです。

クラウドサーカスでは、カスタマーサクセス向けのデジタルツール「Fullstar(フルスタ)」を提供しています。
カスタマーサクセスを立ち上げ、拡大していく中で「顧客自身が利活用を進められる仕組みづくり」を通して、カスタマーサクセスの生産性向上・解約率低減・LTV向上に寄与します。国内で500社以上に導入が進んでおります。
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