ホリゾンタルSaaSとは?バーティカルSaaSとの違いや具体例をカスタマーサクセスの視点で解説

ホリゾンタルSaaSとは?バーティカルSaaSとの違いや具体例をカスタマーサクセスの視点で解説

ホリゾンタルSaaSとは、業界や業種を問わず、幅広いビジネスで共通して利用される業務課題を解決するためのSaaS(Software as a Service)のことです。会計ソフトやビジネスチャットツールなどがその代表例です。

これに対して、特定の業界に特化したバーティカルSaaSというモデルも存在します。両者はターゲット市場やプロダクト開発、そしてカスタマーサクセスの在り方においても大きく異なります。

本記事では、ホリゾンタルSaaSの基本からバーティカルSaaSとの違い、そして成功に不可欠なカスタマーサクセス戦略までを網羅的に解説します。

この記事は、特に以下のような課題やお悩みをお持ちの方におすすめです。

  • ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いを明確に理解したい
  • 自社が展開するSaaSの特性に合った戦略を策定したい
  • 多様な顧客を成功に導くためのカスタマーサクセス手法を知りたい

このような課題をお持ちの方はぜひ最後までご覧ください。

カスタマーサクセスツール

カスタマーサクセス組織の効率化・工数削減をお考えの方へ

導入実績1,900社以上!オンボーディング工数90%削減・解約率低減・ヘルススコア向上に使える!
SaaSのカスタマーサクセスの工数削減の方法と事例を解説!

詳細を見てみる >

目次

ホリゾンタルSaaSの基本を理解する

horizontal-saas
ホリゾンタルSaaSは、現代のビジネスシーンにおいて不可欠なツールとなっています。その最大の特徴は、特定の業界に縛られず、水平的(Horizontal)にあらゆる企業の共通課題を解決する点にあります。本セクションでは、ホリゾンタルSaaSの基本的な定義から、対となるバーティカルSaaSとの違い、そして市場の成長性について詳しく解説します。

ホリゾンタルSaaSの定義:業界を横断するソリューション

ホリゾンタルSaaSとは、業界や業種の垣根を越えて、多くの企業で共通して発生する業務プロセスを効率化するためのソフトウェアを、クラウド経由で提供するサービスモデルです。英語の「Horizontal」が「水平」を意味することから、特定の業界に垂直(Vertical)に特化するのではなく、市場を水平に横断してサービスを展開するイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

例えば、以下のような業務領域でホリゾンタルSaaSが活用されています。

  • コミュニケーション: メール、ビジネスチャット
  • 顧客管理: CRM (Customer Relationship Management)、SFA (Sales Force Automation)
  • 会計・財務: 会計ソフト、経費精算システム
  • 人事・労務: 人事管理システム、勤怠管理システム
  • プロジェクト管理: タスク管理ツール、情報共有ツール

これらのツールは、建設業界であってもIT業界であっても、企業の規模に関わらず必要とされる普遍的な業務をサポートします。そのため、ホリゾンタルSaaSは非常に幅広い顧客層をターゲットとすることが可能です。

この汎用性の高さがホリゾンタルSaaSの強みであり、多くのユーザーに受け入れられることで、大きな市場を形成する要因となっています。企業はこれらのSaaSを導入することで、自社でシステムを開発・保守するコストを削減し、迅速に業務効率を向上させることができます。

バーティカルSaaSとの根本的な違い

ホリゾンタルSaaSをより深く理解するためには、対照的なモデルであるバーティカルSaaSとの違いを明確にすることが重要です。バーティカルSaaSは、医療、建設、不動産、農業といった特定の業界(Vertical)が抱える固有の課題を解決することに特化したSaaSです。

両者の根本的な違いは、「誰の、どのような課題を解決するか」という点にあります。

項目 ホリゾンタルSaaS バーティカルSaaS
ターゲット 業界・業種を問わないすべての企業 特定の業界・業種の企業
解決する課題 部署・職種に共通する普遍的な業務課題(例:会計、人事、顧客管理) 業界固有の専門的な業務課題(例:電子カルテ、施工管理)
アプローチ 広く浅く 狭く深く
プロダクト 汎用性・カスタマイズ性が高い 専門性・業界標準への準拠性が高い
市場規模 非常に大きい (TAMが大きい) 限定的 (TAMは小さいが、顧客単価は高い傾向)

ホリゾンタルSaaSが「会計」や「顧客管理」といった機能(Function)で市場を切り取るのに対し、バーティカルSaaSは「医療」や「建設」といった業界(Industry)で市場を切り取ります。

この違いは、プロダクト開発からマーケティング、営業、そしてカスタマーサクセスに至るまで、あらゆる戦略に影響を及ぼします。ホリゾンタルSaaSは、いかに多くの企業に導入してもらえるかが重要になるため、機能の分かりやすさや導入のしやすさが求められます。一方、バーティカルSaaSは、その業界の専門家から「これがないと仕事にならない」と思われるほどの深い業界知識と専門性が求められます。

市場規模と将来性

ホリゾンタルSaaSがターゲットとする市場は、その汎用性の高さから非常に大きいものとなっています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む現代において、業務効率化や生産性向上はあらゆる企業にとっての共通課題であり、その解決策としてSaaSの導入が一般化しているからです。

実際に、国内外のSaaS市場は年々拡大を続けています。市場調査レポートによると、国内SaaS市場は年平均成長率10%以上で成長を続けており、今後もその勢いは続くと予測されています。特に、働き方改革やリモートワークの普及が、ビジネスチャットツールやオンライン会議システムといったホリゾンタルSaaSの需要をさらに後押ししました。

ホリゾンタルSaaSの将来性を考える上で重要なポイントは以下の通りです。

  • Horizontal × Verticalの動き
    汎用的な機能を持つホリゾンタルSaaSが、特定の業界向けのテンプレートや機能を追加し、バーティカルなニーズにも応えようとする動きが活発化しています。これにより、さらなる市場拡大が期待できます。
  • API連携によるエコシステム形成
    他のSaaSやシステムとAPIで容易に連携できることも、ホリゾンタルSaaSの強みです。これにより、単体のツールとしてだけでなく、企業全体の業務プロセスを最適化するプラットフォームとしての価値が高まっています。
  • AIの活用
    AI技術の進化により、データ分析や業務の自動化といった付加価値を提供しやすくなっています。例えば、CRMに蓄積された顧客データをAIが分析し、解約の予兆を検知したり、アップセルのチャンスを提案したりといった活用が可能です。

このように、ホリゾンタルSaaSは巨大な市場を基盤としながら、他領域への展開やテクノロジーの進化を取り込むことで、今後も継続的な成長が見込まれる非常に将来性の高いビジネスモデルであると言えます。

ホリゾンタルSaaSのメリットとデメリット

horizontal-saas
業界を問わず導入できるホリゾンタルSaaSは、ビジネスの拡大において多くの利点を持つ一方、その汎用性ゆえの課題も存在します。事業者と導入企業、双方の視点からメリット・デメリットを正しく理解することは、戦略を立てる上で不可欠です。ここでは、ホリゾンタルSaaSの持つ光と影について、具体的に掘り下げていきます。

【メリット】幅広い顧客層と高い拡張性

ホリゾンタルSaaSの最大のメリットは、ターゲットとなる市場の広さにあります。特定の業界に依存しないため、理論上は国内のすべての企業が顧客候補となり得ます。この広範囲な顧客基盤は、ビジネスの安定性と成長の可能性を大きく高める要因です。

  • 多様な顧客獲得チャネル
    ターゲットが広いため、Web広告、コンテンツマーケティング、イベント出展など、多様なマーケティング手法を展開できます。一つの業界の景気に左右されにくく、安定したリード獲得が可能です。
  • スケールメリット
    顧客数が増えれば増えるほど、サーバーコストなどの固定費が相対的に下がり、利益率が向上します。いわゆる「スケールメリット」を享受しやすいビジネスモデルです。
  • 事業の拡張性
    プロダクトの基本的な部分は変えずに、新たな機能を追加したり、異なる言語に対応したりすることで、国内外の新しい市場へ展開することが比較的容易です。例えば、会計ソフトがインボイス制度に対応する、といった形で法改正や新たなニーズを取り込みながら成長を続けられます。

【メリット】安定したビジネスモデル

幅広い顧客層を持つことは、ビジネスモデルの安定性にも直結します。特定の業界の動向に業績が大きく左右されるリスクを分散できるからです。

  • リスク分散効果
    例えば、建設業界が不況に陥ったとしても、IT業界や小売業界の顧客がビジネスを支えてくれます。特定の業界に依存するバーティカルSaaSと比較して、景気変動に対する耐性が高いと言えます。
  • 口コミ・評判の広がりやすさ
    業界を横断して利用されるため、ユーザーの成功事例や評判が広がりやすいという特徴があります。ある企業での成功が、別の業界の企業への導入を後押しするケースも少なくありません。
  • 確立されたビジネスプロセス
    会計や人事といった領域は、多くの企業で業務プロセスが標準化されています。そのため、プロダクト開発やサポート体制において、ベストプラクティスを確立しやすく、効率的な事業運営が可能です。

これらの要因により、ホリゾンタルSaaSは予測可能性の高い収益基盤を築きやすく、長期的に安定した成長を目指せるビジネスモデルとなっています。

【デメリット】競争の激化と顧客ニーズの多様性

ホリゾンタルSaaSの市場は大きい一方で、参入障壁が比較的低いことから、国内外の多くのプレイヤーが参入し、非常に厳しい競争環境にあります。また、顧客層が広いことは、多様なニーズへの対応を迫られるという課題にも繋がります。

  • 価格競争の発生
    類似サービスが多数存在するため、機能面での差別化が難しい場合、価格競争に陥りやすくなります。特に、多機能で低価格な海外サービスとの競合は、国内企業にとって大きな脅威です。
  • 顧客の多様な要望
    顧客の業界や規模、ITリテラシーが多岐にわたるため、「この機能が欲しい」「うちの業務フローに合わない」といった個別具体的な要望が数多く寄せられます。すべての要望に応えようとすると、プロダクトが複雑化し、開発コストも増大してしまいます。
  • 機能の平均化の弊害
    あらゆる顧客に対応しようとするあまり、機能が網羅的になり、「どの顧客にとっても70点の、可もなく不可もないサービス」になってしまうリスクがあります。特定のニーズを持つ顧客からは解約に至るケースもあります。

【デメリット】業界特有の課題への対応力

ホリゾンタルSaaSは汎用性を重視するあまり、特定の業界が持つ独自の商習慣や専門用語、複雑な業務フローに対応しきれない場合があります。

  • 専門性の限界
    例えば、医療業界向けの電子カルテシステムには、レセプト(診療報酬明細書)作成機能が必須ですが、汎用的なCRMツールでこれを代替することは困難です。業界特有の深い課題に対しては、専門知識を結集して作られたバーティカルSaaSに軍配が上がります。
  • カスタマイズの限界とコスト
    ある程度のカスタマイズ機能を備えているホリゾンタルSaaSは多いですが、それにも限界があります。業界の慣習に合わせるために大規模な追加開発が必要になる場合、導入コストや運用コストが肥大化し、SaaS導入のメリットが薄れてしまいます。
  • 信頼性の獲得
    専門性の高い業界では、その業界の慣習や課題を深く理解していることが、ベンダーへの信頼に繋がります。「業界のことを何も分かっていない」と判断されると、導入の検討テーブルにすら乗せてもらえない可能性があります。

このように、ホリゾンタルSaaSは「広く浅く」のビジネスモデルであるため、「狭く深く」を求める顧客層の獲得には不向きな側面も持ち合わせています。自社のプロダクトがどの領域で価値を提供できるのか、正しく認識することが重要です。

主要な比較軸で見るホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違い

horizontal-saas
ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いは、単にターゲット市場だけでなく、ビジネスのあらゆる側面に及びます。プロダクトをどのように作り、どう届け、顧客をどう成功に導くのか。ここでは、事業戦略の根幹をなす「市場」「開発」「営業」「カスタマーサクセス」という4つの軸から、両者のアプローチの違いを具体的に比較・解説します。

ターゲット市場:広く浅く vs 狭く深く

前述の通り、両者の最も基本的な違いはターゲット市場の捉え方にあります。この違いが、以降のすべての戦略を決定づけます。

  • ホリゾンタルSaaS: 「広く浅く」のアプローチを取ります。
    • 市場: 業界を問わず、特定の職種(例:経理、人事、営業)や業務(例:コミュニケーション、プロジェクト管理)をターゲットにします。
    • TAM (Total Addressable Market): ターゲットが広いため、潜在的な市場規模は非常に大きくなります。
    • 顧客像: 企業規模、業種、ITリテラシーなどが多岐にわたる、不特定多数のユーザーが対象です。
  • バーティカルSaaS: 「狭く深く」のアプローチを取ります。
    • 市場: 医療、建設、不動産など、特定の業界にターゲットを絞ります。
    • TAM: 市場は限定的ですが、その領域におけるペイン(課題)は深く、解決できた際の価値も大きいため、顧客単価 (ARPU) は高くなる傾向があります。
    • 顧客像: 業界特有の専門知識や業務フローを共有する、比較的均質なユーザーが対象です。

この市場戦略の違いを理解することは、自社がどちらのモデルを目指すのか、あるいは両者のハイブリッドを目指すのかを考える上での出発点となります。

プロダクト開発:汎用性 vs 専門性

ターゲット市場が違えば、提供するプロダクトの在り方も当然異なります。プロダクト開発において、ホリゾンタルSaaSは「汎用性」、バーティカルSaaSは「専門性」をそれぞれ追求します。

  • ホリゾンタルSaaS:
    • 開発方針: どのような企業でも使えるように、機能は標準的で分かりやすく、設定の自由度が高いことが求められます。多くのユーザーにとっての「最大公約数」的な価値を提供することを目指します。
    • UI/UX: ITに不慣れなユーザーでも直感的に操作できる、シンプルで洗練されたUI/UXが重要になります。
    • 連携性: 他の多くのSaaSと連携できるよう、APIを公開していることが一般的です。
  • バーティカルSaaS:
    • 開発方針: 業界特有の複雑な業務フローや専門用語、法規制に完全に対応することが最優先されます。その業界のプロフェッショナルが「これでないとダメだ」と感じるほどの深い機能性が求められます。
    • UI/UX: 汎用性よりも、業界の業務フローに最適化された画面設計が重視されます。一見複雑に見えても、熟練者にとっては最も効率的な操作が可能な設計が良しとされることもあります。
    • 連携性: 業界内で使われている他の専門システム(例:会計システムとレセコン)との連携が重要になります。

プロダクト開発においては、どちらが良いというわけではなく、ターゲットとする顧客の課題を最も効果的に解決できるアプローチを選択することが重要です。

マーケティング・営業戦略

プロダクトを顧客に届けるためのマーケティング・営業戦略も、両者で大きく異なります。

  • ホリゾンタルSaaS:
    • マーケティング: 顧客が不特定多数であるため、マス向けのデジタルマーケティングが中心となります。SEO、Web広告、ウェビナー、マス広告などを駆使して、幅広い層にリーチし、無料トライアルや資料請求へと誘導します。
    • 営業: 顧客単価が比較的低いことが多いため、インサイドセールスが中心となり、人的コストをかけずに効率的に契約を獲得する「ロータッチ」「テックタッチ」な営業モデルが主流です。プロダクト自体が営業の役割を担うPLG(Product-Led Growth)戦略も有効です。
  • バーティカルSaaS:
    • マーケティング: ターゲットが限定的なため、業界専門誌への出稿、業界団体主催の展示会への出展、既存顧客からの紹介(リファラル)など、特定のコミュニティに深くリーチする手法が効果的です。
    • 営業: 顧客単価が高く、導入の意思決定も複雑なため、フィールドセールスによる「ハイタッチ」な営業が中心となります。業界知識の豊富な営業担当が、顧客の深い課題をヒアリングし、コンサルティングに近い形で提案を行います。

このように、顧客の特性や単価に合わせて、最適なアプローチを設計する必要があります。

カスタマーサクセスのアプローチ

顧客にプロダクトを導入してもらい、継続的に価値を感じてもらうためのカスタマーサクセス活動も、両者でその重点が大きく異なります。これは、BtoB SaaS企業の経営者や担当者にとって特に重要な比較軸です。

  • ホリゾンタルSaaS:
    • 課題: 顧客の業種や規模、利用目的がバラバラであるため、一人ひとりに合わせた手厚いサポートを提供することが困難です。解約率(チャーンレート)を低く抑えることが大きな挑戦となります。
    • アプローチ: 効率性を重視した「テックタッチ」や「ロータッチ」が中心となります。チュートリアル、FAQ、ウェビナーといった1対nの施策を充実させ、多くの顧客を効率的に成功へと導く仕組み作りが求められます。顧客を属性や利用状況で分類するセグメンテーションが極めて重要になります。
  • バーティカルSaaS:
    • 課題: 顧客の業務に深く入り込んでいるため、システムの停止やトラブルが事業に致命的な影響を与えかねません。また、業界特有の高度な質問に対応できる専門性が求められます。
    • アプローチ: 専任の担当者がつく「ハイタッチ」なサポートが中心となります。業界知識の豊富なカスタマーサクセスマネージャー(CSM)が、顧客のビジネス全体を理解し、コンサルタントとして伴走しながら、LTVの最大化を目指します。

ホリゾンタルSaaSの事業者は、この「多様な顧客をいかに効率的に成功させるか」という難題を乗り越えることが、事業成長の鍵を握っているのです。

ホリゾンタルSaaSにおけるカスタマーサクセス成功の鍵

カスタマーサクセス成功の鍵
ホリゾンタルSaaSが持続的に成長するためには、新規顧客の獲得と同時に、既存顧客の解約を防ぎ、利用を促進することが必須です。その中核を担うのがカスタマーサクセスです。しかし、顧客の属性や利用目的が多岐にわたるホリゾンタルSaaSでは、画一的なアプローチだけでは通用しません。ここでは、その成功の鍵となる4つの重要な要素を解説します。

顧客セグメンテーションの重要性

すべての顧客に同じ対応をしていては、リソースが分散し、誰にも深く刺さらないサポートになってしまいます。そこで不可欠となるのが、顧客セグメンテーションです。セグメンテーションとは、顧客を共通の属性やニーズを持つグループに分類し、それぞれのグループに最適化されたアプローチを行うための戦略です。

弊社では契約金額(MRR)に応じてセグメントを分けております。※価格帯はプロダクトに応じて変動

ホリゾンタルSaaSにおけるセグメンテーションの切り口には、以下のようなものが考えられます。

  • 契約プラン: フリー、スタンダード、エンタープライズなど、契約金額に応じたセグメント。高額プランの顧客には手厚いサポート(ハイタッチ)を、低額プランの顧客には効率的なサポート(テックタッチ)を提供します。
  • 企業規模・業種: 従業員数や業界によって、プロダクトの活用方法や課題が異なるため、それに合わせた情報提供や活用事例の紹介が有効です。
  • 利用状況 (ヘルススコア): ログイン頻度、特定機能の利用率、サポートへの問い合わせ回数などのデータを基に、顧客の利用定着度をスコアリングします。スコアが低下している顧客(=解約予備軍)を早期に発見し、能動的に働きかけることができます。
  • 導入目的・ユースケース: 「業務効率化」「データ分析」「情報共有」など、顧客がプロダクトを導入した目的別に分類し、そのゴール達成に向けた支援を行います。

これらのセグメントごとに適切なコミュニケーション戦略を立てることで、限られたリソースを効果的に配分し、顧客満足度を最大化することが可能になります。

多様なユースケースに対応するオンボーディング

ホリゾンタルSaaSにとって、顧客が契約後に初めて製品を利用するオンボーディングの期間は、その後の利用継続を左右する最も重要なフェーズです。ここで顧客が「使い方が分からない」「価値を感じられない」とつまずいてしまうと、すぐに解約に至ってしまいます。

顧客の業種やITリテラシー、導入目的が多様であるため、オンボーディングの設計には以下のような工夫が求められます。

  • セルフオンボーディングの仕組み化: チュートリアル動画、ステップバイステップのガイド、FAQサイトといったコンテンツを充実させ、顧客が自分自身のペースで学習できる環境を整えます。これにより、サポートチームの負荷を軽減し、多くの顧客を効率的に支援できます。
  • ユースケース別の導入支援: 顧客がどのような目的で導入したかに合わせて、オンボーディングのコンテンツをパーソナライズします。例えば、CRMを導入した顧客に対して、「営業日報の効率化」と「見込み顧客の管理」では、最初に設定すべき項目や利用を推奨する機能が異なります。
  • 進捗の可視化と適切なタイミングでの介入: 顧客がオンボーディングプロセスのどこでつまずいているのかをデータで把握し、適切なタイミングでメールやチャットボット、時には電話でフォローアップします。自動化と人的サポートを組み合わせることで、顧客体験を向上させます。

多様な顧客一人ひとりを迷わせることなく、価値を実感できる「最初の成功体験」へと導くこと。それがホリゾンタルSaaSのオンボーディングにおけるゴールです。

テックタッチを駆使した効率的なサポート体制

顧客数が多いホリゾンタルSaaSでは、すべての顧客に手厚い人的サポート(ハイタッチ)を提供するのは現実的ではありません。そこで重要になるのが、テクノロジーを活用して1対nのコミュニケーションを実現するテックタッチです。

テックタッチの具体的な施策には以下のようなものがあります。

  • ステップメール: 契約後の日数や顧客のアクションに応じて、あらかじめ用意されたメールを自動で配信します。使い方をガイドしたり、便利な機能を紹介したりすることで、顧客の育成を自動化します。
  • プロダクト内メッセージ: システムにログインした際に、新機能のお知らせや使い方のヒントなどをポップアップで表示します。顧客がまさにプロダクトを使っているその瞬間に、適切な情報を届けることができます。
  • ウェビナー: 定期的にオンラインセミナーを開催し、基本的な使い方から応用的な活用術までを多くの顧客に一斉に伝えます。Q&Aセッションを設けることで、顧客の疑問をその場で解決することも可能です。
  • ユーザーコミュニティ: ユーザー同士が情報交換したり、質問し合ったりできるオンラインの場を提供します。これにより、ユーザー同士での問題解決が促進され、サポートコストの削減と顧客エンゲージメントの向上の両方が期待できます。

これらのテックタッチ施策を効果的に組み合わせることで、人的リソースを重要な局面に集中させつつ、すべての顧客に対して一貫した質の高いサポートを提供することが可能になります。

プロダクト利用データ分析による能動的な支援

カスタマーサクセスは、顧客からの問い合わせを待つ受動的な活動ではありません。プロダクトの利用データを分析し、顧客が課題に直面する前兆を捉えて、先回りして支援する能動的なアプローチが成功の鍵となります。

  • 利用状況のモニタリング: どの顧客が、どの機能を、どれくらいの頻度で使っているかを常に監視します。長期間ログインしていない、重要な機能が全く使われていない、といった状況は解約の危険信号です。
  • 解約の予兆検知: 過去に解約した顧客の行動パターンを分析し、類似の傾向が見られる顧客を特定します。これにより、解約リスクの高い顧客に優先的にアプローチすることができます。
  • アップセル・クロスセルの機会発見: 特定の機能を使いこなしている顧客や、データ容量の上限に近づいている顧客に対しては、より上位のプラン(アップセル)や関連サービス(クロスセル)のニーズが生まれている可能性があります。データに基づき、最適なタイミングで提案を行うことで、顧客単価の向上に繋がります。
  • プロダクト改善へのフィードバック: 多くの顧客が特定の画面で離脱している、あるいは特定の機能が使われていない、といったデータは、プロダクト自体のUI/UXに問題がある可能性を示唆しています。これらのインサイトを開発チームにフィードバックし、プロダクト改善に繋げることもカスタマーサクセスの重要な役割です。

データに基づいた客観的なアプローチによって、カスタマーサクセスの属人化を防ぎます。

オンボーディングを仕組み化するCSツール「Fullstar」とは

Fullstarとは
ここまで見てきたように、多様な顧客を抱えるホリゾンタルSaaSの成功には、効率的かつ効果的なカスタマーサクセス、特にオンボーディングの仕組み化が不可欠です。しかし、これらの施策をすべて手動で行うには限界があります。そこで有効な選択肢となるのが、一連の活動を自動化・効率化するカスタマーサクセスツールです。

ホリゾンタルSaaSが抱える「定着化」の課題

ホリゾンタルSaaSは、幅広い顧客に導入される可能性がある一方で、常に「定着化」という大きな課題に直面しています。その理由は、汎用性が高いプロダクトであるがゆえの、以下のような特性にあります。

  • 価値実感の遅れ
    機能が豊富なため、顧客は「何から手をつければ良いか分からない」状態に陥りがちです。自社の課題を解決してくれる核心的な価値にたどり着く前に、利用を諦めてしまうケースが少なくありません。
  • 多様なつまずきポイント
    顧客のITリテラシーや導入目的がバラバラなため、つまずくポイントも人それぞれです。マニュアルを用意しても、自分の知りたい情報にたどり着けず、疑問が解決されないまま放置されてしまいます。
  • サポートリソース
    これら多様な顧客からの問い合わせに個別に対応していると、サポート部門の工数がいくらあっても足りません。結果として、対応が遅れたり、十分な支援ができなかったりして、顧客満足度の低下を招きます。

これらの課題を放置すれば、高い解約率に繋がり、事業の成長を大きく妨げることになります。顧客が自走してプロダクトを使いこなし、価値を実感できる状態、すなわち「定着化」をいかにスムーズに実現するかが、ホリゾンタルSaaSの生命線なのです。

CSツール「Fullstar」が実現するスムーズなオンボーディング

このようなホリゾンタルSaaSが抱える定着化の課題を解決するのが、当社の提供するカスタマーサクセスツール「Fullstar」です。Fullstarは、貴社のWebサービス上に、プログラミング不要でチュートリアルやヒントなどのガイドを設置できるツールです。これにより、顧客の「わからない」をリアルタイムで解決し、スムーズなオンボーディング体験を提供します。

Fullstarが実現する主な機能は以下の通りです。

  • ノーコードでのガイド作成: HTMLやCSSの知識がなくても、直感的な操作で操作ガイドやチュートリアルを作成できます。これにより、エンジニアのリソースを割くことなく、カスタマーサクセス担当者が迅速に施策を実行できます。
  • 利用状況に応じたガイド表示: 「初めてログインしたユーザーにだけ表示する」「特定の機能を使ったことがないユーザーにヒントを出す」など、顧客の利用状況に応じて表示するガイドを出し分けることが可能です。これにより、一人ひとりに最適化されたパーソナルな体験を提供します。
  • データ分析と改善: 作成したガイドがどれだけ見られたか、完了されたかを分析し、効果を測定できます。データに基づいてガイドの内容を改善していくことで、オンボーディングの成功率を継続的に高めていくことができます。

Fullstarを導入することで、これまで人手に頼らざるを得なかったオンボーディング業務の多くを自動化し、カスタマーサクセスチームはより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

チュートリアル機能でオンボーディング工数を削減

チュートリアル機能は、ホリゾンタルSaaSのオンボーディング工数を劇的に削減します。チュートリアル機能は、システム画面上で「次へ」ボタンを押していくことで、実際の操作をステップバイステップで体験学習できるガイドです。

この機能がもたらすメリットは以下になります。

  • マニュアル不要の直感的な操作習得
    顧客は分厚いマニュアルを読み込む必要なく、実際の画面を操作しながら使い方をマスターできます。「習うより慣れよ」を地で行く体験は、学習のハードルを大幅に下げます。
  • 問い合わせ件数の削減:
    「初期設定の方法がわからない」「このボタンは何?」といった基本的な操作に関する問い合わせが大幅に減少します。これにより、カスタマーサクセス部門の工数が削減され、より複雑な課題を抱える顧客への対応に時間を割けるようになります。
  • サービス利用率の向上
    顧客が操作方法をスムーズに理解できることで、プロダクトの様々な機能を試すきっかけが生まれます。これまで使われていなかった機能の利用が促進され、顧客がプロダクトから得られる価値が最大化し、結果として定着化・解約率の低下に繋がります。

このように、FullstarはホリゾンタルSaaSが抱える「多様な顧客のオンボーディング」という最大の課題に対し、テクノロジーの力で明確な解決策を提供します。

まとめ

本記事では、ホリゾンタルSaaSの基本的な定義から、バーティカルSaaSとの違い、そしてビジネスを成功に導くためのカスタマーサクセス戦略までを多角的に解説しました。

ホリゾンタルSaaSの要点を改めて整理します。

  • 定義: 業界・業種を問わず、多くの企業に共通する業務課題を解決するSaaS。
  • 特徴: ターゲット市場が広く、高い拡張性を持つ一方で、競争が激しく、多様な顧客ニーズへの対応が課題となる。
  • バーティカルSaaSとの違い: ターゲット市場、プロダクト開発、営業、カスタマーサクセスのすべてのアプローチにおいて、「広く浅く」の戦略を取る点が異なる。
  • 成功の鍵: 多様な顧客を効率的に成功へ導くカスタマーサクセスが不可欠。特に「顧客セグメンテーション」と「テックタッチを駆使した効率的なオンボーディング」が重要となる。

幅広い顧客層を持つホリゾンタルSaaSにとって、いかにして顧客一人ひとりの成功体験を創出し、サービスの価値を継続的に感じてもらうかは、事業成長における永遠のテーマです。特に、顧客が最初につまずきがちな「オンボーディング」をいかにスムーズに実行できるかが、その後のLTVを大きく左右します。

【3分でわかる】Fullstar(フルスタ)概要資料

Fullstar概要資料

フォーム入力後、資料を閲覧できます。

無料プランで始める

書類不要!最低利用期間なし!
ずっと無料で使えるアカウントを発行

  1. TOP
  2. 製品
  3. Fullstar(フルスタ)
  4. media
  5. CSコラム
  6. ホリゾンタルSaaSとは?バーティカルSaaSとの違いや具体例をカスタマーサクセスの視点で解説