北米ではSaaSの普及とともにPLGを実践する企業が増加し、すでに新しい戦略として体系化しています。日本で有名なSlackやZoomもPLG戦略をとっており、PLGを取り入れたスタートアップ企業は目覚ましい勢いで成長していることも明らかです。しかし、日本ではまだまだこの考え方は浸透していません。
そこでこの記事では、PLGとはどういったものか、必要性や実践するために必要なことなどを紹介します。
PLGとは「Product-Led Growth(プロダクトレッドクロース)」の略語で、直訳すると「製品主導の成長」という意味になります。顧客の獲得やアダプションなどがプロダクトそのものに依存する「エンドユーザーを中心とした成長モデル」を指す言葉です。
簡単に言うと、マーケティングやサポートなど、営業に関するものをプロダクトの一部としてユーザーに提供する、「プロダクトがプロダクトを売る事業モデル」のことをPLGと呼びます。
PLGはSlack、Zoom、Dropboxなどが取り入れているモデルで、近年急速に成長しているスタートアップの共通戦略となっています。「営業がプロダクトを売るモデル」SLG(セールスレッドグロース)とは真逆の言葉です。
SLGは、主に以下の流れをとっています。
1.マーケティングをしてリードを獲得する
2.リードにアプローチをして商談化
3.受注・契約
4.ユーザーがプロダクトを開始
5.カスタマーサクセスが支援
SLGの場合、ユーザーは契約後に初めてプロダクトを触ることが多くなります。そのためSLGでは「営業がプロダクトの魅力や価値を伝える仕組み」となっています。
一方PLGの場合、プロダクトが価値や魅力を伝えます。企業は適切なタイミングで有料化や購入を促すだけです。
企業が新しいソフトウェアを取り入れる場合、今までは数か月~数年かかっていました。しかし昨今、エンドユーザーが自分でプロダクトを見つけて導入を決めるパターンが多くなり、ソフトウェアを取り入れるスピードは一気に加速しています。
それにあわせて、ソフトウェアをお試しとして無料で提供することも増えました。ユーザーは数回クリックをすればサービスが開始でき、価値を感じたら有料版へ移行するというモデルが主流となっています。
企業はその変化に順応する必要があります。切り替えるたびに商談をしていると、ユーザーが求めるスピード感についていけず、機会の損失につながりかねません。エンドユーザーが自分でプロダクトを見つけて採用できるようにすれば、営業コストの削減も可能です。
PLG実現のためには、エンドユーザーに素早くプロダクトを届け、すぐに価値を実感できる設計にすることが重要です。つまり無料で簡単に始められ、できるだけ早く有料に移ってもらえるようにします。
その過程に人はほぼ介入しません。ユーザーが無料プロダクトを利用したら、自発的に有料へと移行していく「プロダクトがプロダクトを売る状態」を目指します。
すぐに実践できるPLGの手法をふたつ紹介します。
ステップメールとは「会員登録や購入など一定のアクションをとったユーザーに対して、メールをスケジュールに沿って配信していく」というメールマーケティングの手法です。メールの内容はあらかじめ準備しておき、定型化します。
顧客が求める情報を適切なタイミングで送ることで、定期的な接点を持ち続け、プロダクトへの理解を深めてもらい、購入や有料プランへの移行を促します。
例えば、ウェルカムメール(前向きになる内容)→事例紹介(活用意欲をかき立てる)→使い方の案内メール(どんな活用ができるのか理解を深める)→プランアップ・購入を促す宣伝メール、といった形で順番に送り顧客の育成をおこないます。
チュートリアルを導入すれば、ユーザー自身で初期設定や運用の準備まで完了できます。企業は運用する段階で支援を開始すればよく、導入初期の支援を最小限に抑えられます。また多くの顧客にカスタマーサクセスの支援ができることもメリットです。
PLGはSaaSととても相性のよい戦略です。日本ではまだまだ浸透していないビジネスモデルですが、海外ではその有用性は明らかとなっており、成長する企業のメイン戦略となってきています。海外で躍進を続ける企業に遅れを取らないためにも、いち早く取り入れて、実行していきたいところ。これからのビジネス戦略を模索している場合は、PLGもぜひ取り入れてみてください。
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