SaaSビジネスの成長において、カスタマーサクセスと営業の違いを理解し、両者を適切に連携させることは極めて重要です。営業が新規顧客を獲得する「攻め」の役割なら、カスタマーサクセスは既存顧客の成功を支援し、LTV(顧客生涯価値)を高める「守り」と「育成」の役割を担います。両者は目的や追うべきKPI、具体的な業務内容が大きく異なりますが、その連携こそが事業成長の鍵を握ります。
本記事では、カスタマーサクセスと営業の明確な違いから、SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの重要性、そして両者が連携することで得られるメリットや成功のポイントまでを網羅的に解説します。
この記事は、特に以下のような課題やニーズをお持ちの方におすすめです。
このような課題をお持ちのBtoB SaaS企業の経営者、事業責任者の方に特におすすめとなっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
カスタマーサクセスと営業の最も根本的な違いは、顧客と向き合う時間軸と責任範囲にあります。営業は契約獲得までを、カスタマーサクセスは契約後の顧客の成功体験とそれに伴う事業貢献をミッションとします。この違いを理解することが、両者の役割を最適化する第一歩です。
営業部門の主な役割は、見込み顧客(リード)に対してアプローチし、自社の製品やサービスの価値を伝え、新規契約を締結することです。顧客との関係性は、契約成立が一つのゴールとなり、比較的短期的なものになりがちです。
一方、カスタマーサクセスとは、契約後の顧客に対して能動的に働きかけ、製品・サービスの活用を支援し、顧客が望む成果を実現する役割を担います。顧客が成功することで、サービスの継続利用や上位プランへのアップグレードが促進され、結果としてLTV向上に繋がります。そのため、顧客とは長期的で良好な関係(リレーションシップ)を築くことが求められます。
なぜ今、カスタマーサクセスが注目されているのでしょうか。その背景には、SaaSに代表されるサブスクリプションモデルの普及があります。従来の売り切り型ビジネスでは、初期の売上が重視されました。しかし、月額課金などのサブスクリリプションモデルでは、顧客にサービスを継続利用してもらわなければ、安定した収益を確保できません。
つまり、「契約」がゴールではなく、「契約後の継続的な成功」がビジネスの生命線となっています。顧客が製品をうまく活用できず、価値を感じられなければすぐに解約してしまいます。この「解約」を防ぎ、顧客に長くファンでいてもらうために、専門組織であるカスタマーサクセスの重要性が高まっています。
カスタマーサクセスと営業の違いをより具体的に理解するために、4つの主要な項目で比較してみましょう。両者の役割は完全に独立しているわけではなく、相互に連携し合うことで最大の効果を発揮します。しかし、それぞれの役割を明確にすることが組織運営の第一歩です。
項目 | カスタマーサクセス | 営業 |
---|---|---|
1. 目的 | 顧客の成功を通じたLTVの最大化 | 潜在顧客の新規契約獲得 |
2. 主なKPI | 解約率、オンボーディング完了率、アップセル・クロスセル率、NPS® | 新規契約数(受注数)、新規契約額(受注額)、商談化率 |
3. 業務内容 | オンボーディング支援、活用促進、契約更新、アップセル・クロスセル提案 | 見込み顧客の開拓、商談、提案、クロージング、契約手続き |
4. 求められるスキル | 課題発見力、共感力、伴走力、データ分析力、プロジェクトマネジメント能力 | 提案力、交渉力、課題ヒアリング力、コミュニケーション能力、行動力 |
カスタマーサクセスの最終目的は、顧客の成功体験を創出し、その結果としてLTVを最大化することです。顧客が製品を通じて事業を成長させることが、自社の長期的な利益に繋がるという考え方に基づきます。
対して、営業の目的はシンプルで、新規顧客との契約を獲得することにあります。市場におけるシェアを拡大し、事業の成長基盤となる新たな収益源を確保することがミッションです。
目的が異なるため、成果を測るKPIも大きく異なります。カスタマーサクセスは、解約率の低減や、既存顧客からの追加売上であるアップセル・クロスセル、顧客ロイヤルティを測るNPS®などを重視します。
一方、営業は新規契約数や受注総額といった、売上に直接関連する数値が主なKPIとなります。いかに多くの顧客を獲得したかが評価の主軸です。
カスタマーサクセスの業務は、契約直後の顧客へのオンボーディングから始まります。その後も定期的なミーティングやデータ分析を通じて活用を促進し、顧客のビジネス課題の解決をサポートします。契約更新の管理や、さらなる価値提供のためのアップセル提案も重要です。
営業の業務は、見込み顧客リストの作成やアプローチ、ニーズのヒアリング、製品デモ、提案書の作成、そして契約を締結するクロージングが中心となります。
どちらも営業力が求められることに変わりはありません。
その中でも、カスタマーサクセスには、顧客の潜在的な課題を見つけ出し、解決策を提示する課題発見力や、顧客に寄り添い、長期的な関係を築く伴走力が求められます。データに基づいた客観的な分析能力も不可欠です。
対して営業には、顧客の課題に対して自社製品がいかに貢献できるかを分かりやすく伝える提案力や、条件を詰めて契約をまとめる交渉力が強く求められます。目標達成に向けた強いコミットメントと行動力も重要なスキルです。
SaaSビジネスの成功は、いかにして顧客に製品を長く使い続けてもらうかにかかっています。そのため、新規顧客を獲得する営業活動と同じ、あるいはそれ以上に、既存顧客を成功に導くカスタマーサクセスの活動が重要視されます。その理由は、SaaS特有のビジネスモデルと収益構造にあります。
多くのSaaS企業では、「The Model(ザ・モデル)」と呼ばれる営業プロセスモデルを採用しています。これは、マーケティング、インサイドセールス(内勤営業)、フィールドセールス(外勤営業)、そしてカスタマーサクセスという4つの部門が連携し、顧客獲得から成功までを分業体制で支援する考え方です。
このモデルにおいて、カスタマーサクセスは顧客のLTVを最大化するという、収益サイクルの最終かつ最も重要な部分を担います。営業が獲得した顧客を確実に成功へと導き、次の売上(契約更新、アップセル)に繋げる役割が期待されます。
SaaSビジネスでは、CAC(顧客獲得コスト)をLTVが上回って初めて利益が生まれます。つまり、LTVを高めることが事業成長の絶対条件です。
カスタマーサクセスは、顧客の成功を支援することでサービスの継続利用を促し、LTVの根幹を支えます。さらに、顧客との信頼関係を基にアップセルやクロスセルを提案することで、LTVを積極的に向上させることができます。具体的なLTV向上施策については、別の記事でも詳しく解説しています。
サブスクリプションビジネスにおいて、解約率は事業の成長を阻害する最大の要因です。「バケツの穴」に例えられるように、いくら新規顧客(水)を増やしても、穴(解約)が大きければ収益(溜まった水)は増えません。
カスタマーサクセスは、顧客が製品の価値を実感できるよう能動的に支援し、解約の兆候を早期に察知して対策を講じることで、この「穴」を最小限に食い止める役割を担います。解約率をわずか数パーセント改善するだけで、将来の収益に大きなインパクトを与えることができます。
カスタマーサクセスと営業は、それぞれ異なるミッションを持っていますが、両者が対立するのではなく、密に連携することで企業は大きな相乗効果を得ることができます。この連携は、単なる業務効率化に留まらず、顧客満足度の向上と事業全体の成長に直結します。
連携の最大のメリットは、顧客に関する情報が一元化され、解像度が飛躍的に高まることです。営業は、契約前の商談で顧客が抱えていた課題や期待値を最も深く理解しています。この情報をカスタマーサクセスへ正確に引き継ぐことで、契約後のオンボーディングをスムーズに開始でき、顧客の期待とのズレ(ギャップ)を防ぎます。
顧客が「契約前に聞いていた話と違う」と感じることは、不満や解約の大きな原因となります。営業からカスタマーサクセスへスムーズな情報連携が行われることで、顧客は一貫したサポートを受けられていると感じ、信頼感が高まります。これが結果的に早期の解約率低下に繋がるのです。
カスタマーサクセスは、日々のコミュニケーションを通じて顧客のビジネス状況や新たな課題を最も把握しやすい立場にいます。顧客の事業が成長し、新たなニーズが生まれた際に、上位プラン(アップセル)や関連サービス(クロスセル)が最適な解決策となるケースは少なくありません。
この機会を捉え、カスタマーサクセスが営業部門へ情報共有することで、営業は最適なタイミングで効果的な提案を行えます。このような連携によって、既存顧客からの収益を最大化し、LTV向上を加速させることが可能です。
顧客と最も長期的に接するカスタマーサクセスのもとには、製品やサービスに対する日々のフィードバックや要望が数多く集まります。これらは、開発チームにとって非常に価値のある「顧客の声」です。
また、営業部門が「特定の機能がないために失注した」といった情報と、カスタマーサクセスが集めた「既存顧客が求めている機能」の情報を突き合わせることで、より市場のニーズに即した開発の優先順位を判断できます。このように、両部門からの情報を統合・分析することで、製品やサービスの質を継続的に改善していくことができます。
カスタマーサクセスと営業の連携が重要である一方、その実現は容易ではありません。両部門の目的やKPIが異なるため、時に利害が対立することもあります。成果を出すためには、意識的な仕組みづくりとコミュニケーションの活性化が不可欠です。
両部門の連携を促す最も効果的な方法は、共通の目標、あるいは連携を評価する指標を設けることです。例えば、営業のKPIに「カスタマーサクセスへ引き継いだ顧客のオンボーディング完了率」を加えたり、カスタマーサクセスのKPIに「営業と連携したアップセル金額」を含めたりすることが考えられます。
最終的なゴールであるKGIとして、会社全体のLTVや売上目標を共有し、各部門のKPIがその達成にどう貢献するのかを明確にすることが、部門間の壁を越えた連携が実現できます。
連携の基本となるのは、正確かつタイムリーな情報共有です。CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)ツールを活用し、顧客情報を一元管理するプラットフォームの構築がおすすめです。
特に、営業からカスタマーサクセスへの引き継ぎ時には、以下の情報を漏れなく伝えるルールを設けることが重要です。
これらの情報が資産として蓄積されることで、担当者が変わっても一貫した顧客対応が可能になります。
ツールによる情報共有だけでなく、顔を合わせた定期的なコミュニケーションの場を設けることも重要です。週次や月次での定例ミーティングを開催し、成功事例や課題となっている顧客について情報交換を行います。
お互いの業務内容や課題への理解が深まることで、自然と協力的な関係が生まれます。時には合同で顧客を訪問するなど、現場レベルでの交流を促進することも、信頼関係の構築に繋がります。
カスタマーサクセス部門を立ち上げ、活動を本格化させていくと、「担当者によって対応の質がバラバラ」「顧客が増えてきて、手が回らない」といった課題に直面します。こうした課題を解決し、カスタマーサクセス活動を効率化・高度化させるのがテックタッチツール「Fullstar」です。
Fullstarとは、自社のWebサービスやソフトウェア上に、操作ガイドやチュートリアル、アンケートなどをノーコードで作成・表示できるツールです。
Fullstarで実現する効率的なカスタマー-サクセス活動
プロダクト上でチュートリアルを実装することで、カスタマーサクセスのオンボーディング工数を削減します。これまで担当者が個別に行っていた基本的な操作案内を自動化できるため、担当者はより活用提案や関係構築といった、人にしかできない業務に集中できます。また、顧客の利用状況をデータで可視化できるため、つまずいている箇所を特定し、データに基づいた客観的なアプローチが可能になり、活動の属人化を防ぎます。
顧客のセルフオンボーディングを促進し、カスタマーサクセスチームの生産性を高めることができます。データに基づいたアプローチをすることで、解約率の低下とLTVの最大化に貢献します。
関連記事:カスタマーセールス」を解説!カスタマーサクセスから派生した営業型CSの概念と役割とは
本記事では、カスタマーサクセスと営業の違いについて、目的、KPI、業務内容、求められるスキルという4つの観点から詳しく解説しました。また、SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの重要性、そして両者が連携することで得られるメリットと、そのための具体的なポイントを紹介しました。
両者の役割を正しく理解し、組織として連携を強化していくことが、これからのSaaSビジネスにおける持続的な成長を実現する上で不可欠と言えるでしょう。
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