SaaSビジネスにおける重要指標であるARPAは、1アカウントあたりの平均収益を示し、事業の健全性や成長性を測る上で欠かせません。特にサブスクリプションモデルにおいては、既存顧客からの収益をいかに最大化するかが事業成長の鍵となり、そのためにARPAの向上が求められます。
本記事では、ARPAの基本的な定義や計算方法から、カスタマーサクセス担当者が明日から実践できる具体的なARPA向上施策までを網羅的に解説します。
この記事は、以下のような課題を持つ方に特におすすめです。
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目次
SaaSビジネスの成長戦略を語る上で、ARPA(Average Revenue Per Account) は避けて通れない重要な経営指標(KPI)です。ARPAを正しく理解し、モニタリングすることで、自社のビジネスの健全性を測り、より効果的な成長戦略を描くことが可能になります。本セクションでは、ARPAの基本的な定義から、類似指標との違いまでを詳しく解説します。
ARPAとは、「1アカウントあたりの平均収益」 を示す指標です。英語の「Average Revenue Per Account」の頭文字を取ったもので、一般的に「アープエー」あるいは「アルパ」と読まれます。
特に、1社が複数のユーザーIDを契約するBtoBのSaaSビジネスにおいて、企業単位での収益性を測るために用いられます。ARPAは通常、MRR(月次経常収益)やARR(年次経常収益)といった収益全体を、総アカウント数で割ることで算出され、月次または年次で追跡されます。
この数値を見ることで、自社の顧客アカウントが平均していくらの収益をもたらしているのかを正確に把握できます。
SaaSビジネスにおいてARPAが重要視される理由は、主に以下の3点に集約されます。
ARPAとしばしば混同される指標に、「ARPU(アープ)」と「ARPPU(アープ)」があります。これらの違いを理解することは、データを正しく読み解く上で非常に重要です。
指標 | 正式名称 | 対象 | 主な利用シーン |
---|---|---|---|
ARPA | Average Revenue Per Account | 1アカウント(企業・組織) | BtoB SaaS、法人向けサービス |
ARPU | Average Revenue Per User | 1ユーザー | BtoCサービス(携帯キャリア、SNS、ゲームアプリなど) |
ARPPU | Average Revenue Per Paid User | 1課金ユーザー | フリーミアムモデルのサービス(一部のユーザーのみが課金) |
BtoBのSaaSビジネスでは、1つのアカウント(企業)が複数のユーザーを抱えることが一般的です。そのため、ユーザー単位のARPUではなく、アカウント単位のARPAを見ることで、顧客企業全体の収益性をより正確に把握することができるのです。
ARPAの重要性を理解した次に、その具体的な計算方法と、算出された数値をどのようにビジネスに活かしていくべきかを見ていきましょう。計算式自体はシンプルですが、その数値をどう解釈し、アクションに繋げるかが重要です。このセクションでは、具体的な計算シミュレーションを交えながら、ARPA分析のポイントを解説します。
ARPAは、以下のシンプルな計算式で算出できます。
ARPA = 特定期間の総収益(MRRまたはARR) ÷ 期間内の総アカウント数
例えば、ある月のMRRが500万円で、その月の総アカウント数が100社だった場合、月次のARPAは「500万円 ÷ 100社 = 5万円」となります。
より具体的にイメージするために、あるSaaS企業の例で考えてみましょう。
【前提条件】
Step 1: MRR(月次経常収益)の計算
まず、すべてのプランの収益を合計してMRRを算出します。
Step 2: 総アカウント数の計算
次に、契約しているすべてのアカウント数を合計します。
Step 3: ARPAの計算
最後に、算出したMRRと総アカウント数を使ってARPAを計算します。
この結果、このSaaS企業のARPAは月額5万円であることがわかります。
算出したARPAは、ただ全体の平均値を見るだけでは不十分です。より深い洞察を得るためには、以下の点に注意して分析を行いましょう。
チャーンを防ぐためには、解約の兆候を早期に察知することが不可欠です。ログイン頻度の低下や、主要機能の利用率減少といったデータは、解約の危険信号です。こうしたデータを基に顧客の状態を可視化する「ヘルススコア」の仕組みを導入し、スコアが悪化した顧客に対しては、能動的にアプローチして課題をヒアリングし、解決策を提示することが求められます。
顧客のニーズや市場の変化に合わせて、料金プランを定期的に見直すこともARPA向上のためには重要です。例えば、多くの顧客が特定の機能の追加を求めている場合、その機能を上位プランにのみ搭載することで、アップセルを自然に促すことができます。
また、単なる機能の追加だけでなく、「サポート体制の手厚さ」や「コンサルティングの提供」といった付加価値でプランに差をつける「価値ベースの価格設定(Value-Based Pricing)」も有効なアプローチです。顧客が支払う価格と、それによって得られる価値が見合っていると感じられるような、説得力のある料金体系を設計しましょう。
オンボーディングとは、新規顧客が製品・サービスをスムーズに導入し、その価値を早期に実感できるように支援するプロセスです。この初期段階で顧客がつまずいてしまうと、製品を十分に活用できず、結果として早期解約やアップセル機会の損失に繋がってしまいます。
効果的なオンボーディングを実現するためには、
といった取り組みが重要です。顧客が「このツールがあれば成功できる」という確信を初期段階で持てるように支援することが、将来のARPA向上への確かな一歩となります。
関連記事:オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説
カスタマーサクセスツールは、顧客のつまずきを解消し、スムーズなツール活用を支援することで、この課題を解決に導きます。顧客がセルフサービスで疑問を解消し、自走できるようになれば、カスタマーサクセス担当者はより付加価値の高い提案活動に集中できるようになり、結果としてARPA向上に繋がっていきます。
弊社の提供するカスタマーサクセスツール「Fullstar」は、まさにこの「ツールの活用定着」を強力に支援し、ARPA向上に貢献します。
このように、「Fullstar」を活用することで、オンボーディングの質を高めてチャーンを抑制しつつ、データに基づいた効果的なアップセル・クロスセルを仕掛けることが可能となり、ARPAの継続的な向上を実現します。
関連記事:【2025年最新】カスタマーサクセスツール比較20選!おすすめとタイプ別まとめ
本記事では、SaaSビジネスにおける重要指標であるARPAについて、その基本的な定義から計算方法、そしてカスタマーサクセスが実践すべき具体的な向上施策までを網羅的に解説しました。
ARPAは、単なる経営指標の一つではありません。それは、自社の製品・サービスが顧客にどれだけの価値を提供できているかを映し出す「鏡」のようなものです。ARPAの数値を正しく理解し、その向上を目指すことは、顧客の成功を追求する活動そのものと言えます。
今回ご紹介した5つの向上施策(アップセル・クロスセル、エンゲージメント向上、チャーンレート低減、料金プラン最適化、オンボーディング強化)に日々の業務で取り組み、その効果をARPAという指標で定点観測していくことが、持続的な事業成長の鍵となります。
そして、これらの施策を効率的に実行するためには、「Fullstar」のようなカスタマーサクセスツールの活用が非常に有効です。顧客のツール活用を定着させ、成功体験を創出することが、結果としてARPAの向上、ひいてはLTVの最大化に繋がります。ぜひ、本記事の内容を参考に、自社のARPA向上に向けた次の一歩を踏み出してください。
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