ARPAとは?計算方法から向上させる5つの方法まで徹底解説

ARPAとは?計算方法から向上させる5つの方法まで徹底解説


SaaSビジネスにおける重要指標であるARPAは、1アカウントあたりの平均収益を示し、事業の健全性や成長性を測る上で欠かせません。特にサブスクリプションモデルにおいては、既存顧客からの収益をいかに最大化するかが事業成長の鍵となり、そのためにARPAの向上が求められます。

本記事では、ARPAの基本的な定義や計算方法から、カスタマーサクセス担当者が明日から実践できる具体的なARPA向上施策までを網羅的に解説します。

この記事は、以下のような課題を持つ方に特におすすめです。

  • ARPAという言葉は知っているが、ARPUとの違いや重要性を正確に説明できない
  • ARPAを改善したいが、何から手をつければ良いかわからない
  • カスタマーサクセスの活動が、売上にどう貢献しているか可視化したい
カスタマーサクセスツール

カスタマーサクセス組織の効率化・工数削減をお考えの方へ

導入実績1,900社以上!オンボーディング工数90%削減・解約率低減・ヘルススコア向上に使える!
SaaSのカスタマーサクセスの工数削減の方法と事例を解説!

詳細を見てみる >

目次

 ARPAとは?SaaSビジネスの成長を測る重要指標


SaaSビジネスの成長戦略を語る上で、ARPA(Average Revenue Per Account) は避けて通れない重要な経営指標(KPI)です。ARPAを正しく理解し、モニタリングすることで、自社のビジネスの健全性を測り、より効果的な成長戦略を描くことが可能になります。本セクションでは、ARPAの基本的な定義から、類似指標との違いまでを詳しく解説します。

 ARPAの基本的な定義(Average Revenue Per Account)

ARPAとは、「1アカウントあたりの平均収益」 を示す指標です。英語の「Average Revenue Per Account」の頭文字を取ったもので、一般的に「アープエー」あるいは「アルパ」と読まれます。

特に、1社が複数のユーザーIDを契約するBtoBのSaaSビジネスにおいて、企業単位での収益性を測るために用いられます。ARPAは通常、MRR(月次経常収益)やARR(年次経常収益)といった収益全体を、総アカウント数で割ることで算出され、月次または年次で追跡されます。

この数値を見ることで、自社の顧客アカウントが平均していくらの収益をもたらしているのかを正確に把握できます。

 なぜ今、SaaSビジネスでARPAが重要視されるのか

SaaSビジネスにおいてARPAが重要視される理由は、主に以下の3点に集約されます。

  • 事業の健全性と成長性の可視化
    新規顧客獲得コスト(CAC)が高騰する市場において、既存顧客から得られる収益の最大化は事業継続の生命線です。ARPAが上昇傾向にあれば、顧客単価が向上しており、事業が健全に成長している証拠となります。逆にARPAが下降している場合は、単価の低い顧客層が増えている、あるいはダウングレードや一部解約が発生しているといった危険信号と捉えることができます。
  • LTV(顧客生涯価値)向上の鍵となる
    LTV(Life Time Value)は、一人の顧客が取引期間中にもたらす総利益を示す指標です。ARPAの向上は、LTVの向上に直結します。アップセルやクロスセルによってARPAが高まれば、それだけ顧客一人ひとりが長期的に企業へもたらす価値も大きくなり、持続的な成長基盤を築くことができます。
  • 効率的な事業戦略の立案
    ARPAを顧客セグメント別(例:プラン別、業種別、企業規模別)に分析することで、「どの顧客層が最も収益性が高いのか」を特定できます。これにより、リソースを最も効果的なセグメントに集中させる、いわゆる「選択と集中」の戦略を取ることが可能になります。営業やマーケティング、カスタマーサクセスの戦略をデータドリブンで決定するための重要なインプットとなります。

 ARPU、ARPPUとの明確な違いとは?

ARPAとしばしば混同される指標に、「ARPU(アープ)」と「ARPPU(アープ)」があります。これらの違いを理解することは、データを正しく読み解く上で非常に重要です。

指標 正式名称 対象 主な利用シーン
ARPA Average Revenue Per Account 1アカウント(企業・組織) BtoB SaaS、法人向けサービス
ARPU Average Revenue Per User 1ユーザー BtoCサービス(携帯キャリア、SNS、ゲームアプリなど)
ARPPU Average Revenue Per Paid User 1課金ユーザー フリーミアムモデルのサービス(一部のユーザーのみが課金)
  • ARPU (Average Revenue Per User)
    ARPUは「1ユーザーあたりの平均収益」です。BtoCのサービス、例えば携帯電話キャリアやSNSなどで主に用いられます。アカウント(企業)ではなく、個人ユーザー一人ひとりに焦点を当てた指標です。
  • ARPPU (Average Revenue Per Paid User)
    ARPPUは「1課金ユーザーあたりの平均収益」を指します。無料プランと有料プランが存在する「フリーミアムモデル」のサービスで特に重要視されます。無料ユーザーを含めず、実際に支払いをしているユーザーのみを対象に平均単価を算出するため、ARPUよりも高くなる傾向があります。

BtoBのSaaSビジネスでは、1つのアカウント(企業)が複数のユーザーを抱えることが一般的です。そのため、ユーザー単位のARPUではなく、アカウント単位のARPAを見ることで、顧客企業全体の収益性をより正確に把握することができるのです。

関連記事:ARPUとは?計算方法と向上施策を徹底解説!

 ARPAの計算方法と見るべきポイント


ARPAの重要性を理解した次に、その具体的な計算方法と、算出された数値をどのようにビジネスに活かしていくべきかを見ていきましょう。計算式自体はシンプルですが、その数値をどう解釈し、アクションに繋げるかが重要です。このセクションでは、具体的な計算シミュレーションを交えながら、ARPA分析のポイントを解説します。

 基本的な計算式:「総収益 ÷ 総アカウント数」

ARPAは、以下のシンプルな計算式で算出できます。

ARPA = 特定期間の総収益(MRRまたはARR) ÷ 期間内の総アカウント数

  • MRR(Monthly Recurring Revenue): 月次経常収益。毎月決まって得られる収益のことです。月次のARPAを算出する際に使用します。
  • ARR(Annual Recurring Revenue): 年次経常収益。MRRを12倍したもので、年間で決まって得られる収益を指します。年次のARPAを算出する際に使用します。

例えば、ある月のMRRが500万円で、その月の総アカウント数が100社だった場合、月次のARPAは「500万円 ÷ 100社 = 5万円」となります。

 【具体例】SaaSビジネスにおけるARPA計算シミュレーション

より具体的にイメージするために、あるSaaS企業の例で考えてみましょう。

【前提条件】

  • プランA: 月額3万円、契約アカウント数 50社
  • プランB: 月額5万円、契約アカウント数 30社
  • プランC: 月額10万円、契約アカウント数 20社

Step 1: MRR(月次経常収益)の計算
まず、すべてのプランの収益を合計してMRRを算出します。

  • プランAのMRR: 3万円 × 50社 = 150万円
  • プランBのMRR: 5万円 × 30社 = 150万円
  • プランCのMRR: 10万円 × 20社 = 200万円
  • 合計MRR = 150万円 + 150万円 + 200万円 = 500万円

Step 2: 総アカウント数の計算
次に、契約しているすべてのアカウント数を合計します。

  • 総アカウント数 = 50社 + 30社 + 20社 = 100社

Step 3: ARPAの計算
最後に、算出したMRRと総アカウント数を使ってARPAを計算します。

  • ARPA = 500万円 ÷ 100社 = 5万円

この結果、このSaaS企業のARPAは月額5万円であることがわかります。

 ARPAを分析する際に注意すべき点

算出したARPAは、ただ全体の平均値を見るだけでは不十分です。より深い洞察を得るためには、以下の点に注意して分析を行いましょう。

  • セグメント別にARPAを比較する
    全社の平均ARPAだけでなく、顧客を特定の属性で区切った「セグメント」別にARPAを算出することが極めて重要です。例えば、前述のシミュレーションでは、全体のARPAは5万円でしたが、プランCの顧客のARPAは10万円です。このように、「料金プラン別」「業種別」「企業規模別」などでARPAを比較することで、どのセグメントが最も収益性が高いのか(いわゆる「優良顧客」は誰か)を特定できます。
  • 新規顧客と既存顧客を分けて分析する
    新規顧客のARPAと既存顧客のARPAを分けて算出することも有効です。もし新規顧客のARPAが既存顧客よりも低い傾向にあれば、営業戦略や価格設定に課題があるかもしれません。逆に、既存顧客のARPAが時間と共に上昇していれば、アップセルやクロスセルが機能している証拠であり、カスタマーサクセスの活動が成功していると評価できます。
  • 時系列で推移を追う
    ARPAは一度算出するだけでなく、月次や四半期、年次でその推移を定点観測することが重要です。ARPAの推移を見ることで、自社の価格戦略や製品開発、カスタマーサクセスの施策が顧客単価にどのような影響を与えているかを長期的な視点で評価できます。

 カスタマーサクセスが実践すべきARPAを向上させる方法


チャーンを防ぐためには、解約の兆候を早期に察知することが不可欠です。ログイン頻度の低下や、主要機能の利用率減少といったデータは、解約の危険信号です。こうしたデータを基に顧客の状態を可視化する「ヘルススコア」の仕組みを導入し、スコアが悪化した顧客に対しては、能動的にアプローチして課題をヒアリングし、解決策を提示することが求められます。

 ④ 料金プランの最適化

顧客のニーズや市場の変化に合わせて、料金プランを定期的に見直すこともARPA向上のためには重要です。例えば、多くの顧客が特定の機能の追加を求めている場合、その機能を上位プランにのみ搭載することで、アップセルを自然に促すことができます。

また、単なる機能の追加だけでなく、「サポート体制の手厚さ」や「コンサルティングの提供」といった付加価値でプランに差をつける「価値ベースの価格設定(Value-Based Pricing)」も有効なアプローチです。顧客が支払う価格と、それによって得られる価値が見合っていると感じられるような、説得力のある料金体系を設計しましょう。

 ⑤ オンボーディングの強化

オンボーディングとは、新規顧客が製品・サービスをスムーズに導入し、その価値を早期に実感できるように支援するプロセスです。この初期段階で顧客がつまずいてしまうと、製品を十分に活用できず、結果として早期解約やアップセル機会の損失に繋がってしまいます。

効果的なオンボーディングを実現するためには、

  • 導入初期のゴール(KGI/KPI)を顧客と共有する
  • 体系的なトレーニングプログラムを提供する
  • 顧客がいつでも疑問を解消できるサポート体制を整える

といった取り組みが重要です。顧客が「このツールがあれば成功できる」という確信を初期段階で持てるように支援することが、将来のARPA向上への確かな一歩となります。

関連記事:オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説

 ARPA向上の効果を最大化するカスタマーサクセスツール


カスタマーサクセスツールは、顧客のつまずきを解消し、スムーズなツール活用を支援することで、この課題を解決に導きます。顧客がセルフサービスで疑問を解消し、自走できるようになれば、カスタマーサクセス担当者はより付加価値の高い提案活動に集中できるようになり、結果としてARPA向上に繋がっていきます。

 カスタマーサクセスツール「Fullstar」で実現するオンボーディング強化とアップセル機会創出

弊社の提供するカスタマーサクセスツール「Fullstar」は、まさにこの「ツールの活用定着」を強力に支援し、ARPA向上に貢献します。

  • ・操作方法をナビゲーションする「チュートリアル機能」
    「Fullstar」を導入することで、お使いのSaaSプロダクト上に、操作ガイドやチュートリアルをノーコードで簡単に設置できます。これにより、顧客はマニュアルを読むことなく、実際の画面を操作しながら直感的に使い方を習得できます。これは、特に重要なオンボーディングのプロセスを効率化し、顧客の早期離脱を防ぐ上で絶大な効果を発揮します。
  • ・顧客セグメントに合わせた「お知らせ機能」
    顧客の利用状況や契約プランに応じて、最適な情報をポップアップで表示することも可能です。例えば、「特定の機能を頻繁に利用しているが、まだ上位プランの機能を使っていない顧客」に対してのみ、「〇〇機能を使えば、さらに業務が効率化できます」といったアップセルを促すメッセージを表示できます。これにより、画一的ではない、顧客一人ひとりに寄り添った提案が可能となり、アップセルの成功率を大幅に高めることができます。

このように、「Fullstar」を活用することで、オンボーディングの質を高めてチャーンを抑制しつつ、データに基づいた効果的なアップセル・クロスセルを仕掛けることが可能となり、ARPAの継続的な向上を実現します。

関連記事:【2025年最新】カスタマーサクセスツール比較20選!おすすめとタイプ別まとめ

 ARPAを正しく理解し、事業成長を加速させよう!

本記事では、SaaSビジネスにおける重要指標であるARPAについて、その基本的な定義から計算方法、そしてカスタマーサクセスが実践すべき具体的な向上施策までを網羅的に解説しました。

ARPAは、単なる経営指標の一つではありません。それは、自社の製品・サービスが顧客にどれだけの価値を提供できているかを映し出す「鏡」のようなものです。ARPAの数値を正しく理解し、その向上を目指すことは、顧客の成功を追求する活動そのものと言えます。

今回ご紹介した5つの向上施策(アップセル・クロスセル、エンゲージメント向上、チャーンレート低減、料金プラン最適化、オンボーディング強化)に日々の業務で取り組み、その効果をARPAという指標で定点観測していくことが、持続的な事業成長の鍵となります。

そして、これらの施策を効率的に実行するためには、「Fullstar」のようなカスタマーサクセスツールの活用が非常に有効です。顧客のツール活用を定着させ、成功体験を創出することが、結果としてARPAの向上、ひいてはLTVの最大化に繋がります。ぜひ、本記事の内容を参考に、自社のARPA向上に向けた次の一歩を踏み出してください。

【3分でわかる】Fullstar(フルスタ)概要資料

Fullstar概要資料

フォーム入力後、資料を閲覧できます。

無料プランで始める

書類不要!最低利用期間なし!
ずっと無料で使えるアカウントを発行

  1. TOP
  2. 製品
  3. Fullstar(フルスタ)
  4. media
  5. CSコラム
  6. ARPAとは?計算方法から向上させる5つの方法まで徹底解説