PQL(Product Qualified Lead)とは?~PLGを目指すSaaSの重要指標について~

PQL(Product Qualified Lead)とは?~PLGを目指すSaaSの重要指標について~

ユニコーン企業の多くがSaaS企業ということをご存知でしょうか?世界的にSaaS企業への期待が高まっており、今後日本でもSaaSを主軸とした企業が増加していくでしょう。SaaSビジネスを展開する上で重要な指標になるのが、“PQL”と呼ばれるものです。

そこで本記事では、「PQLとは何か」「PQLをどのように創出するのか」について、対概念であるMQL/SQLの説明を交えながら、詳しく紹介していきます。


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PLGとは

まずPLGとは「Product Led Growth」(プロダクトレッドグロース)の略語で、「プロダクト主導の成長」と呼ばれています。この考えは2016年に米国のベンチャーキャピタルであるOpenViewが唱えた成長戦略であり、同社のブログでは以下のように定義されています。

“Product led growth is a go-to-market strategy that relies on product features & usage as the primary drivers of customer acquisition, retention and expansion.”

「プロダクト主導の成長とは、プロダクトの機能と使い方を軸に、顧客獲得、顧客維持、顧客拡大を行う、市場参入戦略のこと。」

(参照: OverView Blog )

詳しくはこちらの記事でも紹介しておりますので、合わせてご覧ください。

https://fullstar.cloudcircus.jp/media/column/PLG

PQLとは

PQLとは、”Product Qualified Lead” の略語で、無料トライアルやフリーミアムを通してプロダクトの価値を体験したユーザーを指します。(参考: Refiner)
SaaS企業は、この基準を明確にすることで見込み度の高い顧客を獲得することができます。

PQLの設定例

PQLの説明としては上記になりますが、実際の例がないと理解しづらいところがあります。
実際に弊社の「Fullstar(フルスタ)」で定めているPQLを紹介します。Fullstarでは「チュートリアルの表示ユーザー数が30人以上」をPQLと定めています。FullstarはノーコードでSaaS画面上にチュートリアルが作成、表示ができるサービスです。プロダクトの価値を体験するためには実際にチュートリアルを作成し、表示を一定以上行っていただく必要があるので、上記をPQLと定めています。

※PQLの検討プロセス詳細は「PQL創出の流れ(Fullstar版)」で解説します。

PQLを含んだPLGでの顧客獲得プロセス

PLGでの顧客獲得のプロセスは、ざっくり4つに分けることができます。

  • 1. フリープランユーザー / デモユーザーを獲得
  • 2. プロダクトの活用促進
  • 3. 有料化
  • 4. バイラルによる拡散

①マーケティングでフリープランユーザー / デモユーザーを獲得

自社プロダクトを利用してもらうためには、PQLの前段階であるフリープラン/デモユーザーを獲得する必要があります。マーケティング活動でプロダクトの魅力を彼らに訴求し、まずはフリープランへの登録やデモ版の申し込みを促すことがユーザー獲得のカギになります。

②プロダクトを活用してもらう&フリープラン/デモユーザーのPQL化

フリープラン/デモユーザーをPQL化するためには、彼らにプロダクトを体験させ、価値を感じてもらうことが大切です。フリープラン/デモユーザーは必ずしもそのプロダクトの全機能を知っているとは限らないため、彼らの要望に対する活用支援を行い、体験価値を高めてもらうことがPQL化に繋がります。

③有料化

一定条件を満たしたフリープラン/デモユーザーはPQLとなり、彼らに対してテクノロジーを通したサポートを行っていきます。そしてPQLが有料化の手続きを行い、晴れて顧客を獲得することができます。

④バイラルによる拡散

PLGはマーケティング機能もプロダクトが担っています。そのためプロダクトの情報を受け取った人が口コミを別の人へ拡散することで、更なるユーザーを獲得することができます。



PLGでの顧客獲得プロセス

MQL/SQLとは

PQLを含んだ顧客獲得プロセスと対比されるのが、SLG型のMQL/SQLを含むプロセスです。ここで簡単に、SLG、MQL、SQLについてご紹介します。

・SLGとは

SLGとは、”Sales Lead Growth”の略語で、直訳すると「営業主体の成長」になります。プロダクトを販売する最終地点にセールス部門が介入するため、このように呼ばれています。

・MQLとは

MQLとは、”Marketing Qualified Lead”の略で、マーケティング部門がナーチャリングを通して創出したリードを指します。マーケ部門は、メールや無料版コンテンツ、ホワイトペーパーを通して、獲得したリードの購入意識を高めていきます。そこで見込み度が高くなったリードがMQLになります。

・SQLとは

SQLとは、”Sales Qualified Lead” の略で、インサイドセールス部門がアプローチを行い、見込み顧客と判断したリードをいいます。アプローチを通して、プロダクトへの関心が高いと判断した場合、MQLはSQLとなります。

・MQL/SQLを含んだSLGでの顧客獲得プロセス

SLGでの顧客獲得プロセスは主に以下の5ステップになります。

  • 1. マーケティング部門によるリード獲得
  • 2. マーケティング部門のナーチャリングによるリードのMQL化
  • 3. アプローチを行ったインサイドセールス部門によるリードのSQL化及び、SQLとの商談化
  • 4. セールス部門によるSQLとの商談
  • 5. 受注

PLGとの大きな違いは、有料化するための営業提案をしているかどうかです。PLGでは、活用支援として人力を伴う場合がありますが、基本的にプロダクトの営業提案は行いません。例えば、無料で利用しているZoom社やSlack社の社員から営業の提案を受けたことはあるでしょうか?恐らく、読者の皆様で首を横に振る方が多いと思います。それに対してSLGは、見込み顧客に対して営業提案を行い、受注に繋げます。

PQLを創出するための流れ

・無料プランや、デモプランを用意する

まずは、ユーザーが誰でもそのプロダクトを使えるように、無料プランやデモプランを設定する必要があります。ユーザーがプロダクトに興味を持ちやすく、登録しやすいような設計であるとフリープラン/デモユーザー獲得に大きく貢献できることでしょう。

・PQLとする基準を決める

「何を以てPQLと見なすのか」をあらかじめ設定しておきます。例えば、過去に有料化したユーザーの傾向を分析し、「フリーユーザーの時点でどれくらい活用できていればいいのか」を考えることがPQL基準の決定要因になる可能性があります。もし過去のデータがない場合は、カスタマージャーニーマップなどの作成及び仮説の立案が有効になるでしょう。

ユーザーが無料プラン導入から有料化までにどのようなアクションを取り、どのような心理状況になるのかを描くことで、想像を超えたアイデアが浮かぶこともあります。それに基づいて仮説を立てることで、基準が定まるかもしれません。

・ユーザーの活用度を上げる

設定したPQLの基準を達成できるように、ハイタッチ(※1)やテックタッチ(※2)などを用いて、顧客の活用度を上げていく活動を行います。ただ、PQLはフリーユーザーやデモユーザーとなるので、ハイタッチで1社1社手厚くフォローしていくのは難しい場合が多いです。なるべくテックタッチを活用し、ユーザー自身が活用できる仕組みを作ることが重要です。

※1: 人を用いて顧客の活用支援を行うこと

※2: テクノロジーを活用して顧客の活用支援を行うこと

・顧客の活用状況を分析する

どれくらいの頻度でログインをしているのか、どの機能をどれくらい使っているのかなど、顧客の活用状況を分析します。PQLの基準を満たしたユーザーにフラグを立てられるような仕組みがあれば、より効率的にテックタッチでアプローチすることができます。

・PQLとなった顧客に有料/上位プランを案内する

PQLの基準を満たした顧客に対して、メールやDMを通して有料/上位プランを案内します。この時のPQLはプロダクトへの関心度が高いため、ハイタッチで営業提案を行わずして、有料化へと進めることができます。



PQLを創出するための流れ

PQLを創出するための流れ(Fullstar版)

・無料プランや、デモプランを用意する

Fullstarは2021年4月にリリースし、その当時から無料プランを用意しております。無料プランをリリース時から採用するか否かは、プロダクト、ビジネスモデル、会社の状況、市況、競合のプライシングと、様々な要素を考慮し、検討します。Fullstarは「世界標準のマーケティングエコシステムをつくる」という会社のビジョンから、世界中誰でも使える状態を目指しているので、無料プランをリリース時から用意しております。

・PQLとする基準を決める

FullstarでのPQLは、「有料化しているユーザー」「無料でも長期的に利用しているユーザー」の特徴を分析し、決定しました。

分析にあたり、一定の母数が必要になりますが、Fullstarでは300社を超えたあたりで分析を行いました。プロダクトによりますが、無料プランの登録後、しっかり利用をしているユーザーが一定数以上いないと、分析できるだけの材料が揃わないので、100社以上の母数は必要になると思います。

・ユーザーの活用度を上げる

Fullstarでは以下のテックタッチ施策を通し、活用度を上げています。

①ステップメール、トリガーメール

サインアップを起点としたメールや特定アクションに応じたメールの配信を自動的に行っております。(BowNowというMAツールで仕組み構築可能です)

②チュートリアル

ユーザーがプロダクトを素早く活用できるように、機能の説明等を画面上で行っております。(Fullstarでノーコードで作成可能です)

③チャットボット

ユーザーの問題に対し、会話形式で自動的に回答を表示し、活用を進められるようにしております。(IZANAIというチャットボットツールで実装可能です)

④動画学習サイト

動画で機能について学習できるサイトを構築しております。(ActiBookで構築可能です)

弊社の開発しているツールばかりで恐縮ですが、PQLを創出するためのテックタッチ施策はほぼ網羅的に揃えておりますので、ご活用ください。(すべて無料プランから利用できます)

・顧客の活用状況を分析する

FullstarではBIツールを利用し、詳細の分析を行っております。分析を行うには、適切な目的と仮説構築が必要です。まずはプロダクトのDAU,MAUを把握したり、どの機能がよく利用されているか可視化をしたりできると良いです。その後、ロイヤルカスタマーや解約顧客の情報を紐づけて、詳細の分析を行っていきます。

まとめ

この記事では、MQL/SQLと比較しながら、PQLの意味とその創出方法についてご紹介しました。PQLはSaaSビジネスにおいて重要な指標であることは確かですが、まだ日本ではあまり浸透していない概念です。今のうちから基準を策定することが、今後拡大していくSaaS市場で成長を続けるカギになることでしょう。


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