NRRとは?計算方法、SaaSビジネスでの重要性と改善方法を解説

NRRとは?計算方法、SaaSビジネスでの重要性と改善方法を解説

「NRR(売上維持率:Net Revenue Retention)」は、SaaSビジネスの持続的な成長に欠かせない指標です。NRRは新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客からの収益をいかに維持・拡大できているかを示しており、サブスクリプション型ビジネスの健全性を測る重要な指針として重視されています。

また、NRRは端的に表すと「(月初MRR+増加MRR-減少MRR)÷月初MRR」で表されます。つまりNRRを改善するには「増加MRRを増やす」か「減少MRRを減らす」の2軸で打ち手を考えるのが良いです。

本記事では、NRRの基本からARR・MRRとの違い、計算方法、改善に向けた実践的アプローチまで、わかりやすく解説します。

目次

NRRとは?(売上維持率)

NRR(Net Revenue Retention/売上維持率)とは、既存顧客から得られる収益がどれだけ維持・拡大されているかを示す指標です。アップセルや解約の影響を反映するため、SaaSビジネスにおいて顧客の健全度や将来の売上見通しを把握するうえで欠かせません。

以下では、NRRと混同されやすい「ARR」と「MRR」との違いや、他の重要指標である「GRR」との関係性について解説します。

ARR・MRR・NRRの違い

ARR・MRR・NRRはいずれもSaaSビジネスで重要な収益指標ですが、それぞれ役割が異なります。

ARR(Annual Recurring Revenue)

ARRは、年間契約ベースで発生する継続的な収益を表します。年単位での成長や収益予測に適しており、主にエンタープライズ向けの長期契約型SaaSで用いられる指標です。

MRR(Monthly Recurring Revenue)

MRRは、月額契約などで発生する定期収益を示す指標です。月ごとの売上推移を把握しやすく、短期間での変化や改善効果の測定に適しています。中小SaaS企業で重視される傾向があります。

NRR(Net Revenue Retention)

既存顧客の契約がどの程度維持・拡大・縮小されているかを示す指標です。つまり、ARRやMRRが「売上の量」だとすれば、NRRは「その売上をどれだけ維持できているか」を示す質の指標といえます。

参考:MRRとは?ARRやNRRとの違い、SaaSビジネスでの重要性、算出方法やMRRを改善する具体的な手法など分かりやすく解説

NRRとGRRの関係性

GRR(Gross Revenue Retention/総収入維持率)は、既存顧客による収益がどれだけ維持されているかを示す指標です。アップセルやクロスセルは含まれないため、解約やダウングレードの影響のみを反映します。

売上の「成長」は考慮せず、「顧客が離れていないか」「サービスの価値を感じ続けているか」といった顧客維持の安定性のみを評価する点が特徴です。一方、NRRはアップセル・クロスセルも加味されるため、サービスの拡張性や成長性をより包括的に把握するのに適しています。

両者はどちらもSaaSビジネスにおける顧客の継続性を測る指標ですが、焦点が大きく異なるのがポイントです。

また、似た指標にLRV(顧客生涯価値)がありますが、これは1人の顧客が企業にもたらす総利益を示す指標で、GRRやNRRとは異なる視点で顧客の価値を評価します。

NRRがSaaSビジネスで重要視される理由

SaaSビジネスの普及に伴って重要度が増している「NRR」ですが、なぜそこまで重要視されているのでしょうか?その背景にある主な2つの理由を紹介します。

サブスクリプションビジネスが成り立つかどうかの判断軸になるから

SaaSビジネスにおけるサブスクリプションモデルでは、新規顧客の獲得にかかるコストが高く、契約時点では利益を生みづらいという特徴があります。

そのため、既存顧客が継続してサービスを利用し、収益が安定して維持・成長しているかを示すNRRは、ビジネスが成立しているかどうかの重要な判断材料となります。こうした背景から、SaaSビジネスの浸透に伴い、NRRに注目する必要性が高まっているのです。

別事業への投資可否などの判断軸になるから

NRRは、既存顧客からの収益がどれだけ維持・拡大されているかを示すため、新たな事業投資の判断材料としても有効です。NRRが低ければ、まずは解約防止や新規顧客の獲得に注力し、安定収益の基盤を築く必要があります。

一方でNRRが高ければ、既存ビジネスが好調であることを意味し、その収益を原資として新規プロダクト開発や他事業への投資を進めやすくなります。将来的な投資に充てることで、ビジネスの選択肢が大きく広がります。

NRRの計算方法・計算式

NRRの概要について詳しく解説しましたが、具体的にどのように算出すればいいのでしょうか?以下ではNRRの計算方法を紹介します。

NRRの計算の具体例

まず、基本的な NRR(Net Revenue Retention/売上継続率) の計算式は、以下の通りです。

NRR(%) = {月初のMRR + Expansion MRR - Contraction MRR - Churn MRR} ÷ 月初のMRR × 100

また、それぞれの項目は以下のことを指します。

  • 月初のMRR:その月の初め時点での既存顧客からの月次経常収益
  • Expansion MRR:アップセルやクロスセルによって増加した収益
  • Contraction MRR:ダウングレードなどで減少した収益
  • Churn MRR:解約によって失われた収益

たとえば、ある月の初めに既存顧客から得られるMRRが100万円だったとします。この月にアップセルによって20万円の追加収益(Expansion MRR)があり、一方でダウングレードで5万円(Contraction MRR)、解約で10万円(Churn MRR)の収益が失われた場合、NRRの計算式は次の通りです。

{(100+20)-(5+10)} ÷ 100 = 1.05(105%)

NRRが100%以上であれば、事業は既存顧客だけでも成長している状態といえます。そのため上記の結果では、既存顧客基盤のみで収益が5%増加しており、プロダクトの提供価値が高く、顧客満足度も良好であることがわかります。

NRRの目安・事例

SaaSビジネスにおいて、NRR(売上継続率)は「100%以上」がひとつの基準とされています。一般的に成長している企業における数値は100〜115%程度で、成長著しい企業では120%を超えるケースもあります。先述したように、100%を上回ると既存顧客だけで売上が成長していると判断可能です。

NRRの高さがSaaSビジネスの安定性と拡張性を裏付ける好例として、CXプラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドの例が挙げられます。同社は、2024年度第2四半期においてNRR107.6%を達成。既存顧客の利用拡大が売上成長に大きく寄与しているほか、ARRは前年同期比21.9%増、連結売上も27.3%増と好調です。

参考:株式会社プレイド 2024年9⽉期 第2四半期 決算説明資料

NRRの改善方法・向上方法

NRRについて理解できたと思いますが、実際にはどのように改善・向上させればいいのでしょうか?

NRRを改善するには、NRRの計算式から「増加MRRを増やす」「解約・減少MRRを下げる」の2軸になります。その観点で、NRRを改善・向上するために良く実施される方法3つについて解説します。

エクスパンションMRRを増加させる

NRRを改善・向上するには、Expansion MRR(既存顧客からの追加収益)の増加が欠かせません。Expansion MRRを増やすには、顧客が自然にアップグレードしたくなる仕組みづくりが重要です。

※弊社データより抜粋

ここ数年、追加発注(エクスパンションMRR)の割合が毎年50%を超える水準で安定しているクラウドサーカス株式会社では、新規獲得と並行し、顧客MRRに基づいてセグメントを分け、KPIと担当者を最適に設計するといった取り組みを行っています。

さらに、顧客の成長レベルに応じた商材提案や、オンボーディング期間の短縮によって早期に成果を実感させる工夫を通じて、継続的なアップセル・クロスセルを実現しています。

サービスの見直し・価格改定

NRRの向上には、提供サービスの内容や価格体系の見直しも重要な施策です。サービスが顧客の期待に合致していない場合や、価格に見合わないと感じられている場合、解約やダウングレードが発生しやすくなります。

まずは、既存顧客や離脱した顧客からのフィードバックを収集・分析し、課題を明確化しましょう。そのうえで、価値に見合った機能強化や、より柔軟な料金プランの設計を行うことで、顧客満足度を高め、継続利用を促進できます。

解約率を下げるためのCS活動強化

NRRを改善するには、顧客の解約を防ぐカスタマーサクセスの強化が欠かせません。カスタマーサクセスは、顧客が自社サービスを効果的に活用し、成果を実感できるよう支援する取り組みです。

解約の多くは「価値を感じられない」ことが原因で起こるため、導入支援や定期的なフォロー、活用方法の提案などを通じて、顧客満足度を高める取り組みが重要です。よくあることとして「そもそも使い方が分からない」「フォローアップが思ったほど良くない」「担当が引き継がれてから放置されている」など、カスタマーサクセスによる支援不足が起因する解約は必ず対策すべきです。

また、営業やサポート部門と連携し、顧客の課題を全社で解決する体制を整えることも求められます。

関連記事:カスタマーサクセスとは?仕事内容やカスタマーサポートとの違い、必要なスキルや将来性まで解説!

【アーカイブ配信】NRRを最大化するCS戦略とは 〜デジタルによる効率化と人による効果を両立するアプローチ~

世界No.1のCSプラットフォームを提供するGainsight社と、クラウドサーカス社が共同開催したウェビナーでは、NRR最大化に向けた最新のCS戦略を解説しています。

今、多くの企業が注目している「Customer-Led Growth(カスタマー・レッド・グロース)」とは、顧客の成功を中心に考え、そこから自社の成長につなげていく考え方です。これを実現するには、ツールなどを使ったデジタルでのサポートと、人によるきめ細かいサポートの両方をバランスよく行うことが大切です。

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アーカイブ動画は「カスタマーサクセスノウハウ資料」に含まれていますので、ぜひご覧ください。

SaaSビジネス向け:NRRを改善するための手法

本記事では、NRRの基本からARR・MRRとの違い、計算方法、改善に向けた実践的アプローチまで、わかりやすく解説しました。

NRR(売上維持率)は、既存顧客からどれだけ収益を維持・拡大できているかを示す重要な指標です。SaaSビジネスにおいては、新規顧客の獲得以上に、顧客との継続的な関係性が成長を左右します。

NRRを改善・向上するには、オンボーディングの効率化、解約率の低下、アップセル・クロスセルの強化が必要不可欠です。

クラウドサーカスでは、それらの取り組みを支援するSaaS向けオンボーディングツール「Fullstar」を提供しています。ノーコードでチュートリアルを作成できるため、顧客が自走しやすくなり、オンボーディングの効率化に貢献します。

さらに、利用状況の通知などの機能を活用することで、解約リスクの早期発見と防止にも有効。タイミングに応じたアクションで、アップセル・クロスセルの機会も最大化できます。

国内SaaS企業500社以上に導入されているため、信頼と実績もあり、SaaS企業のNRR最大化に大きく貢献できるカスタマーセールスツールとなっています。

詳細は、カスタマーサクセスの近年の動向や調査データから見えた取り組むべき施策についてまとめた「カスタマーサクセス実態調査」資料で、解説しています。

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