今回は、カスタマーサクセス株式会社を設立された岩熊さんと梶原さんに、「Fullstar」事業責任者の橋口がインタビューさせていただきました。
CSの黎明期から業界を牽引してきた二人が、なぜ今、カスタマーサクセスの市場で「概念」の普及に挑むのか。新会社が描くミッションと、これからのCS組織のあり方について語っていただきました!
岩熊 勇斗 氏
カスタマーサクセス株式会社 代表取締役CEO
経歴
新卒でDeNAを経て、クラウドサイン創業のタイミングで弁護士ドットコム株式会社に入社。カスタマーサクセス部門の立ち上げおよび責任者を経験し、約5年間で10万社以上の顧客を支援。その後、コミューン株式会社でカスタマーサクセス部門の立ち上げ、CRO、CCO、カスタマーサクセス向けの新規事業責任者を歴任。
2025年にカスタマーサクセス株式会社を共同創業、代表取締役CEOに就任。
(以下、岩熊さん X:
@YutoIwakuma)
梶原 将翔 氏
カスタマーサクセス株式会社 代表取締役COO
経歴
早稲田大学商学部卒。教育業界で営業マネージャーを経験後、IT企業創業に参画。役員として多数のWEBサービス企画・開発を担当。2019年に株式会社LayerXへ入社。SaaS事業のカスタマーサクセス責任者/事業開発/プロダクトマネージャーを歴任。独立後は多数のスタートアップを支援。日本カスタマーサクセス協会の立ち上げにも携わる。カスタマーサクセスに関するnoteは累計24万PV、4000いいねを記録。2025年にカスタマーサクセス株式会社を共同創業、代表取締役COOに就任。
(以下、梶原さん X:
@kajisan_cs)
橋口 浩暉
クラウドサーカス株式会社
Fullstar事業部 事業部長 CSツール「Fullstar(フルスタ)」プロダクトオーナー
経歴
2018年クラウドサーカス株式会社入社。IS責任者を務め、国内最大級の営業の大会「S1グランプリ」で優勝。その後カスタマーサクセス組織のマネージャーを経て、CSツール「Fullstar」をリリース。これまでに各種イベントの登壇、大手企業向けの研修、NHK「おはよう日本」への出演、外部の活動として国立大学の非常勤講師などを務める。
現在は「Fullstar」の事業責任者を務めながら、経営におけるカスタマーサクセスの再定義、理論の確立を目指し、経営大学院に通う。
(以下、橋口 X:
@KohkiHashiguchi)
1. 創業の経緯:カスタマーサクセスの「概念」を広めたい
橋口 
本日はよろしくお願いします!改めてですが、なぜ今、カスタマーサクセス(CS)の領域で新会社を立ち上げようと思われたのでしょうか?
岩熊さん
私はこれまで約10年間、実務者と支援者の両方の立場でカスタマーサクセスに携わってきました。カスタマーサクセスの普及に向けて、前職ではソフトウェアの提供を通してアプローチをしていましたが、業界に向き合うなかで痛感したのが、「そもそもソフトウェアを導入する以前の段階で止まってしまっている企業がとにかく多い」という現実でした。
橋口 
すごく分かります。
岩熊さん
もちろん、ソフトウェアを使って効率化したり、生産性を上げたりして成果を出したいという思いはあります。しかしそれ以前の問題で、「そもそもカスタマーサクセスって何?」という状態だったり、運用できる人がいなくて余力もなかったり様々です。そこにソフトウェアを入れても、使いこなせるわけがありません。
私はカスタマーサクセスという「概念」や「考え方」そのものに心酔していて、大好きなんです。「趣味だ」と言い切っているくらいなんですが(笑)。
だからこそ、カスタマーサクセスをもう少し極めたいという思いと、ソフトウェアという「手段」に囚われず、純粋にカスタマーサクセスの概念普及と社会実装に100%ベットしたいと考えるようになり、独立を決意しました。
橋口 
そこで梶原さんと合流されるわけですね。ちなみに梶原さんは元々
noteなどで概念を発信されていましたが、このタイミングで岩熊さんと一緒に会社を立ち上げた背景についてはどのような思いがあったのですか?
梶原さん
そうですね。私は「カスタマーサクセスはライフワーク」と言い続けてきました。LayerXを退職して独立した後も「
株式会社インストーラー」という社名でCS支援を行っていました。
その中で、私自身が商品になるのではなく、
誰かと本気で、CS領域で「事業」を作っていきたいという思いがここ2、3年で強くなっていました。
ただ、CSM(カスタマーサクセスマネージャー)と経営者は求められるスキルや思考が異なるので、一緒にできるパートナーは限られます。だからこそ岩熊さんから、改めてCSに注力したいという話を聞いて、すぐにお誘いしました。
橋口 
今回は梶原さんから声をかけられたんですね。
岩熊さん
そうなんです。元々、渋谷のカフェで別件の予定で会っていた時に、私がポロッと「独立しようと思ってる」と漏らしたのがきっかけですね。その翌週に梶原さんから「一緒にやりませんか」とメッセージが来まして(笑)。
梶原さん
私から岩熊さんに別件の依頼をしていた中で、やっぱり岩熊さんの「カスタマーサクセスの普及に人生を賭していきたい」という強い思いを改めて感じました。だからこそこのマーケットで概念を一緒に広げていくことに賛同いただけるなら、一緒にやろうと思ってお誘いしました。
2. ミッション:「本物の企業」で溢れる社会を作る
橋口 
新会社のミッションや、具体的な事業内容についても教えてください。
梶原さん
我々のミッションは「本物の企業で溢れる社会をつくる」です。
ここで言う「本物の企業」とは、「売って終わりではなく、顧客に向き合い、成果で応え続ける企業」のことです。概念としてのCSを、経営や組織、あらゆる意思決定に染み渡らせることで、顧客を成功に導ける企業で溢れる社会を作りたいと定めています。
このミッションは、二人でかなり時間をかけて、スライド40枚分くらい議論して、一言一句まで向き合って作ってきました。我々が何をしていきたいか、CSという概念が社会実装された暁にはどんな世界になっているのかを言語化したものです。
また繰り返しにはなりますが、事業方針としては「概念としてのカスタマーサクセス」を普及させ、社会実装することです。
「普及」は誰もが知っている状態で、「社会実装」はみんなが実践している状態です。そこに向けて取り組んでいきたいです。
そのために、「ノウハウ不足」と「人不足」という二大課題の解消に取り組みます。ノウハウに対しては企業向けの研修やコンサルティング、個人向けのスクールのようなもので、人不足に対しては人材育成と採用支援を行う予定です。

カスタマーサクセス株式会社のミッション

カスタマーサクセス株式会社の事業内容
橋口 
お二人がカスタマーサクセスの概念を広げていこうとしている中で、この事業内容を選ばれた背景についてはいかがですか?
岩熊さん
まず、ノウハウの不足に対して最も短期的かつ効果的に価値を提供できるのが私や梶原、およびこれから採用を予定している業界トップ人材によるコンサルティングだと考えています。まだ当社のサービスについて何も発信していない段階でも、ありがたいことにお引き合いをいただいており、強いニーズを感じています。
一方で、コンサルティングはどうしてもリソースの上限があります。私たちだけが稼がせていただくのであればそれでも良いのですが(笑)、先述の通り普及・社会実装していくための会社です。ゆえに、ノウハウを有して実践できる人材を増やすための育成サービスは必然だと考えました。
次に、人材不足に対しては、市場全体というマクロにおけるカスタマーサクセス人材の不足と、個別の企業というミクロにおける人材の不足という両側面と向き合いたいです。前者に対しては人材育成サービス、後者に対しては採用支援サービスが適切なアプローチだと考えました。
採用支援サービスに関しては、採用ペルソナ設計から母集団形成、採用実務の実行までを支援するという想定です。
一方で、いわゆるBPOや副業人材の斡旋に力を入れていくことは考えていません。
カスタマーサクセスのメイン業務はどこまでいっても「クライアントワーク」なので、システムやサービスのドメインに対する深い理解が必要です。
だとした時に、担当クライアントを持った責任あるCSMとしての仕事を、パート単位で切り出して外注するのは極めて難しく、失敗に至るケースを数多く見ています。
なので本質的には「本当にできる人をこの世の中に増やしていくこと」と、「できる人を、その人が一番輝ける会社とお引き合わせすること」の方が、難易度は高いものの本来的に私たちがやるべきチャレンジだと思っています。
梶原さん
お引き合わせについては、個人向けのスクールなどを通じて、未経験だけれどもCSMになる準備ができた人をご紹介することで、「CSMの総人口を増やす」というのはやる価値があると思っています。
橋口 
僕も最近CSの中途採用を出しているんですが、最近増えてきたのは「コールセンター経験者が、サポートの文脈からサクセスに移りたい」という方です。こういう人たちが御社の教育を受けてCSMになっていけるといいですよね。
岩熊さん
まさにそうです。例えばマーテック系SaaSなら、広告代理店出身者が活躍する事例があったり、バックオフィス系SaaSなら経理経験者が担当したりすると、非常にワークしやすいです。 一歩広く見ればCSとしても活躍できる方はたくさんいらっしゃいますね。
3. トレンドと市況感:適切なCS分業化へ
橋口 
事業については、市況感の話にも絡んでくると思います。今後のCSの未来について、お二人がどう捉えているかもお伺いしたいです。
2018年頃からカスタマーサクセスの有用性が言われ始めて、僕の感覚だと2021年くらいまではどんどん登ってきましたが、そこから横ばいか停滞か、というのが今かなと。今後ももちろん伸びていくとは思いますが、直近で見るとマイナスな市況感じゃないかなとも思うのですが、今後のトレンドも含めてどう捉えていますか?
岩熊さん
2018年から2021年頃までは「カスタマーサクセス部門に既存顧客を任せれば、すごく収益が伸びる」という全能的な期待がかけられていたと思います。当然そんな簡単な話ではなく難易度も高いので、成果が出しきれなかったりして、「あ、なんかそんなもんか」という一種の幻滅みたいなものがあったのも否めないと思います。
ただ、詳細を見てみると、適切な分業ができていなかったり、CSの実態が分からないまま合わない人をアサインしてしまったりということが原因です。結局アジャストが起きると思っているので、安定成長期にまた入ってくると考えています。
その中で、サクセスマネジメントの仕事とアカウントマネジメントの仕事、さらにサポートの仕事。ざっくりこの3つくらいを全部一人でやっていたものを、適切に切り分ける流れが今のトレンドになっています。「ここのサクセスはこういう分業がいいよね」というベストケースを社会に出していくことで、再び成長曲線に戻っていけるんじゃないかなと思っています。
梶原さん
マーケットの流れで言うと、情報発信量などの盛り上がりは停滞しているように感じますが、CS部門を設置する企業は確実に増えています。大企業含めてSaaSではない企業がCS部門を設置したり、SaaSではなかった企業がサブスクのような売り方を始めてCSを設置したりというケースが増えていますね。
すでに数年間取り組んだ企業は、先ほど言ったように役割を分けていくフェーズに入っています。THE MODELの前工程がマーケティング、インサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)と分かれたように、後工程もオンボーディング担当、カスタマーセールス、カスタマーマーケティング、アカウントマネージャーのように分業化されてきています。
4. 戦略:狙うは「非SaaS」領域
橋口 
今お話しにでてきたように、SaaSではない企業がCSを設置することが増えています。お二人の狙いとしては「既存のSaaSにおけるCSを深掘りしたい」のか、それとも「非SaaSの領域にCSを広げていきたい」のか、どちらに比重を置いているのでしょうか?
岩熊さん
そこは明確に、100%「非SaaS」です。
橋口 
そうなんですね!そうなると、もっと上流の、事業のサブスク転換まで支援していくイメージですか?
岩熊さん
仰る通りです。
もちろんSaaSの支援も行いますが、我々はCSを単なる「部門のメソッド」とは捉えていません。「収益最大化のアプローチ」や「カスタマーサクセス経営」として、SaaS、ないし、いわゆるスタートアップ以外の企業へも啓蒙していきたいと考えています。
梶原さん
あえて言うと、ことさら新しい話なのかと言われれば、古くから「深耕営業」とか「ルート営業」という名前で、皆さん近しい活動はされているんです。
そこにもう少し体系立てたり、「LTV(顧客生涯価値)」の概念を伝えながら活動をアップデートしていったりという感じですね。
橋口 
今までの「ルート営業」と、これからの「カスタマーサクセス」の違いは何になると思いますか?
梶原さん
基本的には
「LTVを考えているかどうか」だと思っています。
日本カスタマーサクセス協会が出している「
カスタマーサクセス白書2025」に面白いデータがあります。
非SaaS企業においては、CS活動があまり明確な目的を持って体系的に行われていないにも関わらず、
アカウント単位のNRR(売上維持率)はSaaS企業と比較して大きな差がないんですよ。
なぜかと言うと、SIerさんや代理店さんは商材をたくさん持っているから、1アカウントに対して色々な商材を売り続けることでNRRが高くなるんです。
ただ一方、
裏を返すと商品ごとのチャーンレート(解約率)も高いんです。ここに商品ごとのLTVの概念を持ち込めば、ビジネスインパクトは巨大だと思います。
5. CS組織論とテクノロジー:「3人目はOpsを採用せよ」
橋口 
非SaaSの場合、SaaSのようにソフトウェアでログが取れないので、「お客さんが困るタイミング」を察知するのが難しいと思います。どう支援していくべきでしょうか?
岩熊さん
これまではデータ化できていなかった非構造データもきちんと捉えることですね。
営業やメール、電話での会話の文脈だったり、明確なデータベース上には現れてこない「お客様のトーンの変化」だったり、あるいはコミュニケーションの頻度やお客さんのメールの長さも含めて、「あれ、なんか半年もよりすごい雑な返事になってるな」とか、「返信が返ってくるまでの時間が伸びてきていて、なんとなく心が離れてるかもしれない」とか、そういったものも含めてテクノロジーを活用していくというのは、むしろチャンスのタイミングかなと思います。
その意味では、スーパー営業マンであればごく自然にやっているんですよね。ルート営業をやっている方で、このお客さんはこのタイミングでこれが必要になるだろうなとか、お客さんが欲しいタイミングとか、困るちょっと前くらいのタイミングで一番適切なコミュニケーションを取れる営業マンこそがこれまでも成果を出してきています。 なので、それを会社として再現性を持ってちゃんとやれるようにしましょう、という話だと考えています。
梶原さん
加えて、これはSaaS・非SaaS問わずですが、私は常々「CS組織の3人目にはOps(オペレーション担当)を採らないといけない」と言っています。
データを取り扱い、ツールを導入・管理できる人材です。それくらい早期にデータドリブンなチームを作ることが重要です。
橋口 
面白いですね。これまでは非構造だったが故に、トップセールスはできていたことが、今は扱えるデータ量が圧倒的に多くなって、AIなどで構造化や分析ができるようになってきたからこそ、早くOpsを入れて底上げする必要があると。
岩熊さん
そうですね。ガンガン赤字を掘って成長率が求められていたスタートアップも、これまでよりも早く利益を出すことが求められるようになっています。
一昔前は「ハイタッチでコストをかけて、成長してからテックタッチ施策」というセオリーでしたが、今の市況感では通用しなくなってきています。
テックの導入は一朝一夕で行くわけではないので、最初からコスト構造を意識して、テクノロジーで可視化できる基盤を作らないと競争力が落ちる、というものに移り変わっていると思います。
6. さいごに:カスタマーサクセスは「総合格闘技」だ
橋口 
最後に、経営者の方や現場の皆さんに伝えたいことはありますか?
岩熊さん
経営者の方には、CSを難しく考えず「商売の原点」として捉えてほしいですね。「売る時の約束を守り、信頼を得て、長く付き合う」。極めて根源的な商売のあり方だと思います。
カスタマーサクセスという新しい言葉に対してSaaS業界での取り組みが先行したことで、オンボーディングとかアダプションとか、そういうTipsで溢れているんですが、そのまま転用はできないので、そもそも「お客さんは何を期待しているのか」にこれまで以上に向き合うことで大きく成長するというシンプルな話です。
そして現場の皆さんには、「自信を持ってほしい」です。
CSはコミュニケーション、課題解決、テクノロジー理解が必要な「総合格闘技」です。
数年前に
noteに書いたのですが、当時CSをやっていた人が、今もCSをやっている人もいれば、起業・独立をしたり、事業責任者やPMM、コンサルにもなっていたりします。それだけベースの能力の高さに加えて、いろいろなキャリアの選択肢を持てる仕事なので、自信を持ってやっていきましょうということかなと思います。
梶原さん
同じことを言おうとしてました(笑)なぜなら、「顧客のことを一番知っているから」です。一番現場の最前線で顧客の状況を理解しているからこそ、正しい打ち手が打てる。
一番ウェットなハイタッチ現場と、一番ドライなデータを見ながら意思決定をする。これを行ったり来たりできる人材こそが、これからのビジネスをリードしていくはずです。
また、弊社のミッションに「カスタマーサクセス」という単語を入れていないのもその意図です。カスタマーサクセスの概念は広げていきたいですし、社名もそうしています。ただ手段としてはSaaSのカスタマーサクセスメソッドではなくて、顧客に向き合い続けようよ、本物の価値って何かを考え続けようよ、というメッセージでもあります。
橋口 
「顧客を知る」が全てのビジネスの原点ですよね。本日は熱いお話をありがとうございました!
インタビュー:橋口 浩暉
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