デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)は、導入したシステムの定着を促進するためのツールです。
「DX化のためにツールを入れてみたけど、社員が全然活用できてない…」
「以前使ってたシステムの方が使いやすくて良かったなぁ…」
なんて思っていませんか?
急速にテクノロジーが進化を遂げる中で、最近ではDXという言葉も浸透してきました。ただDXに取り組む企業が増えている一方で、同時に多くの企業がDXに失敗しています。
そして今回ご紹介するデジタルアダプションプラットフォームは、DXを成功に導くための最後のピースとして現在注目を浴びているものになります。
この記事ではデジタルアダプションプラットフォームについて詳しく紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。
デジタルアダプションプラットフォームとは、導入したシステムの定着を促進するためのツールのことです。
具体例としては、システムの画面上でガイドなどを表示してユーザーを案内し、自己解決を促すようなものが挙げられます。
米国の調査会社であるガートナーは「2025年までに70%の組織がテクノロジースタック全体でデジタルアダプションプラットフォームを活用するようになり、不十分だったアプリのユーザーエクスペリエンスを改善できる」と予想しており、海外を中心に今非常に注目されている領域と言えます。
デジタルアダプションプラットフォームが最近注目されるようになった背景には、DXの浸透があります。
企業がDXを推進する中で、社員がシステムを使いこなせないなどの理由から、思うように費用対効果が得られずDXに失敗する企業も少なくありません。
そこで企業が本来ツールやシステムを導入してやりたかった事を実現し、本当の意味でDXを成功に導くために生まれたのがデジタルアダプションプラットフォームなのです。
次にデジタルアダプションプラットフォームを導入するメリットを3つご紹介します。
DX化に伴い社内で導入したシステムが、思ったよりも効果を発揮していないケースは珍しくありません。業務効率化のために導入したシステムが定着せず、かえって社員の負担が増えてしまうのは本末転倒です。
そんな時、デジタルアダプションプラットフォームを導入することで、属人化してしまっているシステムの活用度合を均一化し、全ての社員がシステムを使いこなすことができるようになります。
本来そのシステムを導入して実現したかった事を達成し、企業がDXを成功させるためにはデジタルアダプションプラットフォームは必要不可欠と言えます。
どんなに優れているシステムでも、社員が使いこなすようになるまでに一定のコストを要します。そのため企業は説明会を開催したり、マニュアルを作成したりすることでシステムの定着を促進させます。
しかしこれらの施策は時間や手間などのコストがかかるため、気軽に取り組めるものではありません。
そんな時、デジタルアダプションプラットフォームを導入することで、社員は自己解決が可能となり、説明会やマニュアル作成の必要性はなくなります。
利用するユーザーが自己解決できるセルフオンボーディングこそが、デジタルアダプションプラットフォームの強みなのです。
社員がシステムを活用できていないと、情報システム部などに問い合わせが集中します。社内問い合わせが増えると、その対応をする部署の負担が増加し、本来やるべき業務に割く時間が減ってしまいます。
実際、株式会社インターネットイニシアティブが出している全国情シス実態調査レポート2023によると、「直近一年間で最も時間を費やしている業務は何か」という質問に対して、情報システム部の359人中54人が社内問い合わせ対応と答えています。
デジタルアダプションプラットフォームを導入すれば、社員の自己解決を促すことができ、システムやツールに関する問い合わせを大幅に削減することができます。
また問い合わせに対する回答の質を均一化することができるため、ユーザー側の社員と問い合わせ対応する社員の双方に大きなメリットがあると言えます。
ガイド・チュートリアルとは、システムの画面上に吹き出しやポップアップなどを表示することでユーザーを案内し、自己解決を促す機能のことです。
ガイドは吹き出しなど単体を指しており、チュートリアルは複数のガイドを連続して表示しながらユーザーを案内していくものを指しています。
社員が初めてシステムにログインした時に、チュートリアルでシステムの機能を紹介することで活用の促進が期待できます。
ただログインする度に機能を紹介されると煩わしいため、どのタイミングで表示するのかは考えておく必要があります。
社員が困った時、そのまま画面上で解決に導いてくれるのは他のツールにない特徴と言えます。
ツールチップとは、システムの画面上にアイコンを表示させ、ユーザーがマウスオーバーした時に吹き出しがでるような機能のことです。
強制的に社員に表示できるガイドやチュートリアルとは異なり、社員自らが困った時にマウスをかざして利用するため、フォーム入力時などの補足説明をしたい時に有効です。
社員つまづきそうなポイントはどこか、社員がどこでミスを多発しているのかなどを事前に考え、適切な場所にツールチップを設置することで申請系の差し戻しを減らせるなど、大きな効果が期待できます。
アンケートとは、社員に対して任意のアンケートを実施できる機能のことです。0点〜10点満点で定量的なデータがとれるようなものや、好きな選択肢を設けて定性的なデータをとれるものなどがあります。
例えば社員に対して「このシステムは使いやすいか」「分かりにくい箇所があれば教えてください」などのアンケートを実施し、その結果をもとにガイドやツールチップを使ってより良いシステムへと改善することができます。
従来であればメールなどを使って回答を集めていましたが、デジタルアダプションプラットフォームであればシステムの画面上でアンケートを実施できるため、社員の回答率が非常に高いのも特徴の一つです。
アナリティクスとは、社員のシステムの活用度合いをデータとして把握できるような機能です。指定した期間において、何人の社員がどれくらいシステムを利用しているのかが分かるだけでなく、ツールによってはシステムの各ページごとに滞在時間なども測定することができます。
システムの滞在時間が長ければ長いほど社員が操作に迷っていることになるため、デジタルアダプションプラットフォームを導入することで、いかに社員の滞在時間を短くすることができるかが重要になります。
また期間ごとに数字を比較することができるものもあり、導入前と導入後でどれだけ効果が出ているのかを定量的に測ることができるのもポイントです。
デジタルアダプションプラットフォームとこれら2つのツールにおける最大の違いは、社員の利用率です。
チャットボットとFAQシステムは、どちらも社員が自分の状況にあった選択肢やFAQを選んで自己解決するものです。そのため緊急性が低い場合や、解決意欲が高くない社員は自ら進んで利用しない傾向にあります。
一方でデジタルアダプションプラットフォームは、画面上でそのまま解決まで導くことができるため、3つの中では最も利用率が高いツールとなっています。
ただチャットボットやFAQシステムも全く必要ないわけではありません。例えば生成AIが搭載されたチャットボットであれば、他2つのツールでは難しい定型的ではない問い合わせにも柔軟に対応することができます。
そのためどれか1つを選ぶのではなく、自分たちが削減したい問い合わせの内容まで把握しておくことが必要になります。
これらのツールは、社内のお問い合わせ削減のツールとして比較されることの多いものです。しっかりと違いを把握した上で、自分たちに合ったものを選ぶようにしましょう。
チャットボットとはチャット(会話)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、会話形式でユーザーの問いに答えてくれるシステムのことです。
チャットボットを社内システムの画面上に設置することで、社員は問題に直面した時に自己解決が可能になります。
自分の状況にあった選択肢を選びながら会話を進めていくため、自分の課題や状況がしっかりと把握できている社員に対しては非常に有効な手段と言えます。
また最近では生成AIを搭載したチャットボットも増えてきており、既存のマニュアルを読み込ませるだけで、自動的にそこから回答してくれるようなものもあります。
会話形式で進むため、社員が気軽に利用してくれるのもチャットボットの特徴と言えます。
FAQシステムとは、よくある質問(FAQ)を用意しておき、ユーザーが自分に合ったFAQを検索することで自己解決を促すツールのことです。
チャットボットとは違い、基本的にはシステムの外に設置することが多いため、FAQシステムをどれだけ多くの社員に利用してもらえるかを意識して導線設計をする必要があります。
会話形式ではなく社員自らが該当するFAQを探しに行くため、回答のミスマッチが起こりにくいのはメリットと言えるでしょう。
テンプレート機能で誰でも簡単にUIの整ったFAQシステムを構築することができるものもあるため、気になる方はぜひチェックしてみてください。
最後にデジタルアダプションプラットフォームを導入する際の注意点を3つご紹介します。
これらを意識することで、デジタルアダプションプラットフォームの効果を最大化させることができるので、ぜひ参考にしてみてください。
デジタルアダプションプラットフォームを導入するにあたり、「なぜこれを導入するのか」を明確にしておくのは非常に重要です。
企業によって目的は異なりますが、事前に目的をハッキリさせておかなければ、デジタルアダプションプラットフォームを導入した効果が測れません。
目的を考える際には、定性的な目標だけでなく数字で測れるような定量的な目標を設定しておくと良いでしょう。
以下に導入目的の例を挙げるので、ぜひ参考にしてみてください。
ここで挙げたものはあくまでも一例なので、ぜひ自分たちの状況に合った目的を考えてみてください。
デジタルアダプションプラットフォームを導入した場合、誰が管理するのかを確認しておきましょう。今回例として紹介した4つのツールは、どれも管理者がシナリオを組んだり、ガイドを作成したりする必要があります。
また作成して終わりではなく、実際に社員がツールを利用しているのかを分析し、より多くの社員が利用するように改善していくことも重要です。
そのためには誰がデジタルアダプションプラットフォームを管理し、運用していくのかを明確にしておくことが大切です。
ベンダーによってはサポート体制が充実していて、運用面でも作成代行サービスを提供している会社もあります。まずは自分たちの持っているリソースを把握し、状況にあったツールを選んでみてください。
デジタルアダプションプラットフォームをどのシステムで適用するのかを事前に決めておくのはとても重要です。
せっかく導入しても、そもそも社員がそのシステムで困っていなければ意味がありません。
そのため社員の活用状況を事前に把握し、デジタルアダプションプラットフォームが必要なシステムとそうでないものを決めておきましょう。
またシステムによってはデジタルアダプションプラットフォームが導入できないようなものもあります。Webシステムなのか、自社開発なのか、など各ツールの適用条件をチェックし、自分たちに合った最適なツールを探してみてください。
株式会社トムス・エンタテイメントは、アニメーション作品の企画・制作・販売・配給及び輸出事業をトータルかつグローバルに展開しています。
「日々ツールが更新されていく中でマニュアルの作成を簡易化させたい、 またどのようなユーザーに対してもしっかり情報が伝わるようなマニュアルを提供したい」という思いからデジタルアダプションプラットフォームを導入。
マニュアルの内容をチュートリアルでシステムの画面上に表示するなど、機能を最大限に活用して社員が自己解決できる仕組みを構築しました。
その結果、最も利用率が高いチュートリアルは、全利用者の80%以上が利用しており、マニュアルだけではリーチしづらかった人にも利用を促すことに成功。
またマニュアルの作成にかかっていた工数が80%削減するなど、様々な面で導入の効果が出ています。
この記事ではデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)とは何か、そして導入するメリットなどをご紹介しました。
どうしてもツールやシステムを入れて終わりがちですが、そのままではコストだけがかさんでいく一方です。
この記事を参考に、ぜひデジタルアダプションプラットフォームを活用し、本来自分たちが実現したかった事を成し遂げ、本当の意味でのDX成功を目指していただければと思います。