カスタマーサクセスにおけるアダプションとは、顧客がサービスやツールを「使いこなせる」状態を目指すことです。オンボーディングの次のフェーズにあたり、アダプションが成功すると、継続利用や収益向上、良好な関係構築へとつなげられます。
「導入までは順調だったのに、その後の利用が進まない」「継続利用やアップセルにつながらない」といった悩みは、アダプションフェーズの改善を行うことで解決できるかもしれません。
そもそもアダプションフェーズに顧客接点を持っていない(ロータッチ、あるいはほぼ放置)状態や、アプローチしても連絡があまりとれない状態になってしまうこともよくあるかと思います。
そういった状態にならないように、しっかりとオンボーディングからアダプションフェーズに移行することが重要です。
本記事では、アダプションの役割やオンボーディングとの違いをわかりやすく解説しながら、アダプション成功のポイントや成功事例、カスタマーサクセスツールについても紹介します。
目次
カスタマーサクセスは顧客の満足度を高め、長期的な関係を築くために欠かせない業務です。その活動は大きく4つのフェーズに分かれます。
それぞれのフェーズには明確な目的があり、順を追って実施することで、顧客との関係を強化し、継続的な価値提供がおこなえます。
オンボーディングは、導入後の初期支援のことです。サービスを導入したばかりの顧客が迷わず使い始められるように、操作説明や初期設定のサポート、ツールの基本的な使い方などを支援します。
具体的には、初期設定のサポート、操作説明、問い合わせ窓口案内、ユーザーマニュアルの提供などが含まれます。
オンボーディングの目的
たとえば、MAツール「BowNow」では、以下画像のような「スタートアッププログラム」を通じて、基本知識の習得、目標設定や操作案内、成果創出に向けたトレーニングなど、導入初期の課題に丁寧に対応。最短で成果が感じられるようサポートしています。
ツールを導入する場合、効果を感じるまでの時間が早いほど、満足度や信頼感が高まり、解約リスクが低下します。オンボーディングに成功すると、こうした「TTV(タイム・トゥ・バリュー、顧客が価値を感じるまでの時間)」を短縮できるのが特徴です。
良い利用体験は、アップセルやクロスセルの機会創出にもつながります。
参考:オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける重要な施策について徹底解説
アダプションは、顧客が継続してツールを使いこなすための活用・定着支援のことです。導入後、顧客がサービスを業務の中で活用し、自分に役立つと実感しながら継続利用していくためのサポートを行います。
アダプションの目的
ここでは、単に使うのではなく、「顧客が製品の価値を十分に理解し、実際の成果につなげているか」「使いこなせているか」が重視されます。
アダプションでは、契約金額に応じて、サポート内容を「ハイタッチ(専任担当が密接サポート)」「ロータッチ(一部自動化しつつ担当が支援)」「テックタッチ(デジタル中心の支援)」などに分類して進めるのが一般的です。
顧客が製品の効果を実感し、自社の成果に結びつけられるようになると、満足度が高まり、契約継続にもつながります。
アダプションによって製品が業務に定着すると、次に迎えるのが契約更新のフェーズです。リニューアルでは、顧客との契約期間が終了に近づいたタイミングで、引き続き契約してもらうよう働きかけます。
リニューアルの目的
リニューアルは契約期間終了時に、顧客がサービスを継続利用するか判断する重要な局面です。このフェーズでは契約更新を確実にし、必要に応じて契約内容やサービスの見直しを提案します。
ここでは、過去の利用状況の振り返りや成果報告を通して、顧客の満足度を高めるコミュニケーションが求められます。
契約更新の判断は、オンボーディングとアダプションで得た成果と顧客の満足度も大きく影響します。継続利用を促すためには、課題があれば早めに対応し、顧客の要望に応えることが重要です。
エクスパンションは、契約内容の拡大を目指すフェーズです。顧客の課題やニーズの変化に合わせた最適なサービスを提案し、収益増加を目指します。たとえば、上位プランの提案(アップセル)や、関連製品の追加提案(クロスセル)を行います。
エクスパンションの目的
カスタマーサクセス担当者は顧客の課題やニーズを把握し、新たなサービスや機能を提案します。契約の拡大は、これまでのフェーズで構築した顧客との信頼関係や満足度が大きく影響します。
カスタマーサクセスの4つのフェーズは、それぞれが連続しており、段階的に取り組むことで効果的な成果が得られます。どのフェーズも欠かせないため、全体を理解し、バランスよく進めることが重要です。
4つのフェーズについて、改めて全体像を簡潔にまとめましたのでご覧ください。
項目 | 目的 | 活動内容 | KPI / 指標 |
---|---|---|---|
オンボーディング | 顧客の自立支援と 早期解約の防止 |
アカウント設定、初期トレーニング、サポート案内など | オンボーディング完了率、初期解約率 |
アダプション | 活用の定着と 成果の創出 |
操作定着の支援、活用事例の提供、定期フォロー | 利用頻度(MAU/WAU)、NPSなど |
リニューアル | 契約更新の確保と 解約率の低下 |
成果報告、更新案内、満足度のヒアリングなど | 更新率、解約率 |
エクスパンション | 利用範囲の拡大と 収益向上 |
アップセル・クロスセル提案、他部門への展開 | MRR/ARR増加額、エクスパンション提案数 |
オンボーディングの期間を短縮し、その分エクスパンション提案に注力する動き活発化しています。近年では、こうした効率的な流れを支える手段として、デジタルツールの活用も進みました。
カスタマーサクセスは2017~2018年頃から日本で注目され始め、今も関心が高まっている分野です。一方で、海外ではより早くからカスタマーサクセスに取り組んでおり、ツールによるプロダクトツアー(テックタッチ)への移行も進んでいます。
CloudCIRCUSの調べでは、2023年時点で85%の企業がツールを導入したプロダクトツアーを提供していることもわかりました。
日本でも2024年時点で60%の企業がカスタマーサクセスツールを導入しており、今後さらに普及が進むと考えられます。こうしたトレンドを踏まえ、各フェーズを最適化していくことも、成功への大切な要素です。
オンボーディングは製品を使い始める初期段階の支援を指します。主に使い方や設定の案内を行い、顧客が自立してサービスを利用できる状態を目指します。
一方、アダプションは製品を定着させて、業務の中で成果を上げる段階を指します。単なる利用ではなく、顧客の業務改善や価値創出につながる支援が求められます。
簡単に言えば、オンボーディングは「サービスをスムーズに始めること」、アダプションは「サービスを使い続けて活かすこと」を目的としているのが特徴です。
カスタマーサクセスでは、ツールの導入を完了させるオンボーディングだけでなく、その後のアダプション(適応・活用)も大切です。なぜなら、アダプションは顧客が製品の価値を実感し、継続利用に結びつける大切なフェーズだからです。
ここではアダプションが重要な理由を3つに分けて解説します。
TTV(タイムトゥーバリュー)とは、顧客がサービスやツールの価値を実感するまでの時間のことです。SaaSのような継続課金型サービスでは、価値を早期に実感できなければ解約リスクが高まります。
アダプションを行うことで、顧客は早期に成果を実感しやすくなります。導入後すぐに具体的な効果や成功例に触れることができれば、TTVの短縮になり、ひいては解約の防止につながります。
SaaSやサブスクリプションなどのビジネスモデルは解約が容易です。機能の使い方を理解しても活用が不十分なら、すぐに他社製品に乗り換えられてしまいます。
アダプションを行い、継続利用する環境・体制構築をサポートすることで、こうした活用不十分から来る解約を防止できます。
定期的なフォローアップやカスタマイズ提案、利用データの分析を通じて、ツールが欠かせない存在だと思ってもらえるように働きかけていくのが、アダプションの特徴です。
成功体験がなければ、顧客の満足度は下がりやすく、解約や他社サービスへの乗り換えリスクが増します。
そこで、アダプションを行い、「ツールの本当の価値」を実感できるようサポートします。単なる操作説明を超え、業務改善や売上向上など具体的な成果を体感してもらうことで、満足度を向上、乗り換えリスク防止につなげます。
この段階での成功体験が、顧客の信頼と満足度を高め、追加契約やアップセルにも大きな影響を与えていきます。
アダプション成功のためには、顧客の使いこなしや定着を促し、継続的な価値提供を行うことが求められます。具体的には、顧客の疑問に迅速に回答することや、惜しみない情報提供、デジタルツールの活用などがあります。ここでは、その詳細を具体的に解説します。
アダプションの成功とは、単に製品を導入してもらうだけでなく、顧客が自社のサービスやツールを効果的に活用し、実際の業務で成果を感じてもらうことを意味します。
そのためには、オンボーディング完了後に顧客が小さな成功体験を積み重ねることが大切です。たとえば、導入直後に使いやすさを実感したり、業務効率が向上したと感じたりすることが、アダプションの成功につながります。
ポイントは、成功の指標をいくつか設定し、その中でも効果が表れやすいものから優先的に支援すること。早い段階で顧客満足度を高められ、ツール継続利用へのモチベーションにもつながげられます。
顧客の疑問や問題は、迅速に解消することが信頼につながります。特に導入初期は使い方が分からず不安を感じやすいため、問い合わせには可能な限り即座に対応することが大切です。
迅速な対応は顧客の不満を減らし、サービス利用の定着を促します。電話やチャット、メールなど複数の窓口を設けることも効果的です。
顧客が製品を深く理解し活用するためには、具体的な事例やノウハウをまとめたコンテンツを豊富に提供することが大切です。たとえば、導入事例、活用手法の解説、セミナー動画などが効果的です。
たとえば、エコナビスタ株式会社は「蓄積した事例やノウハウを惜しみなく共有すること」を続けて、Churn Rate(解約率) 0.003%という実績へとつなげています。
豊富なコンテンツ、情報提供が顧客の理解度を高め、使いこなしを加速させます。
参考:導入初期の操作研修時間を1/3に削減!解約率0.003%を実現するエコナビスタのカスタマーサクセス
アダプションでは「ハイタッチ」と「テックタッチ」の役割分担が重要です。
ハイタッチとは、カスタマーサクセス担当者が直接顧客に寄り添い、個別のフォローや課題解決を行う方法です。一方、テックタッチはデジタルツールや自動化によって顧客対応を補完する方法です。
この両者を適切に組み合わせることで、効率的かつきめ細かいサポートが可能になります。たとえば、日常のよくある質問や利用状況の通知はテックタッチで自動化し、複雑な課題はハイタッチで対応するのが理想的です。
参考:テックタッチとは?カスタマーサクセスの重要なタッチポイント ~知っておきたい基礎知識について~
カスタマーサクセスの効率化と精度向上には専用ツールの活用が効果的です。
たとえば、カスタマーサクセスツール「Fullstar(フルスタ)」を使えば、チュートリアルやツールチップをノーコードで導入できます。簡単に、オンボーディングにテックタッチを取り入れられるのです。
それだけでなく、カスタマーサクセスの工数削減や、顧客の疑問を素早く解決でき、満足度向上・TTV(タイムトゥーバリュー)短縮へとつなげられます。長期間ツールを触っていないユーザーを可視化できる機能も搭載されており、解約防止につなげることも可能です。
日本よりも早くカスタマーサクセスを取り入れた海外では、ツールを用いたプロダクトツアーが主流になっています。日本も今後、カスタマーサクセスの一部をツールで補い、「ハイタッチ」と「テックタッチ」を組み合わせた手法が重視されていくでしょう。
ここでは、カスタマーサクセスのアダプション成功事例を紹介します。
MAツール「BowNow」では、オンボーディングとアダプションを組み合わせた「スタートアッププログラム」を提供しています。継続活用を行ってもらうために、初期設定前に勉強会を開きMAツールの基礎知識を覚えてもらい、ツールの設定に入るのが特徴です。
さらに、ある程度ツールを運用できるようになったら、成果を出すためのマーケティング戦略や今後の活用についての1to1ミーティングなども取り入れ、「ツールが使える」だけでなく、「ツールをマーケティングで活用できる」段階までフォローします。
こうした手厚いサポートを行い、顧客の継続利用を支えることでMAツールの国内シェア1位※、導入企業は14,000社を超え、多くの企業に選ばれるツールへと成長しています。
※出典:株式会社DataSign「DataSign Webサービス調査レポート 2023.4」
せっかく導入してもらったツールも、うまく使ってもらえなければ成果にはつながりません。アダプションを成功させるには、顧客が迷わず使えるような導線を作り、適切なタイミングでサポートすることが重要です。そのためには、丁寧な設計と、現場の手間を減らせるツールの活用が大きな力になります。
顧客が安心して使い続けられる環境づくりが、アダプションの成功につながります。
オンボーディングからアダプション、またエクスパンションまでつなげるために、カスタマーサクセスツールの活用は重要な選択肢の1つです。
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