テックタッチとは、テクノロジーを活用してより多くの顧客に対してツールやサービスの活用支援を実施する施策です。対人と違って、1:nで多くのユーザーに対して活用の支援が実施できるため、注目を集めています。
テックタッチが注目を集めている背景として、日本でもサブスクリプション型のビジネスが増えてきていることが挙げられます。サブスクリプション型のビジネスは、定額の利用料を支払ってもらうことで月単位など一定期間サービスを提供するビジネスモデルとなるため、いかに顧客に長く利用してもらうかが重要です。
そんなサブスクリプション型ビジネスのうち、BtoB企業で特に増えているのがSaaSです。また、SaaSを提供する企業は、継続的にプロダクトやサービスを利用してもらうために「カスタマーサクセス」の視点を持つことが必要になると言われています。
ただし、顧客が増えれば増えるほど、人的なリソースをかけてカスタマーサクセスを実施していくことが難しくなります。そこで重要になってくるのが、「テックタッチ」を活用した支援活動の効率化です。もはやテックタッチの施策をなくして、カスタマーサクセスを語れないほど、施策としての重要度は高まっています・
本記事ではカスタマーサクセスのタッチモデルのおさらいから、具体的なテックタッチの手法や事例までをお伝えいたします。
・テックタッチってどういう施策?
・テックタッチを始めたいけど何から始めたらよいのかわからない。。
・テックタッチについて基礎から知りたい!
といった方には特におすすめの内容になりますので、ぜひ役立てください!
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本題のテックタッチのお話に入る前に、まずはカスタマーサクセスの一般的なタッチモデルについてお話しします。
全顧客に対して同じように対面できめ細やかな対応できれば理想的ですが、なかなかそうもいきません。人的なリソースは限られているので、より多くの顧客を成功に導くためには一部テクノロジーの力や、勉強会・ユーザー会などの1:nの施策で効率的に支援することも重要です。
そういった背景から、カスタマーサクセスが対応する全顧客を「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3層に分け、「コミュニティタッチ」を加えた4つのタッチポイントを用い、それぞれに適したリソース配分を行うことで業務を最適化することが一般的になっています。
ハイタッチとは、1:1での支援を指します。大口顧客など見込めるLTVが高く、自社にとって付き合うメリットの高い顧客に対して実施します。商材の単価によってはサポート側が複数名となり、プロジェクトのような形で支援することもあります。
施策としては、対面などによる個別対応が中心となり、機能などのカスタマイズや、活用に向けた個別の目標設定・定期的な進捗確認など、コンサルティングに近いサービスを提供しエンゲージメントを高めていくことが必要になります。
ロータッチとは、1人のカスタマーサクセス担当者が複数名に対してまとめてオンボーディングを実施するタッチモデルです。
具体的には、セミナーやワークショップなどの施策がメインで、ツールを利用するにあたって必要な知識や機能、考え方を「1:n」で伝えていく手法となります。オンボーディング完了後も、引き続きセミナーに集客し、より踏み込んだ活用支援につなげていくこともあります。
ハイタッチとロータッチの定義は曖昧で会社ごとに役割も若干異なるのですが、1:1がハイタッチ、1:nがロータッチと覚えておくとシンプルでわかりやすいかもしれません。
ハイタッチやロータッチと違い、人力ではなくテクノロジーの力で支援を実施するのがテックタッチです。1:1や1:nといった考え方ではなく、メールや管理画面上のチュートリアルなどを利用して、人員を介さずに顧客の活用促進を目指します。
特に顧客数が多く低価格なサービスでは、対人で全てを支援をすることが難しいため、マニュアル動画やチュートリアル、ステップメールなど、テクノロジーの力を使って支援を実施するケースが増えています。
また、日本国内でもSaaS企業が年々増え続けており、サブスクリプション型のビジネスや、フリーミアムモデルの価格体系取るケースもよく見かけるようになりました。そうなると、急激に顧客数が増えてしまい、支援がいき届かない顧客が生まれてしまいます。そういった顧客にも活用支援ができるのが、テックタッチの特徴です。
テクノロジーというと難しく聞こえるかもしれませんが、容易に導入できるツールや支援会社も増えてきたため、ますます注目が集まっています。
次の章からは具体的に、テックタッチを始めるステップについて解説いたします。
では、これまでハイタッチやロータッチが中心だった企業はどのようにしてテックタッチを初めて行けばよいのでしょうか。まず最初に、これからテックタッチを始めていく会社が意識しなければならないことがあります。
それは、ユーザーの知りたいと同時にユーザー側で解決策が見つかるような設計を作ることです。(これを弊社では「知りたい前に見つかる体験を作る」と呼んでいます)
例えば、ユーザーがサービス利用中に操作がわからず困ってしまうと、サポートセンターへ問い合わせをしたり、解決方法を探したりすることがあります。それではユーザー体験を損ねてしまい、テクノロジーだけでの対応が困難になります。
そうではなくユーザーが知りたいと思ったタイミングでテクノロジーを介し、今後問題になりうることが事前に解決できるような設計をテックタッチ構築では意識する必要があります。そのためには、ユーザーに対しての深い理解と、継続的な改善活動が必要です。
過去の傾向から分析し、問い合わせや検索が多い箇所にチュートリアルやマニュアルを準備することで、ユーザーの体験をそこねず、事前に問題解決することができます。
続いて、テックタッチはどういった手法があるかご紹介します。
一般的には下記のような種類があります。個数や期待効果などを見て、自社はどれから取り組むべきか考えてみてください。
テックタッチ施策の中でも取り組んでいる会社は多い施策です。
ステップメールは、ユーザーに定期的に活用方法や最新情報などのコンテンツを自動的に配信するメールです。プロダクトにログインしていないユーザーにも情報を届けることができるので、ログイン率の向上や活用率の向上に繋がります。
ウェルカムメールや、ツールの使い方、事例などで、MAなどのツールを利用して送ることが多いです。
広義に捉えるとマニュアルサイトも、テクノロジーを介し、ユーザーのセルフオンボーディングを助けるテックタッチの1つと考えることができます。
マニュアルサイトでは、機能説明だったり、不明点の解消を行うことが目的です。
操作方法についてまとめたサイトでサポートの工数を削減することができます。
活用支援サイトも広義に捉えるとテックタッチの1種です。マニュアルサイトと混同しがちですが、弊社では別物と定義しています。
単純な機能説明とは違い、その機能の活用方法や成果事例等、機能を理解したユーザーが成果を上げるためのコンテンツに特化したサイトが活用支援サイトです。
設けている会社は多くはありませんが、実際にユーザーで活用イメージが沸きやすくなるため、ハイタッチCSでよく話している活用方法からコンテンツ化するのがおすすめです。汎用的な活用方法をコンテンツ化することで、CSの工数を削減することができます。
コミュニティも広義の意味ではテックタッチと言えます。
オンラインコミュニティはそのプロダクトを利用しているユーザー同士でコミュニケーションが取れ、共通の課題解決や更なる活用方法をユーザー間で共有することができます。
オンラインコミュニティを提供することで、そのプロダクト、会社に対してのロイヤルティを高めていく狙いがあります。
コミュニティ施策は幅広い用途で検討が推進されていますが、その中でも特に、カスタマーサクセス文脈で、ユーザーエンゲージメント / ロイヤリティを高める目的での導入が加速度的に進んでいます。
チュートリアルとは、プロダクト画面上でボタンのハイライト化や吹き出しの表示を行い、ユーザーの初期設定を助ける施策です。プロダクトの説明を画面上で受けながら、初期設定や機能理解を進めることができ、マニュアルよりも分かりやすく、迷うことなく利用することができます。
チュートリアルを導入するメリットはいくつもあります。
チュートリアルを導入すれば、ユーザーは体験しながら視覚的に操作方法を学べるようになり、迷うことなく初期設定を完了できます。それによって、快適に利用が始められるため、顧客体験価値向上も狙えます。
また、アメリカ国立訓練研究所が発表したラーニングピラミッドによると、資料やマニュアルを読むより、自ら体験する方が記憶に残りやすいとされています。チュートリアルを体験することで、アクティブ率、定着率もアップします。
チュートリアルを通して基本的な操作を学び、自身で初期設定を完了するように導けば、導入初期に起こりやすい疑問を解消し、カスタマーサクセスやカスタマーサポートの顧客対応の負担軽減・工数削減にも役立ちます。
https://cloudcircus.jp/media/cases/lessar
弊社が提供しているAR作成SaaS「LESSAR」でのチュートリアル活用事例を紹介します。
LESSARとは、誰でも簡単にブラウザAR®が作成できるサービスで、スマートフォンのカメラ機能だけでARを体験することができます。
LESSARには有料プランと無料プランがあり、専任のカスタマーサクセス担当がつかない無料プランはお客様自身で設定を進めていただく必要があったため、初期設定の完了率が60%程度でした。
そこで、1500以上のフリープランユーザーが、人的フォローなしで初期設定が完了できるよう、チュートリアルの実装を行いました。
チュートリアルを実装した結果、初期設定の完了率を14%向上させることに成功し、チュートリアルを実行したユーザーの95%が初期設定を完了させることができました。
また、チュートリアルで初期設定を完了し、使い方を理解したユーザーが増えたため、副次的にログイン率もチュートリアル実装前に比べ140%になりました。
チュートリアルを実装することで、アクティブ率が向上し、チャーンを抑えることにも貢献できた事例です。
今回は、カスタマーサクセスのタッチモデルの中でも「テックタッチ」について解説しました。
ハイタッチを中心としたカスタマーサクセス活動は、企業の利益観点、採用観点から必ず限界があります。そのため、より多くのユーザーをサクセスに導くには、テクノロジーを活用したテックタッチの施策が不可欠となります。
また、その活用のされ方はさまざまです。最後までテックタッチのみでカスタマーサクセスがなされるものもあれば、部分的にハイタッチと組み合わせて効率を良くするような施策もございます。この辺りの違いは、プロダクトやサービスの特性によっても異なりますので、慎重に吟味して意思決定をしましょう。
最後に、一般的なテックタッチの施策というものはステップメールなどがあげられますが、テックタッチの施策はまだまだございます。ご紹介した施策を参考に、商材と自社の戦略に合ったカスタマーサクセスを構築していきましょう。
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