オンボーディングツールとは、SaaSのカスタマーサクセスにおけるオンボーディング業務を効率化、支援するツールを指します。
本記事ではオンボーディングツールを導入するメリットからツールの選び方、おすすめのツールをご紹介します。
オンボーディングとは従来、新入社員が早く環境に馴染めるよう導く新人研修を指しました。その意味が転じ、昨今ではユーザーにいち早くサービスや使い方に慣れてもらうプロセスとして使われます。
オンボーディングプロセスは、導入したシステムを用いて業務プロセスを効率化し、顧客体験を向上させることを目指す企業においてかなり重要ですが、多くの企業ではあまり重要視されていないのが現状です。しかし、様々な情報が飛び交う現代ではデジタルの力を活用した業務効率化が求められています。
そこで、導入したシステムを社内に定着させるために役にたつのが、オンボーディングツールです。オンボーディングツールを用いた効果的なトレーニングによって、従業員はシステムを活用できるようになり、組織全体の業務プロセス向上が期待されます。
今回は、オンボーディングに役立つツールについてご紹介します。
ツールを導入するメリットは、ただオンボーディングをデジタルの力に任せる事だけではなく、業務プロセスの効率化や社員のエンゲージメントをはじめ以下のポジティブな影響を与えると考えられています。
・オンボーディングの効率化
オンボーディングツールを使用することで、新入社員や中途社員へのデジタルトレーニングが自動化され、既存社員の教育工数やタスクの繰り返しを減らすことができます。これにより、オンボーディングプロセスの効率が向上し、時間やリソースを節約できます。
・従業員のITリテラシー向上
従業員がソフトウェアやITツールを効果的に利用できない課題があり、これに対する問い合わせ対応が時間とコストを消費しています。従来のコールセンターや担当者に依存するアプローチでは、課題の解決に限界があり、かかるコストが大きな課題となっています。ツールを用いると、24時間365日のサポートを提供するだけでなく、従業員が自ら問題を解決できる環境を整えることで、無駄な問い合わせ工数を削減し、ITリテラシーの向上を促進します。これにより、企業は人件費の削減だけでなく、従業員のスキル向上と業務効率化にも貢献します。
・従業員のエンゲージメント向上
デジタルオンボーディングは社員のエンゲージメント向上に寄与します。ツールのスムーズな使用サポートだけでなく、デジタルツール上でアンケートや満足度調査を実施し、ユーザーフィードバックに基づいてツールの改善が可能です。このプロセスにより、社員はツールを積極性に使うことが期待されます。また研修時間の削減により、新入社員は迅速に同僚やマネージャーとの交流時間を増やし、組織に早期に適応できるメリットがあります。
・業務プロセスの標準化
オンボーディングツールは標準化された手順やトレーニングプログラムを提供するため、組織全体で一貫性のあるオンボーディング体験を確保します。これにより、異なる部門やチームでの差異を減少させ、新入社員に対する均一なサポートを提供できます。
オンボーディングツールは様々な種類があり、企業のニーズや文化に合わせた選定が重要です。自社に適したツールを選定することで、従業員のスムーズな導入と効果的な学習を促進し、期待する成果を得ることができます。
選定する時に重要なのは、「ツール導入する定量的な目標」と「運用体制」です。オンボーディングツールの価値に沿った目的を明確にし、ROIの測定が難しい中で具体的で測定可能な目標を設定することがツール選定のカギとなります。例えば、「新入社員のオンボーディング時間を短縮する」ではなく、「新入社員がデジタルツールを使いこなせるまでの時間を30%短縮する」といった具体的な数値目標が必要です。
また、企業内の状況を考慮した運用体制もツール選定では重要となります。現代の多くの企業では、社員はデジタルテクノロジーを使用した業務に常に取り組んでおります。新入社員がデジタルツールを自力で使いこなすことは難しいため、デジタルオンボーディングとは別に、サポート体制を強化することが大切です。サポートへの簡単なアクセスを確保することで、新入社員のオンボーディング体験が向上し、業務パフォーマンスにも良い影響を与えるでしょう。
オンボーディングツールの種類についてご紹介します。
・デジタルガイド型
従業員が見ているWeb画面上でチュートリアルやツールチップを表示することで、操作ガイドなどを簡単に作成でき、会社内でトレーニングをしなくても、従業員自身で問題解決ができる体制構築をサポートするタイプです。マニュアルなどとは違い、画面上のみで操作を誘導することが可能となるので、従業員の「システムの活用方法がわからない」や「操作ミス」を減らすことが可能です。
・FAQ作成型
FAQ作成型は、ナレッジの構築と整理に適しています。FAQを整理することで、従業員は社内システムを使用する際に必要な情報を素早く・簡単にアクセスできるようになります。FAQツールは、社内システムを使う上でよくある質問とその回答を事前に作成または蓄積し、従業員からの問い合わせ対応を迅速かつ効率的に行うための手段となります。通常、FAQツールは社外向けやコールセンター向けなど、様々な利用形態がありますが、オンボーディングにおいては主に社内の問い合わせに活用されます。
・チャットボット型
チャットボットは、人間の代わりにロボットが、疑問・質問に対してリアルタイムに対応できる自動会話プログラムです。チャット形式なので、前後の文章を捉えた問い合わせ対応ができるため、より複雑な疑問・質問に即時に対応することができます。
社内オンボーディングを行う上では様々な問い合わせが発生するため、比較的単純な質問に対してはFAQツール、複雑な質問に対してはチャットボットと、上手く使い分けることが重要ですとなります。
上記のようにオンボーディングツールには様々な種類があるため、企業のニーズや文化に合わせ、どのタイプが自社に合うかをご検討ください。
ここからは、社内オンボーディングに役立つツールを9つご紹介します。
5-1. Fullstar(クラウドサーカス株式会社)
Fullstarは、クラウドサーカス株式会社が提供するノーコードチュートリアル作成ツールであり、これまでの導入社数は400社以上のデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)です。
お使いの社内システムへ、手軽にチュートリアルの作成が可能となっております。「社内からシステムに対するお問い合わせが多い」、「マニュアルや操作講習をしてもなかなか社内に浸透しない」などのお悩みを解決する操作ガイドやツールチップをノーコードで表示することが出来ます。
また、近年働き改革が重要視される中で、社内アンケートやエンゲージメント調査を社内システム上に表示することが可能となり、従業員の声を多く取得することができるツールとなっております。はじめてオンボーディングツールを使う方におすすめな、スモールスタートで始めることのできるツールとなっています。DAPでは珍しく、無料で使えるFreeプランがあり、表示ユーザー数での従量課金もないため、操作感や表示が気になる方はまずFreeプランに申し込むのがおすすめです。
・料金:月額60,000円(Light plan)、初期費用なし ※無料プランあり
5-2. テックタッチ(テックタッチ株式会社)
テックタッチは、テックタッチ株式会社が提供するツールです。ステップバイステップの操作案内や入力ルールを示すツールチップの設置が可能で、ノーコードで構築でき、従業員のシステム活用促進に貢献するオンボーディングツールです。
ユーザーの操作途中に案内が表示されるチュートリアル機能を搭載しており、ユーザーが迷うことなく操作できる設計をつくることができます。また従業員がシステムに文字を入力する際の入力エラーを自動認識することができ、従業員の生産性を向上させることができます。
・料金:要問い合わせ
5-3. Onboarding(株式会社STANDS)
Onboardingは株式会社STANDSが提供する、WEB画面上でユーザーに使い方を適切なタイミングで案内するノーコードオンボーディングツールです。
チュートリアル、ツールチップ、ポップアップなどのガイド表示を通じて従業員のシステム操作を支援することで、社内のトレーニングなしにシステムを活用することが可能となります。また、ノーコードでデジタルガイドが作成できるので、エンジニアのリソースを最小限に抑えつつ、ユーザーエクスペリエンスを向上させると同時に従業員が新しいシステムを活用できる環境を提供できるでしょう。
・料金:要問い合わせ
5-4. Zendesk(株式会社Zendesk)
Zendeskは株式会社Zendeskが提供するWebサイト内のFAQやナレッジベースの構築・管理に重きを置いたオンボーディングツールです。
ナレッジや各種資料をブログのように投稿していけることから、閲覧管理しやすい電子マニュアルツールとして利用できるでしょう。デザイン性の高いマニュアルを簡単に作成でき、従業員が検索しやすい高度な検索機能をはじめとして機能性が高くさまざまな用途に利用できるため、マニュアル作成・管理することで社内の問い合わせを削減し、業務効率を向上させたい企業におすすめです。
・料金:月額1ユーザーあたり$49~$99
5-5. ナレッジリング(株式会社CBIT)
ナレッジリングは株式会社CBITによって提供される、企業内に蓄積された多岐にわたる「ナレッジ」や個人ごとの暗黙知を統合管理し、有効に活用できる仕組みを作ることが出来るFAQツールです。
特に「ファイル内検索」機能が非常に注目され、ファイルの中身(=テキスト情報)も検索対象となるため、ファイル内のテキスト情報も検索対象になります。これにより、ファイル名にキーワードが含まれていなくても、ファイル内のキーワードを検出して表示できます。よって、WordやExcel等の既存ファイルをそのまま活用してFAQを作りたいと考えている企業に特におすすめのツールです。
・料金:月額 9,800円(基本料金)+120円/人(アカウント料金)、初期費用:98, 000円
5-6.Teachme Biz(株式会社スタディスト)
Teachme Biz(ティーチミービズ) は、株式会社スタディストが提供する、認知度も満足度も高い、非常にメジャーなマニュアル作成ツールです。
直感的な操作で画像ベースのマニュアルをかんたんに作成できることはもちろん、いつ誰が何回閲覧したかを閲覧・分析することが可能です。取り扱われている業種も製造から小売、飲食、宿泊、医療や金融までと幅広く、運用後のサポート体制も充実しています。月額5万円以上と比較的高額にはなりますが、納得の高機能を備えています。「動作を中心とした業務マニュアルを作成したい」「従業員の教育プログラムを実施したい」「Salesforceを利用している」企業にオススメです。
・料金:初期費用(要問い合わせ)+59.800円~
5-7. PEP(株式会社ギブリー)
PEPは、株式会社ギブリーが提供する、幅広い業界で導入されているAIチャットボット作成ツールです。
FAQを簡単にチャットボット化できるため、現在ご利用中のWebサイトやslackやGoogle Chatのようなチャットツールが簡単に業務改善ツールになります。ドラッグ&ドロップで直感的に操作ができ、ノーコードで開発できるのが強みです。また、会話データを自動的に学習でき、チャットボットのメンテナンスにかかる工数を月2時間程度に抑えることができます。さらに、他クラウドサービスとの連携が可能であるため、様々な社内システムをお持ちの企業におすすめです。
料金:要問い合わせ
5-8. HiTTO(HiTTO株式会社)
HiTTOはHiTTO株式会社が提供する、バックオフィス部門を中心に利用されている社内DX特化型のAIチャットボットです。
100万社以上の企業データをもとに開発されたAIチャットボットであり、従業員の定型的な質問にチャットボットが対応し、対応工数を削減します。チャットボットは共通AIを搭載し、従業員からの質問の意図を自動で解析・回答する仕組みとなっております。また、運用開始後も回答精度は自動で調整されるので、メンテナンスにかかる時間を大幅に短縮できます。さらに、チャット画面によくある質問が表示されることや、SlackやChatworkなどのチャットツールと連携できるため、質問する側も気軽に利用できるでしょう。導入後はカスタマーサクセスが専任担当に付き、手厚いサポートがあるのではじめてチャットボットを導入される人にお勧めです。
料金:要問い合わせ
5-9. チャットディーラーAI
チャットディーラーAIは、株式会社ラクスが提供する情報システムや総務など管理部門向けに特化したチャットボットです。
400種類を超える質問テンプレートが事前に用意されているため、ユーザー側での質問内容の精査は不要であり、初めて社内向けチャットボットを利用する方でも容易に様々な質問を作成できます。また、回答に画像やマニュアル、申請書を添付できるため、備品の貸出し申請や経費申請など社内手続きに関連する問い合わせにも柔軟に対応可能です。さらに、比較的に導入期間が短く、価格も低いため、スモールスタートしやすく、初めて導入される方も安心です。
料金:要問い合わせ
本記事では、オンボーディングツールの概要や選び方から、おすすめ9選をご紹介しました。オンボーディングツールを活用することで、従業員に効果的なトレーニングを行い、システムを活用できるようになることで、組織全体の業務プロセス向上が期待されます。ただし、オンボーディングツールは複数あり、それぞれで特徴や機能が異なるため、自社に合うツールの選択が必要です。