LTV(ライフタイムバリュー)とは「顧客生涯価値」と訳される用語で、顧客が取引開始から取引終了までにもたらす総額を表す指標です。リピートが多く発生する商品や月額(サブスクリプション)型のサービスでは、LTVを加味したうえでの費用対効果が求められます。また、LTVをいかに最大化させるかという観点から、SaaS企業などでは解約率やアップセル、クロスセルを重要KPIとして置かれることが増えております。最近耳にすることが多くなった「カスタマーサクセス」も、最終的なゴールとしては顧客の成功を通したLTVの最大化とされることもあるほどです。
この記事ではそんなLTVについて、特にSaaS業界において注目されるようになった理由や計算方法、カスタマーサクセスにおけるLTV最大化のための施策例などを紹介します。
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LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略語です。日本語では「顧客生涯価値」と表現され、「顧客が生涯を通じて企業にもたらす価値・総額を表す指標」として使われます。
「生涯」とは顧客と取引を開始して終了するまでの期間のこと。1度の取引だけでなく継続して行われる取引全体のことを指します。例えば同じ商品をリピートで購入された場合は、その金額と回数を掛け合わせたものを指し、SaaSなどの月額(サブスクリプション)商品を契約した場合は、月額費用と継続月数の掛け合わせに初期費用などを合計したものがLTVにあたります。
長期間継続して取引や購入をする顧客のほうが「LTVが高い」と言え、いかにリピートしてもらうか、解約されずに続けてもらうかが重要になるため、各社様々な施策を講じています。特に近年では、このLTVを最大化されるためのマーケティング活動やカスタマーサクセスの活動が年々注視されてきています。
LTVが注視されるようになった背景の1つが、新規顧客の獲得が難しくなったことです。
似たような製品が世にあふれ顧客の選択肢が広まったことにより、ただ魅力的なサービスを開発するだけでは物が売れなくなってきています。日本は人口が減り市場は縮小傾向なので、買い手が減少して供給が需要を上回り、新規顧客の獲得はますます難しくなっています。
その状況がなくても「新規顧客の獲得は既存顧客との関係維持に比べ約5倍のコストが必要」という「1:5の法則」というものがあるほど、新規顧客を獲得するには多くの労力・コストが必要です。
そこで既存顧客と良い関係を築いて取引を継続し、収益を増加しようというLTVに注目が集まりました。継続して良好な関係を築き顧客ロイヤルティを向上させれば、新たなサービスを紹介したり上位サービスへの乗り換えを促したりと、さらなる収益増加が見込めます。
またサブスクリプションといった継続してサービスを提供するモデルが普及し、一般化したことで、LTVという考え方は急速に広まりました。
LTVを算出する際、一般的に使われる計算方法は以下です。
・平均購買単価×平均購買頻度×平均契約継続年数
この式を使うと、LTVの平均値がわかります。サブスクリプションモデルの場合、購入頻度は関係ないため「平均購買単価×平均契約継続年数」で計算しましょう。
その他、以下のような計算方法もあります。
・顧客の年間取引額×収益率×顧客の契約継続年数
・(売上高-売上原価)÷ 購入者数
顧客獲得までの広告費といったコスト(CPA)を加味する場合は、以下のように計算します。
・(平均購買単価 - 平均顧客獲得コスト)×利益率×契約継続年数
ここでは、サブスクリプション型のサービスで重要視される指標を紹介します。
MRR(エムアールアール)は、Monthly Recurring Revenueの略語で、日本語では「月次経常収益」と表現します。簡単に言うと「毎月継続して発生する売上」という意味です。
MRRの「売上」には、初期費用やオプション料金など単発で発生した売り上げは計上されません。定額性のサブスクリプションの場合、毎月発生する月額料金が対象です。
ARPU(アープ)はAverage Revenue Per Userの略語で、「ユーザー1人あたりの平均売り上げ額」を示す指標です。主に通信事業で使われていましたが、近年ではSaaSやサブスクリプションビジネスでもよく使われています。LTVを向上させるには、ARPUを高くする(アップセルやクロスセルを狙う)等の施策が考えられます。
Churn Rate(チャーンレート)は、日本語でいう「解約率」。全ユーザーのうち、解約したユーザーの割合を示す指標です。有料プランから無料プランへ移行したユーザーもチャーンレートに含まれます。
チャーンレートには、カスタマーチャーンレート(顧客数ベースの解約率)とレベニューチャーンレート(収益ベースの解約率)があり、チャーンレートを見ることで顧客から必要とされているのか、成長しているのかを確認できます。このチャーンレートを引き下げることができれば、LTVの向上にも影響してきます。
LTVを最大化するために有効な施策の1つがアップセルとクロスセルです。
アップセルは、購入した(または検討している)商品の上位モデルを提案して乗り換えてもらう手法のこと。無料から有料へアップグレードを薦めるのもアップセルです。
クロスセルは、購入するときに関連商品を提案してセットまたは単体で購入してもらうこと。オプションを販売したり、飲食物をドリンクとセットで販売したりするのもクロスセルです。どちらも顧客単価の向上が狙えます。
このほか、解約を阻止して継続的に利用してもらうように働きかけることもLTV最大化のためには有効です。例えば解約率が1%下がった場合、単月ではわずかな差かもしれませんが、1年2年と長期で見たときには何倍もの差になって現れてきます。
また、契約期間が長くなれば、それだけアップセルやクロスセルの提案期間が長くなることになります。解約されてしまってはもう追加の提案は難しいのですが、契約が続いており関係性が構築できていれば、新しいプランや追加のサービスの提案が可能です。
LTVの向上には売り上げの向上がフォーカスされがちですが、解約阻止なくして最大化は見込めません。
LTVの最大化を実現するには「カスタマーサクセス」が重要だと言われています。特に、顧客との継続取引が中心となるサブスクリプション型のビジネスモデルでは、カスタマーサクセスは必要不可欠な存在です。
カスタマーサクセスとは「顧客を成功に導くための支援」を意味する言葉です。「成功」とは、顧客が期待した成果を得た・目標を達成できた状態を指します。
顧客は何かしら実現したいことがあり製品を契約します。しかし購入したからといってすぐに実現するわけではありません。製品の使い方がわからない、使っても思うような結果が出ないという場合もあるでしょう。
そこで、実現までに起こりうる課題を予測し、企業側から積極的に支援をすることで、顧客が思う成功へと導くのがカスタマーサクセスです。
似た言葉にカスタマーサポートがありますが、これは顧客からのアクションを受けて行動をする受動的なサポートのこと。カスタマーサクセスは企業側から顧客へと能動的に働きかけるサポートを指します。
LTV最大化のためには、既存顧客と長期的に良好な関係を築くことが大切。そこで重要となるのがカスタマーサクセスです。購入後も支援を続け、顧客の成功体験を誘発させれば、「使い続けたい」と思わせられます。より良い成功体験を得るために、アップセルやクロスセルを提案することも可能です。先述の通りにはなりますが、解約阻止をしながら提案の機会を獲得することが重要となります。
また物があふれ市場が飽和した中で選ばれ続けるには、魅力的な機能だけでなく魅力的な体験を提供することも大切です。カスタマーサクセスをおこない、良い体験を提供していけば、継続利用の可能性が高まります。
機能的に差別化がしにくい製品も、カスタマーサクセスで差別化が可能です。顧客のLTVを向上させたければ、まずはカスタマーサクセスから取り組んでみてはいかがでしょうか。
LTVは、企業の収益増加のための重要な指標です。計算方法を紹介しているので、興味がある人はまず自社のLTVを確認してみましょう。数値を見れば、新たな施策が見えてくるかもしれません。
LTV最大化のためにはさまざまな施策がありますが、SaaS業界においてそれらをまとめて実現できるのがカスタマーサクセスです。LTV最大化を意識する際は、カスタマーサクセスをセットで考えるのをおすすめします。