VoCとは、「お客様の声」を意味するマーケティング用語です。VoCは、いままでコールセンターやアンケートから集められるのが主流でしたが、近年SNSやブログから収集するケースも増えています。
成功している企業の多くは、顧客からの声に耳を傾け、そのニーズに応える努力をしています。自社製品の品質向上が、顧客満足度の上昇へとつながり、ビジネス成功の土台となるからです。
そこで本記事では、VoCの基本知識から課題、マーケティングへの活かし方まで解説いたします。
VoCとは「Voice of Customer」の略で、直訳すると「顧客の声」です。コールセンターに寄せられる商品・サービスに対する意見・クレーム、そのほかメールによるアンケートの結果などすべてVoCに含まれます。
VoCは企業に直接寄せられた意見だけではありません。個人ブログやSNS、ECサイトのレビューなどから集めた情報もVoCです。「どんなキーワードで自社サイトまでたどり着いたのか」など分析による情報も、顧客の考えを知ることができるという観点からVoCのひとつといえます。
近年、企業はVoCの収集や分析により力を入れるようになりました。なぜVoCが重要視されるのか、その理由を解説していきます。
VoCを活用すれば、顧客のニーズをいち早くつかむことができ、話題になったトレンドもすぐ戦略に取り入れられます。通信環境の整備によって、情報収集が容易になり、トレンドの移り変わりも速くなりました。そのため、企業は古い情報をもとに施策を続けては、競合から取り残されてしまいます。差別化を図るためにも「お客様が本当に求める商品」を提供することが求められています。
また、VoCを把握することで、クレームなどのネガティブな情報にすばやく対応できます。近年、SNSの普及によって商品・サービスは他社と比較され、その評判はすぐに拡散されます。VoCを意識して、顧客の小さな不満を見逃さなければ、実際のクレームになる前に改善できるかもしれません。顧客の要望にいち早く反応することで、企業の信頼度を高められるでしょう。
VoCを導入すれば、データだけでは把握できない顧客の行動理由も知ることができます。「どんな理由で購入したのか」「なぜ解約したのか」などWebサイト上の行動データや分析などではわからない顧客心理を理解できれば、改善点がより明確になるでしょう。
それでは実際にVoCを集めていきましょう。収集方法はいくつかありますので、ここでは代表的なものをご紹介します。
昔からVoCの収集に使われてきたのがアンケートです。保険や旅行代理店、携帯電話ショップなど、対面窓口での対応後にアンケートの記入をお願いされた経験はないでしょうか。 コールセンターでも、応対の最後に自動音声でアンケートをおこなう方法が広く導入されています。
最近はアンケートの方法も多様化しています。中でも注目されているのが、チャットボットによる収集です。人間の代わりにコンピューターによる自動会話プログラムでおこなわれ、操作も簡単で、顧客は気軽に回答できます。
アンケートは「面倒」と感じるユーザーが多いので、そこをいかに払拭できるかが回答率を上げるカギとなります。手軽に答えられるアンケートが用意できれば、回答率も変わってきます。チャットボットや便利なシステムを導入して、スムーズなVoC収集を目指しましょう。
お客様の声を直接聞ける「コールセンター」は、古くからVoCを集められる貴重な場として活用されてきました。「お客様相談窓口」「カスタマーサポート」として、顧客の問題に対応する役割を持つので、お客様の本音を聞き出しやすい環境といえます。また、直接顔を合わせないので、顧客も意見を言いやすくなります。
電話による顧客対応が主流でしたが、PCやスマートフォンの普及により、お客様対応の仕組みも変化しています。最近では、メールやチャットなど様々な手段を活用する「コンタクトセンター」と呼ばれる部署の導入も増えています。
SNSは、匿名で投稿されるため顧客の本音も集めやすく、近年多くの企業がVoCの収集に活用しています。検索したい言葉を入力すれば、そのキーワードのつぶやきや時期などを特定できるので、簡単にVoCが集められます。
ただし、信ぴょう性にかける情報も含まれているので注意が必要です。SNSはデータ量が膨大なので、特定の単語を含んだ書き込みを抽出してくれるテキストマイニングなど、便利なツールを活用して効率的に収集しましょう。
次にVoCを収集・活用する際によくある課題を3つご紹介します。
VoCを収集したはずなのに、実は十分に集めきれていないという場合がよくあります。VoCはただ闇雲に収集するのではなく、「収集方法」「タイミング」をきちんと設定することが大切です。
例えば、ネットショッピングの購入商品が到着した後に、「ご感想お聞かせください」というメールが届いたことはないでしょうか。
商品を購入したお客様がアンケートに答えやすいのは、使い始めのタイミングです。そこに合わせてメールでアンケート回答を依頼すると、顧客は企業の評価や商品の使用感を答えやすくなり、回答率もアップします。 収集に漏れが生じないよう、顧客が答えやすいチャネル、適したタイミングを模索しましょう。
せっかく集めたVoCも適切に管理しなければ施策に活用できません。とくにコールセンターなど、人を介して収集した情報は、メールやチャットなどと違って記録に残らないので、データ化しなければVoCを取りこぼしてしまいます。テキストデータにして保存しておきましょう。
手書きで書き留めている企業も多いですが、自動でテキスト化してくれるツールを導入できれば、その後の管理もしやすくなります。
また、収集したVoCは部署単位ではなく、社内全体で情報共有できるようにしましょう。VoCの内容は多方面に及ぶため、複数の部署と協力しながら施策を進めなければならないからです。他の部署と連携できなければ、うまく管理していることにはなりません。
VoCは集めることも大事ですが、どう活用していくか、その後のプロセスが重要です。VoCを収集する部署は、資料をまとめて満足してしまうことも。集計したVoCは、自社商品の見直し、マーケティングやサポート体制の改善など、様々な施策に反映していきましょう。売上向上という最終目標を達成してようやく施策に活用できたといえます。
最後に、VoCをマーケティングに活かす際の手順の一例をご紹介しましょう。
まずはVoCをどのような方法で収集するかを決めます。コールセンター、メール、アンケートなど、たくさんの方法がありますので、自社にあった手段を選びましょう。多くの企業がひとつだけでなく、複数のチャネルを選んでいます。
収集方法が選定できたら、社内でどのようにデータを管理するのかまで、きちんとマニュアル化しておくとよいでしょう。
手動でのデータ収集も可能ですが、VoCの収集や分析には人手も時間もかかります。できれば専用システムを導入するのが理想的です。
とくにコールセンターでは、電話をしながら入力できたり、電話番号から顧客の情報が検索できたりするシステムがあれば、オペレーターの負担軽減、対応件数の拡大、さらには人件費の削減など多くのメリットが期待できます。
VoCを収集できたら、その内容をもとに自社商品・サービスの問題点を明確にし、改善していきます。関連するすべて部署と連携し、短期間で問題解決にあたりましょう。
商品の見直しはもちろん、販売方法やサポート体制など改善箇所は多岐にわたります。VoCは収集を続けて蓄積するほど、分析の精度も高まります。収集しながら、ユーザーの反応も確認していくPDCAサイクルを導入して、長期的な活用をしていきましょう。
お客様の生の声には、ビジネスにおけるたくさんのヒントが隠されています。こちらから積極的にアクセスすれば、次第に顧客が何を求めているのか見えてくるはずです。
SNSの普及により、いままでよりVoCが集めやすくなった半面、顧客のネガティブな体験はあっという間に拡散されます。企業の信頼度を高めるためにも、常にVoCを意識しなければなりません。
VoCを集め、顧客や市場ニーズを理解することで、時代の流れに応じたマーケティングが実現します。企業努力を続ける会社は評価され、顧客満足度の向上、売上アップと良い結果をもたらしてくれるでしょう。